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ひろの東本西走!?

読書、音楽、映画、建築、まち歩き、ランニング、山歩き、サッカー、グルメ? など好きなことがいっぱい!

キネマの神様(原田マハ)

2009-05-24 16:07:55 | 15:は行の作家

Photo_2 キネマの神様(文藝春秋)
★★★★☆:85~90点

映画ファン・映画好きにはたまらない作品で、とても良かったです。これほど映画と映画館(とくに名画座)への愛をストレートに綴った小説は日本にはあまりなかったのでは?これまで読んだ小説の中では、名作をモチーフにした金城一紀の小説・「映画編」も素晴らしい作品でしたけれど。

私自身、もち論この小説で出てくる映画を全て見たわけではありませんが、出てくる作品はいずれも恐らく素晴らしいに違いないと思わせてくれました。名画座での「ニュー・シネマ・パラダイス」+「ライフ・イズ・ビューティフル」という超豪華な組み合わせの2本立て。「プライベート・ライアン」「タイタニック」「アメリ」「戦場のピアニスト」「イングリッシュ・ペイシェント」「Shall we ダンス?」・・・。題名を見ただけで、映画ファン・映画好きであれば”あぁ、あれあれ”と思い起こしたり、”そうそう、あの映画は・・・”と語り出してしまう、その手法はズルイとも”にくい”とも言えますが、素晴らしい映画にはそれだけ人を惹きつけ、長く心に残るという魅力があるということでしょうね。古い作品では「自転車泥棒」や「カサブランカ」などが出てきました。

◎参考ブログ:

   エビノートさんの”まったり読書日記”

****************************** Amazonより ******************************

四十を前に、突然会社を辞めた娘。映画とギャンブルに依存するダメな父。二人に舞い降りた奇跡とは―。壊れかけた家族を映画が救う、奇跡の物語。

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小説としての凄さ・目新しさはそう多くありません。また、悪人や嫌らしい人物が殆ど出てこない甘さもあり、これらが弱みといえば弱みでしょうか。ただし、シネマ・コンプレックスやネット、ブログ、ユーチューブ、スティーブ・ジョブズ(アップル)、ラリー・ページ(グーグル)といった名前が出てくるのは今風でとても面白かったです。この小説ではブログが大変重要な役割を果たしており(この設定は出色!)、4年半ほどブログを続けている私としてはその点でも興味深く、”ブログの力”や考えたこと・感じたことを文章に書いて残し、それを発信することの重要性の再認識にもつながりましたね。

少し小説の内容に戻ると、ブログ”キネマの神様”で繰り広げられるゴウこと円山郷直(主人公・円山歩の父。大のギャンブル好きだが真に映画を愛する人)とローズ・バッド(映画史上最高の傑作と評されることも多い「市民ケーン」の”バラのつぼみ”を自称)の評論対決が見事です。激論対象となった映画「フィールド・オブ・ドリームス」「七人の侍」「硫黄島からの手紙」など、ゴウとローズ・バッドの評論対決には二人の人生観・世界観などが大きく反映されており、一つの文化論にもなっています。時には激しくやりあい、時にはユーモアたっぷりに相手を挑発したりで臨場感もたっぷり。そして、二人の間に次第に芽生える友情と相手への尊敬の念。

一方、歩も映画に対する情熱は父親にひけをとりません。歩が入社5年目の新年度の抱負で書いた文章の素晴らしさ。

  「・・・映画館は一級の美術館であると同時に、舞台、音楽堂、心躍る
   祭りの現場でもあるのだ。・・・この世に映画がある限り、人々は
   映画館へ出かけていくだろう。家族と、友人と、恋人と・・・
   ひとり涙したいときには、ひとりぼっちで。・・・」

そして、その文章を読んで素直に感動した才色兼備のエリート後輩社員・柳沢清音。その後、大胆な行動に出て、物語で重要な役割を演じることになる彼女も素晴らしいです。

ゴウがようやく定職として落ち着いたマンションの管理人。彼は17年間分の管理人日誌(≒映画日誌と化していた)に綴った映画に対する愛情ほとばしる文章の数々。それに驚き、胸がいっぱいになった歩は自らの想いを父に黙ってそこに記す。これまた素晴らしく、これをきっかけに歩と父は映画を通じて心の交流を深め、更にはその人生も大きく舵をきることになる。

