新聞配達は犬との闘い

アメリカ人は大きい犬を飼っている家庭が多い。犬を鎖でつないでいればいいのだが、夜の間は鎖をはずして庭を自由に動き回れるようにする家庭が多かった。外人住宅の新聞配達は犬との闘いでもあった。
犬に襲われた時、絶対に犬に背中を見せて逃げてはいけない。犬は人間より早いからすぐに追いついて尻を噛む。外人住宅だけではなく村でも放し飼いの犬が多かったから、私たち子供は犬に襲われた時の防御のやり方を話し合っていた。防御方法は犬と向かい合い大声を出しながら手を振り回し後ずさりをしていくことだ。普通の犬なら吠えるだけて飛び掛かってはこない。

しかし、外人住宅の犬は大きい。手を振り回しても飛び掛かってくるかも知れない恐怖があった。私は手ではなく新聞紙を丸めて襲おうとする犬の鼻あたりを新聞紙で突きながら後ずさりした。この方法は効果的で、犬は新聞紙を噛もうとして私に飛び掛かることはなかった。
このやり方で犬に噛まれるのを防いできたが、ある家にとても大きい犬がいて、新聞紙でも防げそうになかった。普通は家の中に閉じ込めているのだが、時々庭に放っている時があった。犬はもしかすると私を襲う気はなくて、フレンドリーな気持ちで私に寄ってきたかもしれない。
しかし、でかい犬が吠えながら寄ってくるのはとても恐怖だった。新聞紙を振りかざしながら難を逃れていたが、いつかは新聞紙は通用しなくなって犬に襲われるかも知れないという恐怖があった。恐怖と闘いながら新聞配達をしていたが、そのうちに新聞配達が毎朝来るのを知っていながら、犬を野放しにしている主人に腹が立ってきた。なめられてたまるかという気もちが湧きあがり私は反撃に出ることにした。こぶし大の石を左手に持ち私は庭に入った。新聞を玄関のノブに挿み、玄関から離れている時に裏庭からでかい犬がやってきた。
私は右手に新聞紙を持ちゆっくりと後ずさりした。犬が接近してきた。私は新聞紙を犬の鼻あたりに向けた。犬が新聞紙に触れようとした瞬間に思いっきり石を投げた。石は犬の前足に当たり、犬がウオーンと哀れな声を発した。すると家族がなにごとが起こったのかと一斉に出てきた。私は家族が玄関から出る前に庭の外に出た。背後で主人や妻や子供がわーわー騒いでいるのが聞こえたが、私は振り向かないで次の家に向かった。
翌日から犬を庭に出すことはなくなった。
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