今月の「関西洋風建築めぐり」講座は、トラピスト修道院(シトー会西宮の聖母修道院)でした。竣工は1969年で、設計は村野藤吾です。村野は天理教を経て、1980年にこの修道院で洗礼を受けてカトリックに改宗し、1984年に死去した際には自身の葬儀がこの場所で執り行われたそうです。
引率の先生の解説文によると、”見どころは吹き放ちの回廊によって組み立てられた建物が六甲山系の森林とコラボレーションしている点にあり、さながら空中回廊ににいるかのような感覚が造り出されている。ここからの眺めは絶景である。”とのことですが、この日の見学では回廊のある中庭部分を拝見することはできず、これが残念ではありました。しかし、木立に囲まれた敷地は自然の勾配をそのまま生かし、建物やアプローチの通路、渡り歩廊などの配置には変化の妙もあって、実に素晴らしいものでした。紅葉が多数植えられていて秋の景色も見事と思われますが、新緑の時がより一層美しいのかもしれません。
側面からのみ眺めることができた聖堂は厳かで静謐な雰囲気が修道院にぴったりで、後ろから見るとまるで絵画のようにも感じられました。聖堂は大空間で、一見すると極めてシンプルなのですが、天井部は反アーチ状の曲面(中央部が低い)となっており、祭壇・十字架・母子像(?)などの配置、材質、デザインも実によく考え抜かれているように思われます。また、遠くのものはやや分かりにくいのですが、全ての窓には淡い色使いのステンドグラスが嵌められ、この聖堂の雰囲気にふさわしいものとなっていました。下の3枚の写真は、我々が説明を聞いた側室?のステンドグラスです。聖堂内のステンドグラスも恐らく同様であると思われます。
また、聖堂内の照明も美しく、実に印象的でした(写真の色はやや赤みを強調しています)。床に映る光も良いです。
その他、先生の解説やシスターのお話などの細部については、mayumamaさんのブログ”m's diary”に詳しく書かれていますので、そちらを参照下さい。私は、午前3時30分頃起床、午後8時30分頃消灯までの間に1日7回の祈りの時間があるということ、上下2層に分かれた聖堂自体がノアの方舟を、12本の柱が12使徒を表しているらしいことなどが印象的でした。
また、先生の解説の合間などにふと訪れる静寂そのものの時間に、やはりここは祈りのための空間なのだなあとも感じ、貴重な時間と空間を体験させて頂けたと感じています。
◎「村野藤吾 建築案内」(TOTO出版 2009年発行 2,000円+税)にも
素晴らしい写真が掲載されていますので、ぜひご覧になって下さい。
厳かな雰囲気に、前に出すぎない装飾 修道院らしいなと思いました。
こんな風になってたんですね。
こういうステンドグラスは初めて見ましたが、やわらかい感じがこの聖堂の雰囲気に合ってますね。
天井の反アーチや柱などの細やかな工夫で実際に聖堂に入ると
より一層包み込まれるような箱舟感が増すんでしょうね~
TBとご紹介ありがとうございました。
こちらもTBさせて頂きます。
こんばんは。
土曜日は雨の中をお疲れさまでした。
外観写真は片手撮りでブレているものが多かったのですが、室内は”・・・数撃ちゃ当たる”で、まあ何とかそれなりのものが10数枚ほど撮れました。
ただ、やはり聖堂内にちょこっとでも入らせて頂きたかったですし、中庭の空中回廊も自分の目で見たかったですね。ですが、修道院の静かな環境を多少なりとも乱すことになるのでしょうし、これは致し方なしです。
教会とはまた異なった雰囲気の、控えめで厳かで静謐な空間は素晴らしかったです。
こんばんは。
土曜日はお疲れさまでした。
私、最初は聖堂内のステンドグラスをそれと気付いていませんでした。教会などでよく見られる極彩色あるいは華やかなもののイメージが強いせいでしょうね。
淡いぼんやりとした色合いとデザインが修道院・聖堂の雰囲気にぴったりでした。クローズアップ写真はいったいどのようになっているのかなと思い撮ったもので、作り方にも興味が湧いてきました。
それにしても聖堂=ノアの方舟とは!
村野藤吾のキリスト教への造詣と類い希なるデザイン力に感嘆の思いです。
さすがに村野藤吾さんです。
ところで村野さんは佐賀県唐津市の出身なのですが、
唐津市といえば、辰野金吾と曽禰達蔵という大御所もいます。
偶然ですかね?
こんにちは。確かに同じトラピストでも函館と西宮では全く違う味わいですね。以前、村野藤吾作品にあまりピンときていなかったのですが、ここ数年で色々見て凄いと思うようになりました。デザイン力や素材の生かし方などが素晴らしく、芸術性にあふれたこれぞ建築家という気がします。トラピスト修道院はその性格上か、とても厳かかつ静謐で、ストイックな感じが強いです。
辰野・曽禰の唐津出身は知っておりましたが、村野藤吾については意識していませんでした(汗)。偉大な先達の影響とかはあるでしょうね。また、調べてみます。