  「・・・名画座は”昔ながらの村の鎮守”みたいな場所だ。
   ・・・そんな場所が、ひとつふたつと消えつつある。・・・」

物語の後半は、ゴウとローズ・バッドの評論対決が大きな軸となるのですが、大好きな映画について日米で語り合える素晴らしさ、互いに真の友人を得た喜びが胸をうちます。

シネマコンプレックスの進出計画で経営危機に瀕し、名画座「テアトル銀幕」の館長テラシンこと寺林新太郎は閉館もやむなしと考える。自社も経営不振にあえぐ中、名画座を何とかしようと奔走する老舗だが弱小の映画雑誌「映友」の編集長:高峰好子。ライター:新村・田辺、事務:江藤+歩、興太、清音たち。彼らのコンビぶりも良し。このあたりは、閉店必至の書店を舞台に店長と店員たちの努力が奇跡を呼び起こす「ブックストア・ウォーズ」と似た雰囲気があります。

また、この小説は親と子や夫婦など家族の絆の再生物語でもありました。円山郷直と歩の父娘、清音とその父、高峰好子と長年ひきこもっている天才ハッカーの息子・興太などなど。作者の温かい眼差しを感じました。

終盤、物語は大きく動き、大団円を迎えます。
人生最良の映画とは何か?
ラスト30ページくらいは一気読み間違いなし!

なーんか、支離滅裂な感想ですね。
最近また映画館で映画を観るようになってきましたし、私もかつては映画少年・映画青年で色々な思い入れもあるので、仕方ないかな?映画についてはまた改めて書きたいと思います。


読ませるブログ 心をつかむ文章術(樋口裕一)

2009-04-22 23:42:20 | 15:は行の作家

Yomaseru1_2読ませるブログ 心をつかむ文章術(ベスト新書)
★★★★’:75点

小論文指導などで定評があり、著書も多い樋口裕一氏の近著です。読ませるための細かなテクニックなどについて書かれた部分よりも、ブログの面白さ・素晴らしさ・魅力やその意義について書かれた部分がとても良かったです。

第1章:ブログで世界が変わっていく
第2章:不特定多数に発信する恍惚と不安
第6章:楽しみながら長く続けるコツ

などが良く、特に第1章と第2章が出色でした。

実は2004年11月から始めた私のブログ、その一番最初の記事が「ブログの力を信じて」なのでした。そのこととも合わせて、とても印象深い本となりました。

********************************* Amazonより *********************************

ブログは「簡単に自分を表現できるツール」として、短期間で世の中に広まった。ところが、ネットの世界にあふれているのは、日記レベルの「おもしろくないブログ」ばかり。一般人が芸能人のブログの真似をしたところで、読者を獲得できるはずはない。ブログを書くということは、世界中の顔も名前も知らない人々に、自分のメッセージを発信すること。一昔前なら、作家や芸術家しかできなかった体験を、一般人でもできるということなのだ。さらに、読み手を意識した情報発信は、文章力を筆頭に、思考力や観察力や表現力など、さまざまなスキルを高めていく。人に読ませる「おもしろいブログ」を書くことで、あなたの人生は変わっていく。

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以下、私がなるほどと感じた部分、自分の考えとフィットした部分などを抜粋転記してみました。

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文章を書くことこそ、思考力をつけ、社会や人間を見る目を養う最大の原動力だと私は考えている。

メールは実は内向きなコミュニケーション。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)も、アクセスできる人間を制限している点で、偏ったコミュニケーションにとどまっている。

審査する人が限られる小論文と異なり、ブログは世界中の人々に見られている。小論文以上に、多様な価値観への理解が求められる。
複数の評価軸を持つことが、「大人のつき合い」では不可欠と言える。

それどころか、ブログを書くことで、時間を有効活用できるようになった部分もあると思う。ブログによってその日のうちに、自分の体験をまとめておけるからだ。

人間が体験した物事は、書かれてはじめて事実になる。
・・・このときに忘れてはならないのは、書いたメッセージを世間に公表すること。書いただけでは十分ではない。どれだけ素晴らしいテーマであっても、「閉ざされた世界」に置きっぱなしではいけない。人間にとって「書き残し、発表する」という行為は、自分の存在を不滅にし、世界中に知らしめる行為なのだ。だからこそ、人々ははるか昔から文字を使って、様々なことを書き残してきた。

