建築をめぐる話・・・・つくることの原点を考える       下山眞司        

                     ☆ 2019年1月より、故人が残したものを順次、掲載して行きます。☆

建物づくりの原点を観る-9(了)

2010-05-31 22:10:34 | 居住環境
“ALTE BAUERNHAUSER IN DEN DOLOMITEN”紹介の最後は、同書が選んだ10の建物の架構タイプの中から、異なるタイプを五つ選んで転載します。
編集し直して紹介しようかと、いろいろ算段したのですが、結局は同書の紹介頁を、そのまま転載することにします。ドイツ語の解説もそのままです。
なるべく分りやすくしようと考え、図版を大きくしましたので、かなり長くなります。ご容赦のほど・・・・。
なお、T1・・・はタイプ1・・・という意味です。

最初は、全部石積みの建物。



解説図にあるように、石積みの壁は、外側を垂直にする方法と、内壁を垂直にする方法があるようです。
煉瓦造で木造床の場合には、外を基準にして、内壁を階ごとに薄くしてゆき、そこにできる段違い部を使って床梁を架ける方法があります。喜多方の煉瓦組積造もその方法を採っていました。


次は、木造組積造、二階建て。





次は四階建てで、半分が石積み、半分が木造という建物。
木造部分は納屋、家畜小屋のようです。





次は、軸組工法ですが、組積造的な梁・桁のつくりかたに特色がありそうです。





最後は、石積みと木造の混合、今でいうハイブリッド。しかし、今のものに比べると数等上手、なかなかのつくりです。




この建物など、わざとらしさがなくて、気持ちいい。これが ARCHITECTURE WITHOUT ARCHITECTS のいいところなのだ、と私は思います。柳宗悦氏が、民のつくるものに、本当の美がある、と言ったことと多分同じなのです。

最後に、この書の表カバーを紹介、A4を少し上回った大きさなので、合成して紹介します。それでも部分です。




さて、6月からは、いろいろ事例を観察してみると、昔から地震は多発していたにもかかわらず、「日本の建物では(もちろん木造です)、壁は架構の主役ではなかった」ということが分る、という話を書きたいと思ってます。
つまり、「(耐力)壁がないと、地震で壊れる、建物は自立しない」というのは「(何かの)為につくられた神話・伝説の類い」だ、ということです。

ちょっと休憩:経済の語義と現実

2010-05-28 20:32:43 | 居住環境


1年は早いもので、ウツギとホトトギスの季節になりました。

28日の毎日新聞朝刊(東京版)に気になる新聞の記事がありましたので、紹介します。「経済」の語義に触れた記事です。
毎日新聞のに寄せられた投稿論説です。
私が毎日新聞の記事をよく紹介するのは、毎日新聞には、記者の署名記事を含め、「本当のところ」を「容赦なく」書く記事が多いからです。

今日の記事は、「経済」の語義にかかわるもの。
渋沢栄一が、このようなことを言っているのは、寡聞にして知りませんでした。これはすなわち、かの「近江商人」の考え方に同じです。しかし、彼が農民の出であることを考えれば納得がゆきます(埼玉・深谷に彼の生家が保存されています)。

だが、今の経済界は、この語義を省みることさえしない。
私は、そうであるなら、この語ではない別の語を使うべきだ、と思っています。たとえば「貪利」などどうでしょう。「利益を貪る(むさぼる)」の意です。



建物づくりの原点を観る-8

2010-05-25 18:36:23 | 居住環境
[文言追加 26日8.10]

“ALTE BAUERNHAUSER IN DEN DOLOMITEN”から、納屋の写真を。
大半が、基礎は石積みで本体は木造。軸組工法が多いようです。

最初は、左側が納屋が並ぶ周辺風景。右はその内の一棟の近接した写真。
標高1200m弱のあたり。



軸組工法です。手前の出っ張りは、妻側全面ではなく、外から釘打ちの方杖の留め方から見て、ことによると増築かもしれません。
方杖にそって張られた板張りなど、微笑ましいつくりです。
壁の板張りは縦張りの大壁。
左側の写真を見ると、二層部の板壁は、一層部の板壁に被さるように、「羽重ね」で張っています。
「縦張り」も、「羽重ね」も、これは、その地の風雨、風雪への理のかなった対応と考えられます(「縦張り」は、水の流れがスムーズ)。
日本でも、風雨の強い地域では、縦板張りが多く見られます。
「縦が恰好いい」とか、「横が恰好いい」とかの、「見た目」による判断はしない、のが ARCHITECTURE WITHOUT ARCHITECTS のまさに真髄と言えるでしょう。

