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細かいところに深入りしないで音楽を聴かせるロック映画

2018-12-05 23:19:10 | 映像ノート
映画『ボヘミアン・ラプソディ』20世紀フォックス, 2018.

  英国バンドのクイーンの、というよりそのリードシンガーだったフレディ・マーキュリーの伝記映画である。ロキノンでパンク~ニューウェーヴ系の趣味を叩き込まれた僕としては、クイーンはオールド・ウェイブに属する興味の湧かないバンドであった(まあ今となっては無意味な括りだけれども)。だが、妻が行きたがっていたので一緒に映画館で見ることにした。

  1970年のバンドの結成から1985年までのライブ・エイドまでというのがそのストーリー。マーキュリーのインドでの少年時代や、エイズ闘病時代はナシ。ブライアン・メイほか他のメンバーのプライバシーについて深く入りこむこともない。バンドとしての音楽上の思考錯誤と人間関係、同時期のマーキュリーの私生活を描く内容となっている。ただし、感情のメリハリはあるものの、じっくり見せるわけでもない。音楽を聴かせるためのつなぎのような扱いである。劇中では誰もが知っている有名曲が次々と繰り出されるので盛り上がる。

  今時の映画だなと思ったのは、インド系英国人であることが強調されているところである。当時の英語圏における大衆音楽界隈で、白人でも黒人でもない人種的アイデンティティというのは居場所がなかった。マーキュリー本人も自身のエスニック・アイデンティティを誇示してみせたことは無いと思う。しかし、この映画ではその家族的出自と父親との確執が主人公の孤独を説明する一つの原因として扱われている。

  一方で、同性愛者(正確にはバイセクシャル)であることをマスメディアに対して秘匿していたかのように描いているのはちょっと違和感が残った。というのは1980年代の英国で、もはやゲイであることはセールスに響くようなタブーではなかったからだ。Frankie Goes To HollywoodとかDead Or Aliveとか普通に売れていたし、ミュンヘンディスコのソロ作というのもわかりやすい記号だった(ジョルジオ・モロダーと組んだ"Love Kills"はエレポップ好きとしては見逃せない)。

  映画としては、スタジアムで大観衆に突き上げられる高揚感をうまく映像化できていたと評価したい。というか音楽の力かな。終わった後、映画にしたら面白いだろうロックバンドを考えてしまった。真っ先に思い浮かんだのはBadfingerだが、メンバーから自殺者二名というのは暗すぎるか。でも観たくならないだろうか。
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