これからのブログ文化の担い手は中高年。
人間は年齢を重ねることによって、物事に対する洞察力も深くなる。
年齢を重ね、人生を重ねることは、その人でしか出せない「味」を生み出す。
ブログは若い人たちだけのものではない。「今の若者は、ブログで自由に発言ができてうらやましいなあ」などと思っている人がいたら、大間違いだ。パチパチパチパチ(拍手・ひろ009)

熱心に「受信」している人は多いのだが、質問を「発信」できる人は少数なのだ。
発信し合うことは、無限の情報を共有すること。
一人ひとりが自分の得意分野の知を集積し、それが何十万人、何千万人と集まれば、その「集合知」はすさまじいレベルになる。それは、知的ボランティアであり、立派な社会貢献だ。

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などなど。

世界中の人びととか「集合知」とか、格調高く、またレベルの高そうな内容も含まれていますが、第6章にはきちんと、”気楽に書くから、長く続けられる”とも書いておられ、まずは気軽に考えて書き始め、それを継続することが重要であると述べられています。まさに、「継続は力なり」ですね。国語力・文章力の重要性といった点では、齋藤孝氏の「読書力」とも相通ずるものがあると思います。発信に至るまでに、まず理解力や洞察力などを読書力を通じて身につけるべきなのかもしれません。

これらの言葉を信じて、これからも頑張って本を読み、ブログを続けるぞー!
もちろん、近代建築探訪やランニングも続けますけどね。


ボックス!(百田尚樹)

2009-01-30 23:48:25 | 15:は行の作家

Box1 ボックス!(太田出版)
★★★★☆:90~95点

早くも私にとって今年度のベスト1級の作品が出た。舞台は、過去には強い選手も輩出したこともある大阪府立高校のボクシング部。そこで繰り広げられる二人の少年の栄光と挫折の物語。

アマチュアボクシングの世界をこれほど熱く激しく濃厚に、しかし瑞々しく描くとは!大絶賛である。

これまで青春スポーツ小説は色々読んできて、”野球”の「バッテリー」 (あさのあつこ)、”飛び込み”の「DIVE!」 (森絵都)、”陸上・長距離”の「風が強く吹いている」 (三浦しをん)、”陸上・短距離”の「一瞬の風になれ」(佐藤多佳子)、”サッカー”の「龍時」(野沢尚)など名作も多い。しかし、本作はそれらの中でも1・2位クラスかもしれない。

過去の名作群の中では「一瞬の風になれ」と似たテイストがあり、描き方は青春スポーツ小説としては極めてオーソドックスかつベタとも言える。「一瞬~」の感想で書いた中の、”勝利と敗北、喜びと悔い、歓喜の涙・うれし涙と悔し涙、才能と努力、先輩と後輩、友とライバル、教師と生徒”などは共通で、恋・思慕や憧れの要素もタップリ。

そして、ボクシングの持つ怖さ(実は恐怖心との闘い)や減量の苦しさ、試合シーンの迫力、自分をトコトンまで追いつめるストイックな部分などが本作ならではのものだろう。

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高校ボクシング部を舞台に、天才的ボクシングセンスの鏑矢、進学コースの秀才・木樽という二人の少年を軸に交錯する友情、闘い、挫折、そして栄光。二人を見守る英語教師・耀子、立ちはだかるライバルたち......。様々な経験を経て二人が掴み取ったものは!?

『永遠の0』で全国の読者を感涙の渦に巻き込んだ百田尚樹が、移ろいやすい少年たちの心の成長を感動的に描き出す傑作青春小説!

ボクシング小説の最高傑作がいま誕生した!