ところが、どういうわけか、 ARCHITECTS は、「理」抜きで格好よさに走りたがる。どうしたら「恰好」で人目を引くか、そればかり考えているのではないか?
これはどうも、洋の東西を問わず「現代の ARCHITECTS の世界」の病のように思えます。
「個性」あるいは“IDENTITY”とは、「恰好」そのものではなく、その「恰好」に至らしめた「考えかた」に顕われるもの。

そしてそのとき、私は常に思う。
そんなにまでして「勝手な自分を表現したい」のなら、自分のお金でやりなさい!人の建物はもちろん、ましてや「公共の」建物にはかかわってはならない、と。[文言追加 26日8.10]
なぜなら、「公共」によって「専門家」として認められたのではないのだから(これについては、http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/35246bc9744ecd5c97dceb6e6a97c304でも書きました)。




これは、使えるところはどこでも使うぞ、と言っているみたいな納屋の例。
これも軸組工法。標高1300mの場所。
石積みの基礎から、床梁を跳ね出して床面を広く取っています。
先の例にもありますが、小幅の板材のラチス(格子)はよく使われているようです。

次は、似たようなつくりの近接写真。



壁に設けてある台は何なのだろう?
木造部の一層目には薪が積まれています。
二層目の床の組み方。日本で言う京呂組、先ず横手の桁を架け、それに梁を架ける。床をつくるためにその梁に床受けの梁を架けている。
おそらく、こういう工夫をしているうちに、だんだんと丈夫な架構法を見つけ出してゆくのだと思います。

いつも思うのは、現在の「教育」を受けると、このような「現場での工夫の積み重ね」を見ることなく、もちろん経験することもなく、後付の「理論」を基にものを考え、つくるようになってしまっている、ということ。

東京での「伝統を語るまえに」の講習会で、ちょっと感じたのは、どうも「部分」だけに関心があって、それが「全体」の中の「どの」部分にあたるのか考える、考えようとする方が少ないのではないか、ということでした。
「現場」の人たち、それぞれの土地で暮す人びとが、その地で暮すための場所をつくるとき、およそ「ありとあらゆることを考えてつくる」はずです。しかもそれを、「とりたてて意識もせず」に!

しかし、「現場」から遠く離れることによって生まれてしまった「専門家」は、ものが見えなくなってしまった。
実際、いかに「現場」から離れるか、あるいはまた、ものが見えなくなればなるほど「専門家」になれる、そう考えているのではないかとさえ、思いたくなります。

それはさておき、こういう納屋が草原の中に建ち並ぶ風景が次の写真。



今回の最後は、集落のはずれの大きな納屋。標高1000m近く。
窓越しに洗濯ものが見えますから、石積みのところには人が暮しているようです。



背後に教会と集落の家々が見えます。
その大きさから、ことによるとこれは共同の建物かもしれません。
石積みのうえの木造部分、見えているのは飼料を積んだ山ではないでしょうか。
私の暮す近くには牛の牧場がありますが、そこでもこんな具合に飼料が積まれています。そこからの想定です。

今回は、これまで。

建物づくりの原点を観る-7

2010-05-22 10:27:58 | 居住環境
少し間が空きましたが、先回の続きで、ドロミテ地域の建物の諸相を紹介します。
出典は、同じ“ALTE BAUERNHAUSER IN DEN DOLOMITEN”です。
今回は、先回載せなかった石積みの多層建築。

石を加工しない(加工しても叩き割った程度)野面積みのようです。

いずれにしても、日本では普通にはお目にかかれない建物づくり。
西欧の都会にある石積み建物よりも、私にはこちらの方が好みに合う。
ロマネスクと呼ばれる建物づくりにも共通するところがあります。
それは、つくりたいことが、素直で明確なこと。
表向きの顔を先ず綺麗にすることに努める、などということとは無縁。だからかえって綺麗なのかもしれません。

最初は標高950mほどの集落の一画。「建物づくりの原点を観る-1」(http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/aacd0728d16f3fa859676f7f9282608a)の地域拡大図の北東にある CENTRO CADORE のあたりではないかと思われます。



最上階以外は人の暮す場所のようです。
窓まわりには、よい建具が入ってます。内側が内開きの両開きガラス戸、外側に外開き鎧戸(よろい ど)。
別の本で、内側も外側も外開きで、内側を閉めたまま、外側の鎧戸を開けることのできる「機構」を見て驚いたことがあります(いつか紹介します)。

