続・「普及」が「衰退」をもたらす・・・・金物は補強なのか本体なのか?

2007-11-23 18:48:36 | 建物づくり一般
例のホールダウンhold down金物の使用箇所を規定した「告示第1460号」の二項に、「ただし、当該仕口の周囲の軸組の種類及び配置を考慮して、柱頭又は柱脚に必要とされる引張力が、当該部分の引張耐力を超えないことが確かめられた場合においては、この限りではない」とあり、その確認の簡便な方法として、いわゆる「N値計算法」が奨められている(「改正建築基準法の解説」、住宅金融普及協会発行「木造住宅工事仕様書」に詳しい解説がある)。
       
ここで注目したいのは、この計算法・算定式の妥当性云々ではなく、「筋かいを設けた場合」についてなされている「注釈」。
「筋かい」を使用する場合に限り、その算定式に補正が必要なのだ。
簡単に言えば、「筋かい」を使用すると、柱脚、柱頭にいわば「異常な引張り力」が生じる場合がある、ということ。

去る2月20日の「ホールダウン金物の使用規定が示していること」で、ホールダウン金物は、そんなにたくさん入れる必要はない、入れる場所は限られている(たすきがけ筋かいの場合)、と書いたが、基準の策定者自体が、別の形でそのことを認めているわけである。

逆に言えば、どうしてそんなに「筋かい」にこだわるのか、まことに不思議である。要は、「筋かい」をやめればよいのである。
むしろこの際、「筋かいは危ない」、あるいは、「筋かいは、余計な手間が必要になる(つまり無駄だ)」と言うべきなのではないか。
「筋かい」にこだわるから、架構の各仕口は補強金物だらけ、こうなると、補強ではなく金物が本体のごとくに見えてしまう。

どうしても「筋かい」と「ホールダウン金物」を使いたいならば、せめて、柱にボルトで取付けるのはやめるべきだろう。
なぜなら、柱にM12ボルト5本でとめる(HD-B25)などということは、どう考えてもおかしいからだ。木目に沿って、M12のための孔(多分15mm径が、ときには18mm)を@約10cmで開けるなどというのは、いわばミシン目をつくるに等しく、「割れ」を奨励しているようなもの。
材の欠損を気にする一方で、木目に沿ってミシン目を開けることを気にしないのは、まったく腑に落ちない。
どうしても、というなら釘打ち(HD-N25など)の方が問題が少ないだろう。作業も簡単。

そして、最もお奨めなのは、先ず、①軸組を梯子型になるように、「土台~胴差・床梁」間、「胴差・床梁~桁・小屋梁」間に横架材を設け(差鴨居など、丈を大きくする必要はない)、架構全体を一体になるような継手・仕口で組むことを考えること。モデルは今井町・高木家。
そして、確認審査を通すためには、②「筋かい」ではなく、「面材耐力壁」を利用する。特に、「貫タイプ面材耐力壁」なら、室内の間仕切り壁をもすべて耐力壁として算定できる。この方法で、確認審査は通過できるのだ。

ここで肝腎なのは、②を充たしただけで安心してはならない、ということ。
まして、先に2月5日に紹介した現在普通に見られる「危険な架構」では、たとえ耐力壁量が数字上規定を充たしても安心できない。

大事なのは①の作業。これは、現行の法令は、何も規定していない「現場の知恵に基づく技術」。これを実現するために(「確認」を得るために)、やむを得ず②の作業をするのである。
仮に①のような架構をつくって、計算をしたらホールダウン金物が必要という結果が出ても、だからと言って、すぐさまホールダウン金物を採用する必要もない。
「土台と差鴨居または桁・梁」、「胴差と差鴨居または桁・小屋梁」とをボルトで縫うだけで、ホールダウン金物に代えることができるからだ。

本来、金物による補強なしで、木だけで、十分に外力に耐える架構をつくる技術があったということ、それはメンテナンスが可能な方法であったこと、そしてきわめて寿命が長かったということ・・、これらの厳然たる事実から目をそらさず、今からでも遅くはない、そこから学ぼうではないか。
つまり、最新の「理論」を唯々諾々と信じ、唯々諾々と従う前に、「原理・原則」、言い換えれば、「自身の体感を通じて得ている常識」でものごとを考えよう、いわゆる「伝統工法」を編み出した人びとと同じ立場に立ってみよう、ということ。

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