DIVE(ダイブ)!! 1~4(講談社)
★★★★☆:90点
第135回直木賞受賞作家・森絵都さんの素晴らしいスポーツ青春小説です。文庫本も出ていますが、私はソフトカバーの単行本で読みました。感想を1回では書ききれないと思うので、表紙画はまず1と2をアップ。
☆そらさんのブログ:日だまりで読書 でも高く評価されています。素晴らしい感想なので、私が新たに書き加えることはあまりなさそうですね。
1~4を通じての感動度は、かの名作「バッテリー1~6」(あさのあつこ)のそれを上回るかもしれません。また、1~4がうまく起承転結になっていたように思いました。
1:知季編 ダイヤモンドの瞳を持つ知季の目覚め
2:飛沫編 津軽の野生児・飛沫が抱える苦悩と復活
3:要一編 サラブレッドの要一が見せた気骨
4:試合編 果たしてオリンピックに行くのは誰か!
知季・要一・飛沫・レイジ・サッチン、コンクリート・ドラゴンに挑む少年たちの何と生き生きと描かれていること!いえいえ、コーチの富士谷啓介(要一の父)・麻木夏陽子・大島、要一の母といった大人の姿も丁寧に描かれています。日水連・前原会長、一筋なわではいかないタヌキ的人物の権威者も秀逸。要一との対決シーンは貫禄十分で見事でした。そうそう、飛沫の彼女・恭子もキュートで良かったです。
炎のジロー、ピンキー山田といったライバルサブキャラも良かったですが、これに関しては門脇・瑞垣・展西といった強烈キャラを擁する「バッテリー」の勝利です。
「バッテリー」は読者にやや忍耐と苦痛を強いる面もありましたが、「DIVE!!」はもっとライト感覚で恐らくは誰でもが楽しめる作品だと思います。妻もほぼ一気読みでしたしね。両作品はタイプが異なるし、書かれた期間も異なります。どちらが優れているかといった議論は無意味と思いますが、本作品は手に汗握る試合のシーンが素晴らしかったです。「バッテリー」は試合シーンの少なさが唯一物足りなさにつながっていたのですが、「DIVE!!」にはそのもどかしさがなく、これは非常に嬉しかったです。
単行本では4冊=4部構成になっており、あえてそれぞれに点数をつけると
1-前宙返り3回半抱え型 ★★★★ :80点
2-スワンダイブ ★★★★☆ :90点
3-SSスペシャル’99 ★★★★★’ :95点
4-コンクリート・ドラゴン ★★★★☆ :90点
私の場合、こういった感じになりました。1も爽やかな佳編といった感じで良かったのですが、導入編・話の途中といった感じもあり、点数としてはやや控えめになりました。
森絵都、初の「スポ根小説」とか「スポ根シリーズ」といった表現が使われており、筆者自身も”御礼”としてあとがきで「スポ根もの」と書いておられますが、これには違和感あり。確かにみんな頂点を目指して必死に戦うのですが、知季・要一・飛沫たちの会話が素晴らしく、ユーモアもあり「スポ根もの」という感じはしなかったです。津軽に帰った飛沫を知季と要一が訪ねるシーンなど、静かでのどかで、心やさしくて、温かくて、でもちょっと気恥ずかしい感じがよく出ていたと思います。「ダイビングという超マイナーなスポーツにかけた青春。その1ページを鮮やかに切り取った秀作」と言えば良いでしょうか。そして、自分では使い過ぎのきらいがあってちょっと躊躇するのですが、素晴らしき「成長小説」でもあると思います。終盤になるにつれてどんどん積極的になっていく子供たち。それを誇りに思う敬介。いいシーンでした。
とてもこの作品の素晴らしさをうまく書き表せません。とりあえず感想(その1)はここまでにします。