次は、場所の比定はできませんが、少し標高の低い500mあたりの建物。急斜面に建っているようです。



何気なく、必要に応じて設けられた窓の並びの美しいこと。
もちろん、石積みの建物の原則で、開口部はかならず上下に通らなければならない。その原則をまもりながら、美しい。
これは石積みだけではなく、組積造共通の原則。隅には開口を開けることはできず、いくらかの壁の部分をつくる、これも原則。
このあたりは以前に紹介した EARTH CONSTRUCTION に詳しく説明されています(http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/a1e5197a0fd0d53a4f82d9ed892bddbd)。

積み方は、窓を設けるレベルまで積んでゆき、開口位置を確認して開口間の壁だけ積み上げる・・・この繰り返しで石を積む。
目地材:接着材は、石灰(シックイ)か特産のドロマイトでしょう。

それにしても、どうやって石を上まで運ぶのか。

次の2枚は、標高1000m弱のあたりの建物。
2枚目の方は、石積みの上を白壁で仕上げている。多分、ドロマイト塗り。





石積みの建物は、いずれも屋根は瓦葺きのようです。

次は、今回紹介の2枚目の写真の建物の手前側の巨石を積んだ部分の詳細です。
瓦の様子もよく分ります。これが瓦の原理・原型。日本で言う本瓦と理屈は同じ。

さかのぼれば、同じ形の瓦を交互に上向き、下向きにして使うのが原型だったらしい。中国の庶民の住居で見たことがあります。



今回のおしまいは、こういう石積みの建物が建ち並ぶ風景。

窓には、目線の高さまでカーテン。上から陽を採りこむためではないかと思います。

バルコニーの付け方が分ります。



あと2回ほど、紹介を続けます。
一回は「納屋」の建物の紹介。もう1回は個々の建物の断面図などの予定です。
ちょっと、間が空くかもしれません。

続・ちょっと休憩・・・・五月になれば

2010-05-19 09:21:57 | その他
ただいま、次回の編集中です。
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昨日(5月18日)の毎日新聞朝刊コラム「発信箱」:記者の発言:にあった記事を紹介します。

内閣迷走して支持率低減し「民意」率直に顕わる、これは、「功績」!ではないか、私はそう思っています。

王様がハダカなのは知っていたのに、見ないふり、知らないふりをして済ましてきた、ということなのでしょう。
なんとなく、いろんな局面で、同じようなことが起きているように思います。それが戦後日本の「民主主義」の姿!?




ちょっと休憩:五月になれば.....

2010-05-17 10:41:22 | その他


近くの林に、今年は木を覆い尽くすように藤が咲きほこっていました。
写真を撮りそこない(今日見にいったら、すでに盛りは終わっていた!)、これは昨年撮ったもの。今年は一面が藤の花だった・・・。

なんとか昨日の講習会も切り抜け、一息。
それにしても、上野公園のあの人混みは何だ?と思ってしまいました。


最近、内閣支持率が減った、だとか、首相はブレテいる、コウヤクはどこへいった・・・等々、いろいろにぎやかです。
それを傍で見ていると、どうすりゃいいの、ということが何も語られていない。

私個人は、そのおかげで、沖縄に基地が集中していることの「おかしさ」が世の中に広くよく示される結果になって、かえって好ましいことだ、ぐらいに思っています。

そんななか、5月12日の毎日新聞(東京)夕刊に、次のような評論が載っていました。
私の知らなかった「事実」も示されています。
そのままスキャンして転載します。

  註 文中に「嗤う」という語がでてきます。その意は次のとおりです。
     嗤う:あざけりの対象にする(新明解国語辞典)


建物づくりの原点を観る-6

2010-05-13 18:50:37 | 居住環境
[註記追加 5月17日 8.00]

“ALTE BAUERNHAUSER IN DEN DOLOMITEN”から、イタリア・ドロミテ地域の建物を観てきました。いずれも、「それぞれの場所で暮す必然が生みだした(と考えられる)いわば建物づくりの原点」そのもののつくりかたで、まさに ARCHITECTURE WITHOUT ARCHITECTS 。それゆえ衒いがありません。

  註記 下河敏彦氏のブログ Let's Design with Nature(http://blog.goo.ne.jp/geo1024) で
       ARCHITECTURE WITHOUT ARCHITECTS を紹介していただいております(下記)。
       http://blog.goo.ne.jp/geo1024/e/efc50e011f0c2798225d2ce2c6f8f3f8 [註記追加 5月17日 8.00]

