一休みどころかフタヤスミほどさせていただきました。ひとまず、約束事は納めましたので再開。
この間に閲覧が多かったのが、かなり前、2007年3月に書いた小坂鉱山・公害についての記事(下記。「補足」は当時小坂につくられた建物の紹介写真)。
田中正造の直訴事件と同じ年に、小坂鉱山では鉱毒除去施設が完成していたことを書いたもの。
なぜ、この連休になって閲覧が増えているのか、その理由が分りません。
「公害」・・・・足尾鉱山と小坂鉱山
小坂鉱山・・・・補足
康楽館・・・・小坂鉱山直営の劇場 [追加 5月11日 11.03 冬の康楽館・写真ほか]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
[文言追加 14.57][解説追加 15.04][註記追加 15.21][註記追加 5月10日 7.44]
今回は、ドロミテ地域に建つ家屋群の架構の様子を見てみることにします。
これまた実に詳しく調べられていて、いろいろと学ばされます。
この地域には、壁体を石積みでつくり、木造の屋根を載せるもの、石積みの壁体上に木造の建屋を建てるもの、石積みの基礎の上にログハウスを建てるもの、など各種のつくりがあります。
しかしそれだけではなく、石積みの壁体の上の屋根の架け方でも実に多様な方法が見られます。したがって、組合せの種類はさらに多様になります。
同書から、これらについての図解を転載・紹介します。
なお、各図には、スケールが描かれています。
それによると、一般的な梁行寸法:梁間は7~8m程度、つまり4間前後のようです。
下の図は、壁体上の小屋組のいろいろなタイプを紹介したもの。
この図の屋根勾配は、4寸5分、1mで45cm上る勾配。大体4寸5分~5寸勾配が多いようです。
屋根材は、シングル葺き(木材の木っ端を葺いたもの)、石材(扁平に割れる石材:スレートや鉄平石の類らしい)、そして焼き物の瓦のようです。
図の「1」は、石積みや煉瓦積みなど、いわゆる組積造(そせき・ぞう)でよく見かける屋根の架け方。先に紹介した版築でも使われています。
妻面になる壁を屋根型に立ち上げ、その間に「桁」(母屋にあたります)を繁く渡して屋根材を載せる方法で、当然ながら2枚の壁の間の距離:「桁」材の長さに限界があります。
なお、下記に中国西域、西安近郊で観た例を写真で紹介しました。
http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/129999f445a867ee7ca2254e041fc62c
写真のように、壁~壁の距離が長いと、撓んでしまいます。
日本では見かけたことがありません。
図の「2」は、両妻壁の頂部に「棟木」を渡し、平側の壁の上に据えた「桁」との間に「垂木」を架ける方法。
この「桁」は寺院建築の「頭貫」に相当すると考えられます。
日本では、明治期の煉瓦造などに例があります。
註 日本では、倉や土蔵で、「丑梁」という巨大な材を
「棟木」位置に桁行方向に入れ、それと「軒桁」の間に垂木を架ける方法はあります(下記記事)。
室内に柱を立てない、つまり広く使う方策。[註記追加 15.21]
http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/6fca05a51eaf9424873fa92cb2b9b5e8 [註記追加 5月10日 7.44]
図「3」は、「1」の「母屋桁」の数を減らし、それを「垂木」に代えた方法。
あるいは「2」の「棟木」と「桁」の中間に「母屋」を入れた方法、と見てもよいでしょう。その場合、「2」に比べて「垂木」の太さは小さくて済みます。
これも、日本では、明治期の煉瓦造などに例があります。
図「4」は、四周の壁は水平位置で終り、木材をログハウス風に、妻-母屋-妻-妻-・・・と交互に積んでゆく方法。
妻側の材と母屋の材とを互いに欠き込めば、通常のログハウスと同じく妻壁も隙間なく積まれるかとは思いますが、それでは「母屋」の支点になる箇所が細くなり、屋根の重さに耐えられるか疑問。
それゆえ、欠き込みはつくらず、できる隙間は別材で充填するのではないかと思います。