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鏑矢義平(カブちゃん:ボクシングをするために生まれてきたような少年)、木樽優紀(ユウちゃん:特進クラスの優等生。カブとは妙な親友同士)、高津耀子(ボクシング部顧問。英語の教師)。まずはこの主人公3人がとても良かった。昔から男2人と女1人の関係は「恋のトライアングル」となるのであるが、ここにマネージャーの丸野智子もからんで・・・。

【注意:以下、ネタバレあり!】

超高校級ボクサー・稲村に惨敗し、いったんはボクシングを捨てたカブ。その間に秘められた才能を見事に開花させる優紀。とあることがきっかけでカブはボクシング部に戻ってくるが、優紀との試合で思いもよらぬ敗戦を喫し、一大決心をする。その気持ちを悲痛な思いで聞いた耀子は・・・良いシーンでした。

終盤、稲村をおびやかすほどに優れたボクサーになった優紀だが、国体府予選の準決勝で果敢に挑んではね返され、打倒稲村の夢をカブに託す。決勝戦。日々進化するモンスター・稲村の強さに一度はあきらめかけたカブが、優紀の悲痛な声援と耀子のとある言葉に奇跡の奮起を見せ・・・。

最初、えらく分厚い本だなと思い、こんなに分厚い必要があるのかなと思っていた。だが、ボクシングの歴史、テクニックやトレーニング、科学的な部分とメンタルな部分、危険性と特殊性、高校生の大会、プロとアマチュアの違いなどのことがよく分からないと面白さ・魅力が半減したであろうし、人物をきっちりと描くのにこの長さが必要だったんだなと納得できた。説明的なものは主に沢木先生が耀子に話すスタイルをとっていたが、素人に説明するため読者にもとても分かりやすくて良し(防御の重要性を説く沢木がかつては伝説的なファイターだったとは!)。逆に、終盤はもっと書き込んで欲しかったとも思うが、キッパリと&スパッとしたストレートの切れ味は抜群であった。

ケンカ好き/ケンカっぱやい生徒が入部してきても、練習の厳しさに根をあげてすぐにやめていき、最初は冴えなくても、才能が無さそうでも、厳しい練習に我慢してついていき、基礎を忠実にマスターしたものだけが残る。そして、彼らが実際に少しずつ強くなっていく。最近の若い人の間では”ダサイ・面倒くさい”と簡単に切り捨てられてしまう”努力することの素晴らしさ、我慢することの大切さ”。みんな、我慢して・努力して強くなり、そして、しっかりとした人格ができて精神的にも成長していく。それらの描き方がとても良い。

どこか冷めたような感じであまり熱心に教えようとはしなかった監督の沢木が、優紀の隠れた才能と成長、まわりの部員たちのやる気を見て、次第に昔の情熱を取り戻す。先輩の南野(キャプテン)、飯田(次期キャプテン)、井手、野口たち。彼らもみんないいヤツで・・・。3年間遂に1つの勝利も挙げることなく卒業する南野。大学ではボクシングはやらないと言う彼が、最後のスパーリング相手にカブを指名する。

  カブ 「まさか南野さんのパンチをもらうとは思いませんでした」
  沢木「あれはラッキーパンチやない」「ほんまにええパンチやった」
  南野「もしかしたら、俺の生涯最高のパンチやったんかもしれません」
     「カブ。ありがとな」

部員達に愛されていたマネージャー・丸野の突然の死。その通夜のシーンが哀切。彼女がつけていたノートには部員達の特徴が克明にメモされており、それを知った部員達の泣き笑い。彼女の母がカブに語った言葉。自分の命が長くないことを知っていた丸野はカブに生きる喜び・躍動する輝きを感じ、自分の命をカブに託すかのように素直に好きと口にしていたのだった。「死んだら、俺の守護天使になるって-」 涙・涙・涙・・・。

3人がそれぞれの道を歩んでいるエピローグも味わいあり。インターハイ2連覇、高校3冠の伝説を作った優紀。高校8冠を目指してそれを豪語していたものの、ハードパンチャーゆえの怪我で無冠の帝王に終わったカブ。みんなを笑わせる明るさがあり誰からも好かれたカブにはせめて1冠を獲らせてやりたかったなあ。物語は優紀と耀子の一人称で綴られ、カブの真の思いが分からないもどかしさがあった故に、カブのことが最も気になり、印象に残った。そうそう、ざっくばらんで明るいカブの家族(特にお姉さん)もとても良かった。