今回は、そのいくつかを同書の写真で紹介します。
タイプ別に整理して、とも考えましたが、これまた大変な話。そこで、おおよそ同書が紹介している順に紹介することにします。どれにも地名が付いていますが、簡単に比定できませんので、そこに記されている土地の標高だけ記す場合もあります。


はじめは角材の組積造形式(いわゆるログハウス、ただしログ:丸太ではありません)。
地域の西部、LIVINALLONGO の下流域、標高1256mのBRAMEZZA という村。LIVINALLONGO はhttp://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/49579ab3d35aa28af6415346386cfb00 の地図の左上の方にあります。
ここでは、多層で屋根以外石積みの建物も混在しています。写真の建物の右手の白壁は各層石積みの建物。白壁はドロマイトか?

地上階の外郭と部屋境を石積みでつくり、そこに1層の角材による組積造を組立てています。もちろん、小屋裏も使っています。
上層の床は、石積みの壁の上に木材を横たえてつくり、バルコニーを受ける梁も片側は石積みの壁に埋め、他端を木の柱で支えています。

石積み壁の上の床梁をそのまま外に飛び出させバルコニーを受ける例もあり、それが次の写真です。

ここは、標高1450m近辺の地。
石積みの壁から飛び出したバルコニーを板を張り付けて壁にしている箇所もあります。

次は標高1000m地点の例。

屋根の妻部分の破風(はふ)位置に、板壁を設けています。風雨、風雪の吹き付け防止のためで、これは日本でも見られます(「遠野・・・・千葉家の外観」はその一例です)。
手前の何もないところは、うまくスキャンできていませんが、一面の雪。

次はやはり1000m近辺の石積み多層建物で、バルコニーや屋根の詳細が分ります。

屋根は板を羽重ね(はがさね)に並べ、その上に葺き材が載っているように見えます。あるいは、葺き材も板か?
バルコニーの手摺は、板の両サイドを繰り型に切取り、「行って来い」:「やり返し(上枠に板厚の深い溝、下枠に浅い溝を彫っておき、板を一旦上溝に嵌め押上げ、次いで下の溝に落し込む)」で嵌めているものと思います。
板相互の間にできる繰り型様の孔は、風通しにきわめて有効。この手摺・腰板仕様は今でも使えます(孔の形は任意)。
下の溝に水が溜まるのをきらい、下枠をL型に加工、手前(建物側)で押縁で止める方法もあります。

次は、木造軸組工法による多層建築。標高900m内外の場所。

柱間に胴縁を設けて縦板張りの真壁納めで壁をつくっているようです。

次の二つの建物は標高1300mあたりの角材の組積造形式のつくりで、上の写真は石積みの1層の上に2層載せていて、下の写真は、基礎の上の2層の例。

この例では、屋根は金属板葺きのようです。
バルコニーは、角材の一部を外に張り出して、先端は柱で支えています。


右の拡大写真を見ると、バルコニーの支えの柱は、上下端をL型に欠き取り、バルコニー上下の飛び出させた角材に横から嵌め込み釘打ちのように見えます。
手摺の付け方なども、大変に素朴で、思わず笑みがこぼれます。これでいいではないですか!
開口部の建具は木製のようですが、かなり繊細なつくりに見えます。既製品?

次は標高1250m内外の村の建物2例。いずれも1層から角材の組積造による2層の建物。
見たかぎり、少なくとも三方にバルコニーを回しているようです。そのため、一見、軸組工法に見えます。

大変な薪の量。冬の厳しさがよく分ります。
屋根は金属板か?下の写真の野積みになっているのは、シングル(木を割った葺き材)のように見えます。燃料にするのだと思います。もしかしたら葺き替えたか。




まだまだありますが、少し長くなりましたので、今回はここまでにして、次回続きを載せます。

それにしても、見ていて気持ちがいい。
「造形」に凝るとか、他との「差別化」(イヤな言葉!)に励む?!などという「こざかしい」ところがまったくない。
その地の暮しに相応しい空間をつくる、これが建物づくりに求められていることなのだ、と私は思います。
今の建築家は、肝心なことを忘れ、あるいは捨て去り、余計なことばかりしているように思えてなりません。

