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家庭を巻き込む丸刈り男たちの覚醒剤製造ドラマ

2015-09-09 10:41:16 | 映像ノート
DVD『ブレイキング・バッド』ヴィンス・ギリガン製作, ソニー・ピクチャーズエンタテインメント, 2010-15.

  米国製のテレビドラマ。高校で化学を教える冴えない中年男が、ある日自分が癌で余命いくばくもないことを知り、身重の妻と脳性マヒの息子に遺産を残すべく、覚醒剤の製造に手を染めるという話。舞台はニューメキシコ州アルバカーキ。周囲は砂漠で、街にはヒスパニック系が多く住み、いつもスカッと晴天だがどこか荒涼としたところのある街である。

  全62話。シーズン1と2は、麻薬をめぐる命がけの闘争をしたそのすぐ後に、家族を騙して普通の家庭人に戻ってみせる主人公の表裏の使い分けが見どころ。ドラマの初期は俳優の演技力を見せるホームドラマ的なところがあって、そういうのが好きでないと冗長に感じるかもしれない。シーズン3と4は大物の悪役との知略を尽くしたバトルが、5と6は主人公が守ろうとした家族がどんどん崩壊していく様がそれぞれテンポよく描かれ、回を重ねる毎に面白くなってゆく。

  ただ、誰が観ても楽しいというわけにはいかないだろう。登場人物の多くが渋面で腹の出た中年男で、しかもスキンヘッドだらけ。髪があった登場人物もなぜかドラマの途中で剃り上げて坊主になってしまう。そういうわけで登場人物らの視覚的な魅力には欠ける。若い男女のロマンスはほんのわずかあるだけで、ほとんどは殺伐とした家庭内のやり取りと、隠れ家での麻薬製造、裏社会の男たちとの交渉および銃・刃物・毒物を使った命の駆け引きにシーンが費やされる。

  評価したいのは中年男の面倒臭さというのが非常によくわかるところ。そのプライドと卑屈さと小狡さが一緒くたになった内面のリアリティは圧倒的で、ストーリーが多少ご都合主義的なところに目をつぶっても賞賛したくなる。負のエネルギーに満ちた主人公が頑張れば頑張るほど周りが滅茶苦茶なる。少なくとも中年男の自分にはよく刺さった。
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