  「その-カブラヤという人、どんな選手やったんですか?」
   石本が聞いた。
  「あの子は-」
   と耀子は言った。
  「風みたいな子やった」 

私、昔から格闘技は割と好きで、プロボクシングの世界戦は大体見ていました。この本を読むと、ボクシングも一度やってみたかったなあ・・・と、単純な憧れですけれど。メタボ克服のために今からでも健康ボクシングをやるか!?
百田尚樹氏は関西では深夜の超人気番組「探偵ナイトスクープ」等の放送作家とのことですが、これまで全くその名を知りませんでした。そこで早速、図書館で「永遠の0」を予約。

※思い入れだけで書いた長いけど支離滅裂な感想、失礼しました。

◎参考ブログ:皆さん、とても熱い感想を書いておられます。

   藍色さんの”粋な提案” (2009-2-11追加)
   ちきちきさんの”ぼちぼち” (2009-2-11追加)
   naruさんの”待ち合わせは本屋さんで” (2009-2-11追加)


再起(ディック・フランシス)

2007-10-11 23:03:00 | 15:は行の作家

Saiki1 再起(早川書房)
★★★★:80点

久々のD・フランシスです。全体的には非常に面白く一気読みに近かったのですが、ラストの闘いのシーンにはやや不満を覚えました。その直前、とある人物がシッド・ハレーのアパートを訪ねてきたシーンの驚きとゾゾーっとする恐怖感は素晴らしいと感じたのですが。

2発目の銃弾はどこに消えたのか、身分不相応なブランド物の服、DNA鑑定・・・など、ミステリーとしてなかなか見事な観点・描写もあって、これは楽しめました。なかなか動かない/動けない警察。競馬研究家のパディを利用し、<ザ・パンプ>の記者である旧敵のクリス・ビーチャーを使って(交換条件付きで協力を仰いで)全国に事件の真相を知らせる方法・アイデアは凄かったです。

自らがシッドのかわりに標的にされ傷つくが勇気を忘れない、逆にシッドに勇気を与える恋人・マリーナ。そして、シッドの心の支えとなり協力を惜しまない義父・チャールズの2人が最高に素晴らしい。彼らがシッドに語った言葉にはグッときます。恋人を失いかけたシッドの迷い・恐怖・苦悩がよく描かれていただけに、この言葉が生きました。本作品のポイントはここですね。シッドの別れた妻・ジェニイも良かったです。

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内容(「BOOK」データベースより)
障害レースの最高峰、チェルトナム・ゴールド・カップが行なわれる当日、元騎手の調査員シッド・ハレーは競馬場を訪れ、建設会社を経営する上院議員ジョニイ・エンストーン卿から仕事を依頼された。持ち馬が八百長に利用されている疑いがあるので、調べてほしいというのだ。彼は調教師のビル・バートンと騎手のヒュー・ウォーカーが怪しいという。ハレーは依頼を引き受けるが、その直後、競馬場の片隅でウォーカーの射殺死体が発見された。この日、ウォーカーとバートンが罵り合っているのを多くの人が目撃していた。そしてウォーカーは前夜、ハレーの留守番電話にメッセージを残していた。レースで八百長をするよう何者かに脅されていたらしく、「言うことをきかなければ殺す」と言われたという。やがてハレーは思わぬ経緯でウォーカーの父親から息子を殺した犯人を突き止めてほしいとの依頼を受ける。さらに知人から、ギャンブル法改正によって発生する不正についての調査も任される。こうしてハレーは三つの依頼を抱えることになった。そんな折、警察はバートンをウォーカー殺害容疑と八百長の疑いで逮捕する。彼は証拠不十分で釈放されるが、やがて事件が起きた。そのバートンが自宅で拳銃自殺をしたというのだ。どうしても彼が自殺したとは思えないハレーは、調査を進めていく。だが、卑劣な敵は、ハレーの最大の弱点である恋人のマリーナに照準を定め、魔手を伸ばしてきた!『大穴』『利腕』『敵手』に続き、不屈の男シッド・ハレー四たび登場!巨匠が六年の沈黙を破って放つ待望の競馬シリーズ最新作。


ゲイルズバーグの春を愛す(ジャック・フィニィ)