建物づくりの原点を観る-5

2010-05-09 11:42:56 | 居住環境
一休みどころかフタヤスミほどさせていただきました。ひとまず、約束事は納めましたので再開。
この間に閲覧が多かったのが、かなり前、2007年3月に書いた小坂鉱山・公害についての記事(下記。「補足」は当時小坂につくられた建物の紹介写真)。
田中正造の直訴事件と同じ年に、小坂鉱山では鉱毒除去施設が完成していたことを書いたもの。
なぜ、この連休になって閲覧が増えているのか、その理由が分りません。

「公害」・・・・足尾鉱山と小坂鉱山
小坂鉱山・・・・補足
康楽館・・・・小坂鉱山直営の劇場 [追加 5月11日 11.03 冬の康楽館・写真ほか]
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[文言追加 14.57][解説追加 15.04][註記追加 15.21][註記追加 5月10日 7.44]

今回は、ドロミテ地域に建つ家屋群の架構の様子を見てみることにします。
これまた実に詳しく調べられていて、いろいろと学ばされます。

この地域には、壁体を石積みでつくり、木造の屋根を載せるもの、石積みの壁体上に木造の建屋を建てるもの、石積みの基礎の上にログハウスを建てるもの、など各種のつくりがあります。
しかしそれだけではなく、石積みの壁体の上の屋根の架け方でも実に多様な方法が見られます。したがって、組合せの種類はさらに多様になります。

同書から、これらについての図解を転載・紹介します。
なお、各図には、スケールが描かれています。
それによると、一般的な梁行寸法:梁間は7~8m程度、つまり4間前後のようです。

下の図は、壁体上の小屋組のいろいろなタイプを紹介したもの。
この図の屋根勾配は、4寸5分、1mで45cm上る勾配。大体4寸5分~5寸勾配が多いようです。
屋根材は、シングル葺き(木材の木っ端を葺いたもの)、石材(扁平に割れる石材:スレートや鉄平石の類らしい)、そして焼き物の瓦のようです。



図の「1」は、石積みや煉瓦積みなど、いわゆる組積造(そせき・ぞう)でよく見かける屋根の架け方。先に紹介した版築でも使われています。
妻面になる壁を屋根型に立ち上げ、その間に「桁」(母屋にあたります)を繁く渡して屋根材を載せる方法で、当然ながら2枚の壁の間の距離:「桁」材の長さに限界があります。
なお、下記に中国西域、西安近郊で観た例を写真で紹介しました。
http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/129999f445a867ee7ca2254e041fc62c
写真のように、壁~壁の距離が長いと、撓んでしまいます。
日本では見かけたことがありません。

図の「2」は、両妻壁の頂部に「棟木」を渡し、平側の壁の上に据えた「桁」との間に「垂木」を架ける方法。
この「桁」は寺院建築の「頭貫」に相当すると考えられます。
日本では、明治期の煉瓦造などに例があります。
   註 日本では、倉や土蔵で、「丑梁」という巨大な材を
      「棟木」位置に桁行方向に入れ、それと「軒桁」の間に垂木を架ける方法はあります(下記記事)。
      室内に柱を立てない、つまり広く使う方策。[註記追加 15.21]
      http://blog.goo.ne.jp/gooogami/e/6fca05a51eaf9424873fa92cb2b9b5e8 [註記追加 5月10日 7.44]
     
図「3」は、「1」の「母屋桁」の数を減らし、それを「垂木」に代えた方法。
あるいは「2」の「棟木」と「桁」の中間に「母屋」を入れた方法、と見てもよいでしょう。その場合、「2」に比べて「垂木」の太さは小さくて済みます。
これも、日本では、明治期の煉瓦造などに例があります。

図「4」は、四周の壁は水平位置で終り、木材をログハウス風に、妻-母屋-妻-妻-・・・と交互に積んでゆく方法。
妻側の材と母屋の材とを互いに欠き込めば、通常のログハウスと同じく妻壁も隙間なく積まれるかとは思いますが、それでは「母屋」の支点になる箇所が細くなり、屋根の重さに耐えられるか疑問。
それゆえ、欠き込みはつくらず、できる隙間は別材で充填するのではないかと思います。
この例は、日本にはないでしょう。

図「5」は、ログハウス方式で、切妻の部分も木材を積んだもの。妻だけ見れば「4」と同じです。
日本のログハウスは、妻は積まないのが一般的ではないでしょうか。

図「6」は、壁は四周同じ高さでまわし、妻になる壁に「棟木」を受ける「束柱」を立て、その「束柱」に「登り梁」を架け、「母屋」を据え、「垂木」を架ける。

図「7」は、ログハウスの壁は四周同高。妻側の壁上に「束柱」を「方(頬)杖(ほおづえ)」で支え、あとは「2」に同じ。
日本のログハウスでは、平らに「梁」を架け「束柱」を立てる「束立方式」:和小屋が一般的でしょう。

