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さようなら「銀河」、ラストラン

2008-03-14 23:59:42 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
銀河、惜しまれラストラン(毎日新聞)

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さらば輝く夜の星--。春のダイヤ改正(15日)で姿を消すJR西日本の寝台急行「銀河」が14日、ラストランを迎えた。戦後間もない1949年から深夜の東京-大阪駅間を結び、出張サラリーマンの貴重な足として活躍。特別なセレモニーはなかったが、東京駅10番ホームに鉄道ファンら約2000人が詰めかけ、高度経済成長を支えた往年の名列車に別れを告げた。

 大阪行き最終列車は午後11時発。「ブルートレイン」と呼ばれる青い車体が午後10時23分、東京駅10番線に入線すると、ホームで待ち構えた鉄道ファンが一斉にカメラのシャッターを切った。午後11時。汽笛と共にゆっくり銀河が動き出すと、詰めかけたファンから大きな拍手と「ありがとう」「さよなら」と叫び声が響いた。

 260席の乗車券は2月14日の発売日当日に約30秒で完売した。2月下旬からは10番線ホームにファンが連日押し寄せるようになった。

 銀河は49年に夜行急行として運行を始め、区間は50年に東京-神戸、65年に東京-姫路となった。68年に今の東京-大阪間の寝台急行となり、現在両駅を約8時間20分で結ぶ。最も安いB寝台で1万6070円。サラリーマンらが多く利用したが、新幹線が早朝深夜にも運行するようになったほか、深夜バスの普及や安値のホテルの登場に押されて乗車率が低下した。昨年12月に廃止が発表される直前には4割程度まで落ち込んでいた。15日には他に寝台特急「なは」(京都-熊本)と「あかつき」(京都-長崎)も廃止される。【伊藤直孝】
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寝台特急の衰退については、他の多くの鉄道サイト、ブログで書かれているから私ごときが今さら書くまでもないと思ったが、NHKがニュースで取り上げるなど「銀河」廃止は社会的に大きなムーヴメントになった。

最近は廃止、縮小の話題しかないブルトレ。近年は鉄道ファンのほうも「廃止慣れ」してきたのか、「出雲」の時も大騒ぎしていたのは地元と鉄道ファンだけという状況があった。ところが、「銀河」は運転区間が東京~大阪というインパクトもあったのだろう。急行列車であるにもかかわらず、特急である「なは・あかつき」を向こうに押しやり、マスコミがこぞって取り上げる久しぶりの話題となった。

(そもそも、急行列車であることを理由に「銀河」をブルトレに含めない立場を取る鉄道ファンも一定数存在する。だが、列車の編成も運転形態も限りなく寝台特急に近い「銀河」は別格であり、ブルトレに含めてもよいだろう。)

マスコミが取り上げるのは、やはり夜行列車、寝台列車が普段は利用しないものであっても、走っていることが世の中に安心感を与える乗り物だという潜在意識があるからだろう。だが、近年の効率化、市場原理主義の社会はそのような「利潤を生まないけれども存在していることが安心感を与える乗り物」を認める余裕もなくなってきたのだと思う。

国鉄時代、日本の鉄道はもっと牧歌的だった。東北本線全線電化が完成し、国鉄史上最大の白紙改正といわれた1968(昭和43)年10月改正(いわゆるヨン・サン・トウ改正)当時、国鉄は東京~大阪間の夜行列車を廃止しようとしたが、国鉄に存続を求める手紙が殺到。その手紙が石田礼助総裁(当時)の目に留まったことから、石田総裁が「国民が望むなら無駄も必要」と夜行の存続を決断したことがあった。この列車はいろいろと形を変えながら現在も東京~大垣間を「ムーンライトながら」として走り、青春18きっぷ族の希望であり続けている。
こうした経済合理性のみに縛られない経営というものが、公共交通にはもっと必要だと思うのだが…

しかし、「銀河」ですらも廃止となると、日本で生き残れる寝台列車はもはやないのではないか。「北斗星」などの北海道夜行も、北海道新幹線が開通すれば正直、どうなるか予断を許さない。

マスコミ報道等によれば、寝台特急の旅客数の落ち込みはそれ以前もあったが、1990年以降が酷く、90年と比べても4割まで落ち込んだ。その背景としては、新幹線が速くなったこと(これ以上「のぞみ」が速くなったら、始発の新幹線より早く着くという「銀河」の看板すら危うい)、高速バスが全国に路線網を築き上げ、夜行寝台の旅客を奪ったことが原因という。

確かに前者の要因は大きいだろうが、後者(高速バス主犯説)は今となっては本当なのかどうか私は疑いも抱いている。
よく言われることは、寝台特急と夜行高速バスは客層が全く違うということである。寝台特急に乗っているのは主にビジネス以外の中高年層で金も時間も持っている人。一方、高速バスは若い女性、学生、主婦などが多く、失礼な言い方になるが「時間はあっても金のない層」が乗っているということは以前から指摘されてきた。つまり、夜行高速バスはJRから客を奪ったのではなく、従来であればカネがないために移動をあきらめていた層を新たな乗客として開拓しながら成長していった面が大きいのである。

つまり、何が言いたいのかというと、寝台特急の衰退は高速バスが主犯ではなく、新幹線の高速化の他、やはり無為無策が大きいということだ。
とはいえ、鉄道の運行にはコストがかかる。夜行需要は根強く存在しているが、JRが定期列車を仕立てて採算が取れるほどの需要があるかといえば、盆、正月等の多客期を除いてほとんどないというのが正直なところではないか。

このように考えると、寝台特急の衰退はやはりいかんともしがたいのが現実である。JRとしては今後、寝台列車は多客期のみの運行とするほかないだろう。

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