2007-01-31 23:20:00 | 15:は行の作家

Geiruzu1 ゲイルズバーグの春を愛す(早川書房)
★★★★☆’:85点

「ふりだしに戻る」「時の旅人」といったノスタルジックファンタジー小説、時を越える物語で有名なジャック・フィニィの短編集です。最近、梶尾真治さんの作品(「つばき、時跳び」 未来(あした)のおもいで」など)をよく読んでいるのですが、ジャック・フィニィはそのモデルとなったような人です。

読んだのが図書館で借りた古~いハードカバー(かなり傷み&日焼けあり)だったこともあって、”全体にやや古めかしいかな?”という印象も受けましたが、非常に良かったです。

タイムスリップもの、あるいはタイムトラベルものと思いこんで読み出したのですが、そういう要素のみではなく、ノスタルジー・ファンタジー・モダンホラー・ユーモア・恋愛小説といった要素が散りばめられていました。全10編を簡単に評価すると以下のようになります。◎印を付した作品だけで評価すれば十分にオーバー90点クラスなのですが、短編集全体としての評価は5点低くなりました。短編集をどう評価するかは非常に難しいです。

 ◎ ゲイルズバーグの春を愛す
    悪の魔力
 ○ クルーエット夫妻の家
 △ おい、こっちをむけ
 △ もう一人の大統領候補
 ◎ 独房ファンタジア
 ○ 時に境界なし
 ◎ 大胆不敵な気球乗り
 △ コイン・コレクション
 ◎ 愛の手紙

「ゲイルズバーグの春を愛す」

 少しずつ近代化が進んできた街・ゲイルズバーグ。
 古いものは次第に壊され、失われていく。更に新たな変化が起こり
 そうになったとき、街から既に姿を消してしまった路面電車が、
 荷馬車に曳かれた旧式の消防車が、古い自動車が現れて現在を
 撃退する。
 街の抵抗・・・、街そのものが、街の過去の歴史そのものが近代化の
 流れを阻止しようとするとは!何という発想!
 古いもの・ことが全て素晴らしいというつもりはありません。
 しかし、歴史を積み重ねてきた街の力は凄いのである。熱烈支持!
 ※「クルーエット夫妻の家」も建物・家の持つ魂を描いています。

「独房ファンタジア」

 スティーヴン・キングのモダン・ホラー小説やその映画化作品
 「ショーシャンクの空に」「グリーン・マイル」を思わせる刑務所を
 舞台とした不思議な不思議な物語。
 刑の執行が7日後に迫った死刑囚が独房の壁に描いた絵の謎。
 このラストは誰にも予想できないでしょうね。

「大胆不敵な気球乗り」

 ジブリ映画を彷彿とさせる浮遊感が最高。
 家々の数メートル上を、街路を通り抜ける微風に乗ってカーブ
 していく感覚が素晴らしい。
 ゴールデン・ゲート・ブリッジのタワーの頂上に記されたイニシアル
 2つ。いいなあ。

「愛の手紙」

 先に読んだ梶尾真治作品はこの短編がベースだったのでしょうか。
 古い机に隠された3つの抽斗(ひきだし)。
 たった3回しかできないやりとり。
 ヘレン・ウォーリィが年月の隔たりを越えて伝えた気持ちに涙。
 この短さで、これだけ深い愛を描くとは!
 脱帽です。

「もう一人の大統領候補」

 宮部みゆきの短編集「我が隣人の殺人」の中の名作
 「サボテンの花」と少し似た味わいがありました。

「時に境界なし」

 送った人間が、すでに他の物体によって占有されている時空に
 現れるという危険がある-
 ハインラインの名作「夏への扉」に同じような表現が出てきた記憶が・・・。
 (違いましたっけ?)

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◎参考ブログ:

 tenncyann1gouさんの”本ミシュラン”
 和井八凪さんの”真・問わず語り的空飛び日記”
 mit_yamaさんの”もんと黄色MR-Sとのアンニュイな日常”
 36歳独身ニートさん(?)の”読書感想文”
 orange-skyさん(?)の”日本人ひとり駐在日記”
 月野ホネさんの”月野ホネ/ブックレポート”
 ベックさんの”読書の愉楽”
 sirius2xanaduさんの”羊@哀切系の『これが好き!』”
 四季さんの”Ciel Bleu”
 アカガネヒロさんの”A-METALical Days”
  ユキノさんの”時間旅行~タイムトラベル”
 ザムザさんの”きまぐれザムザの変身願望”