図「8」は、トラス小屋。日本では煉瓦造で普通に使われる方法。会津・喜多方の木骨煉瓦造でも、大抵はこの方法をとっています。もっとも、喜多方の木骨煉瓦造の場合は、「梁」は木の柱で支えられています。

以上は小屋組だけでしたが、建屋全体を分類したのが次の図です。



「1」は、上掲の図「1」に対応しています。
「2」「3」は、「束立て」方式で、「3」は「棟木」~「壁上の桁」に直接「垂木」を架けていますが、「2」は中間に「母屋」を設けている例。その「母屋」の上で「垂木」を継いでいます。「垂木」の材寸を考慮して、「母屋」の要・不要を決めたのかもしれません。[文言追加 14.57]
日本では、「梁」を「束柱」上に架け(「二重梁」)、その上に「母屋」を載せるのが普通です。
以上の「1」「2」「3」は、壁部分が「組積造」(石積み、煉瓦積み)の例です。

「4」「5」は、一層を「組積造」(石積み、煉瓦積み)、その上層をログハウスにした例。「4」「5」の違いは屋根のつくり方にあります。

「6」は、基礎の上に建つログハウス。

「7」は、木造の軸組工法で、柱~柱に板材を張り込んで「真壁」に仕上げています。板は「落し込み」ではないようです。
各「柱」と「横材」:「土台」「梁・桁」の接合部は、「方(頬)杖」で固定し、それをそのまま現しています。これは、西欧の木造軸組工法で多用される方法です。
「方(頬)杖」の取付け方にはいろいろあるようです。
この「方(頬)杖」は、わが国で言う「火打ち」と呼んでもよいのかも知れません。

大事なことは、「方(頬)杖」は各柱に設けられていることです。各柱を、先ず垂直に維持しよう、という考え方と考えられます。
これは、日本の「建築基準法仕様の軸組工法の筋かい」の考え方との大きな違いです。同じ斜め材でも、「目的」が違うのです。[解説追加 15.04]

「8」は、木造軸組工法、板張り大壁仕上げの例です。この図には「貫」様の材が見えます。不詳ですが、柱と柱の間に差し込んであるのはたしかです。壁板張りの下地のためと思われます。[文言追加 14.57]

「9」「10」「11」は、多層の建物で、壁をすべて「組積造」とし、屋根だけ木造の諸例。
基本的には、「棟木」を受ける箇所だけ「二重梁」としています。
「9」の「切妻屋根」が基本形で(図では、両端で妻を切っていますが、切らなければ純粋の「切妻屋根」)、「棟木」がなく「束」だけの場合が「11」の「方形(ほうぎょう)」屋根、「9」の棟の端を桁レベルまで切れば「10」の「寄棟(よせむね)」屋根になります。

おそらく、これ以外にも組合せ方が考えられるのではないかと思います。

次は、木造建物の詳細。



「1」から「4」までは、ログハウスの諸相。「5」から「8」が、軸組工法の諸相です。
もっとも、軸組工法でも、適宜、組積造:ログハウス方式:を併用しています(「7」「8」の例)。

こうして見ると、木造軸組工法の考え方は、基本的に何処でも同じということが分ります。すなわち、柱は垂直維持されなければならない、ということ。彼の国では「方(頬)杖」を多用し、わが国では「長押」や「貫」で柱相互を固めて垂直を維持したのです。
この考え方からすると、わが日本の「建築基準法仕様の木造軸組工法」が、いかに異様なものであるか、もよく分ります。日本は木造建築の国、だなんて「建築基準法仕様」を推奨する方がたには言ってほしくありません。[解説追加 15.04]

今回は写真を載せませんでした。次回には以上の具体例の写真を転載・紹介したいと思います。

やっと晴れた!ところで一休み

2010-05-01 12:12:50 | 居住環境
昨日も晴れましたが、今日は空気が乾き、一段と清々しい。
しばらく芽生えが遅れていたように見えた若葉も、急に華やかになってきました。
神社の杜のケヤキです。
まだ空が透けて見えますが、もうすぐ緑一色になります。

五月の講習会資料の編集、そして知的障碍者宿舎の増築案作成の作業が待ってます。

世の中はいわゆる連休、「建物づくりの原点を観る」の方を一休みして、この間にこの二つを仕上げることにします。