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意識改革が必要な問題には、地道な啓蒙と予算、あとイケメン伝道師も?

2012-09-03 09:37:15 | 映像ノート
DVD『ジェイミー・オリヴァーのスクール・ディナー』アーティストハウス, 2007.

  イケメン英国人タレントシェフが、イギリスの酷い学校給食をもっと美味で栄養的にバランスの採れたものにしようと奮闘する姿を描くテレビ・ドキュメンタリー。DVDは、2005年にChannel 4で放送された全四話を収録しており、二枚組である。ちなみに、school dinnerは学校給食のことらしいが、イギリス英語なのか?

  驚かされるのが、公立校の学校給食の酷さである。可愛らしい形の揚げポテト、成型肉、ピザの三つである。他にもあるのかもしれないが、子どもたちは毎日のようにその三つだけを食べている。家から弁当を持ってくる子どももいるが、中身はお菓子。給食担当者は冷凍されていた食材を温めるだけで、まともな調理をしない。

  おまけに子どもたちが強情。試しにジェイミーが主導してつくった料理が提供されたのだが、まったく手をつけない。口に入れてみても吐き出す。最終的には大量廃棄である。高級レストランを経営し、シェフとして成功しきた彼のプライドをさぞ傷つけたことだろう。実際、落ち込んだり愚痴ったりする場面がしばしばとらえられている。

  しかしながら彼はくじけずに試行錯誤を続ける。子どもたちが本当に自分の作る料理が嫌いなのか、それとも食わず嫌いなのかを調査し、予算制約を克服し、対立していた給食のおばちゃんと和解して協力を得られるようにし、より多くの学校にも給食改善運動に協力してもらう。複数の学校の給食担当者を再教育してスキル向上を目指すが、労働強化のために彼女らが反発しはじめると、予算を獲得しようと役所または政治家に掛け合うという具合である。

  最終的には給食改善がうまくいったように描かれているが、映像で順調であることが見て取れるのは最初に乗り込んだ一校目だけである。給食担当者がそれほど乗り気でないように見える他校でこのプロジェクトが継続できたのかどうかは不明だ。だが、いくつかの学校で食わず嫌いの子どもたちが「まともな献立」を食べ始めたのは確認できる。

  一校目が上手くいった理由は、根気強い継続という地味なものである。給食におけるジャンクフードを段階的に廃し、最終的には「まともな献立」の料理一択とする。あとは、ジェイミーと給食のおばさんそれぞれによる、子どもとその親に対する啓蒙活動である。革命的なアイデアによって状況がバッと変わってしまうという劇的なことは起こらない。しかし、子どものニーズに合わせるのではなく、ニーズそのものを変えてゆくという点でより困難な挑戦だったと言えるだろう。

  給食問題を扱ったドキュメンタリーとして見るならば、日本人に参考になるところはないかもしれない。しかしながら、他人を説得し行動を変えてもらう必要がある問題への取り組みとして見ると面白いだろう。  
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