この例は、日本にはないでしょう。
図「5」は、ログハウス方式で、切妻の部分も木材を積んだもの。妻だけ見れば「4」と同じです。
日本のログハウスは、妻は積まないのが一般的ではないでしょうか。
図「6」は、壁は四周同じ高さでまわし、妻になる壁に「棟木」を受ける「束柱」を立て、その「束柱」に「登り梁」を架け、「母屋」を据え、「垂木」を架ける。
図「7」は、ログハウスの壁は四周同高。妻側の壁上に「束柱」を「方(頬)杖(ほおづえ)」で支え、あとは「2」に同じ。
日本のログハウスでは、平らに「梁」を架け「束柱」を立てる「束立方式」:和小屋が一般的でしょう。
図「8」は、トラス小屋。日本では煉瓦造で普通に使われる方法。会津・喜多方の木骨煉瓦造でも、大抵はこの方法をとっています。もっとも、喜多方の木骨煉瓦造の場合は、「梁」は木の柱で支えられています。
以上は小屋組だけでしたが、建屋全体を分類したのが次の図です。
「1」は、上掲の図「1」に対応しています。
「2」「3」は、「束立て」方式で、「3」は「棟木」~「壁上の桁」に直接「垂木」を架けていますが、「2」は中間に「母屋」を設けている例。その「母屋」の上で「垂木」を継いでいます。「垂木」の材寸を考慮して、「母屋」の要・不要を決めたのかもしれません。[文言追加 14.57]
日本では、「梁」を「束柱」上に架け(「二重梁」)、その上に「母屋」を載せるのが普通です。
以上の「1」「2」「3」は、壁部分が「組積造」(石積み、煉瓦積み)の例です。
「4」「5」は、一層を「組積造」(石積み、煉瓦積み)、その上層をログハウスにした例。「4」「5」の違いは屋根のつくり方にあります。
「6」は、基礎の上に建つログハウス。
「7」は、木造の軸組工法で、柱~柱に板材を張り込んで「真壁」に仕上げています。板は「落し込み」ではないようです。
各「柱」と「横材」:「土台」「梁・桁」の接合部は、「方(頬)杖」で固定し、それをそのまま現しています。これは、西欧の木造軸組工法で多用される方法です。
「方(頬)杖」の取付け方にはいろいろあるようです。
この「方(頬)杖」は、わが国で言う「火打ち」と呼んでもよいのかも知れません。
大事なことは、「方(頬)杖」は各柱に設けられていることです。各柱を、先ず垂直に維持しよう、という考え方と考えられます。
これは、日本の「建築基準法仕様の軸組工法の筋かい」の考え方との大きな違いです。同じ斜め材でも、「目的」が違うのです。[解説追加 15.04]
「8」は、木造軸組工法、板張り大壁仕上げの例です。この図には「貫」様の材が見えます。不詳ですが、柱と柱の間に差し込んであるのはたしかです。壁板張りの下地のためと思われます。[文言追加 14.57]
「9」「10」「11」は、多層の建物で、壁をすべて「組積造」とし、屋根だけ木造の諸例。
基本的には、「棟木」を受ける箇所だけ「二重梁」としています。
「9」の「切妻屋根」が基本形で(図では、両端で妻を切っていますが、切らなければ純粋の「切妻屋根」)、「棟木」がなく「束」だけの場合が「11」の「方形(ほうぎょう)」屋根、「9」の棟の端を桁レベルまで切れば「10」の「寄棟(よせむね)」屋根になります。
おそらく、これ以外にも組合せ方が考えられるのではないかと思います。
次は、木造建物の詳細。
「1」から「4」までは、ログハウスの諸相。「5」から「8」が、軸組工法の諸相です。
もっとも、軸組工法でも、適宜、組積造:ログハウス方式:を併用しています(「7」「8」の例)。
こうして見ると、木造軸組工法の考え方は、基本的に何処でも同じということが分ります。すなわち、柱は垂直維持されなければならない、ということ。彼の国では「方(頬)杖」を多用し、わが国では「長押」や「貫」で柱相互を固めて垂直を維持したのです。
この考え方からすると、わが日本の「建築基準法仕様の木造軸組工法」が、いかに異様なものであるか、もよく分ります。日本は木造建築の国、だなんて「建築基準法仕様」を推奨する方がたには言ってほしくありません。[解説追加 15.04]
今回は写真を載せませんでした。次回には以上の具体例の写真を転載・紹介したいと思います。