進行中の仕事

2012-10-27 17:30:15 | 建物づくり一般
今、現場が佳境に入っています。
現場は山梨県塩山の近く、かつて甲州と秩父を結んだ街道、雁坂(かりさか)峠の南側、「巨峰」の発祥の地と言われる牧丘。字のとおり、古代は牧だったらしい。[説明追加]
   秩父山地を囲んで、甲州、秩父そして信州・佐久には、よく似た養蚕農家があります。[説明追加]
私のところからだと、片道3時間半から4時間の場所。現場に居られるのがやはり3時間半から4時間。
現在、月に1~2度現場に行き、あとはメールや FAX あるいは電話での打合せで進んでいます。昨日、金曜日、行って来ました。

つくっているのは30年前に建った知的残障者居住施設の増築。
敷地はかなりの斜面。
30年前は、辛うじて平らな部分を整地して建てましたが、それでも南側に約2mの擁壁を設けました。
今回は、そのさらに南側の斜面に建てることに。
   どういうわけか、斜面に建てる仕事が多い・・・・。

施設の性格上、極力、一層:同一平面:でありたい。
しかし、かなりの急斜面(元は、数段の段差のあるぶどう園)。擁壁で盛土は先ずあり得ない。地山をいじらずに使いたい。
幸い地山は、地表から平均1.2m下が厚いシルト質の地盤(はるか昔の火山灰の蓄積でしょう)。表土は、かなり手が入っている。[説明追加]
そこで、既存の敷地とほぼ同高の面を、鉄骨の架台の上につくることに。
要は、鉄骨に支えられた人工地盤。人工地面は、鉄骨架台上にデッキプレートを敷いて、RCのスラブをつくる。
その上に建屋をつくる。
建屋は、いまどき見かけないコンクリートブロック積み。保温材を使わなくても、保温性がいい。
CBの壁の上に、ふたたび鉄骨の小屋を架ける。これは軽量鉄骨。
全体を軽くすることで杭工事は不要になった。
   CB造:補強コンクリートブロック造:が塀専用のごとくになっているのは
   かねがね もったいないと思ってきました。保温性もいい。多分空洞があるからでしょう。
     ただ、開口のつくりかたは要注意。
   今回も、建築のブロック工を探すのに苦労したようです。建築ブロックの経験者がいない!

現在、人工地盤が仕上り、その上にCB積が進行中。
そこまでの過程を、写真でざっと紹介します。ただ、地形:根伐段階は省略。

先ず、鉄骨架台の建て方。
この方式に至るまでに、半年以上かかりました。
最初は、懸崖造を鉄骨でできないか、と考えたのですが、ダメ。いわゆるラーメン構造になり、エライことになってしまった。
木造のようにはゆかないらしい。なぜ木造は平気なのだろう??
そこで至ったのが、この方杖方式。方杖を四方に広げ、梁を受ける方法。
梁の受け方、方杖の受け方は、木造の柱頭などの方法の(特に古代の)原理を参考にしました。
設計図はいずれ紹介します。
   材寸などは増田 一眞 氏に示唆をいただいて設計図を描き、
   その妥当性を構造計算で確認していただきました。
   


建て方中。
梁が未だ架かっていないところがある。建て方は小さなクレーンで行なっています。
写真の正面、狭い箇所はスパン2.1m、広いところは5.6m。
亜鉛メッキが工費の都合でできず、グラファイトペイント防錆に変更。
この写真は、グラファイトペイント塗装前の段階。
鉄骨の脚部はコンクリートでくるむ。

以下は、グラファイトペイント塗装の終わった鉄骨架台の状態。
2枚の写真の奥の方に、既存の擁壁が見える。
人工地盤面は、ほぼこの擁壁の高さになる。
地盤面と地山:現状地盤:との落差は最大で7m弱。
この「床下」は高さがほぼ2階分あるので、確認申請審査で、竣工後ここを使用してはならない、と釘をさされています!

写真の箇所では、奥行スパンは、3.15m・2.1m・3.15m、計8.4m。
2,100mm(1,050×2、700×3)を基準寸法にしています。
   3.15m=2.1m×1.5。
   5.6 m=2.1m/3×8。[説明追加]



鉄骨の柱は8.5吋:216.3mm径の鋼管(厚1/3吋≒8.2mm)。
方杖は不等辺山型鋼(125×75)2枚あわせ、梁は溝型鋼(200×90)の2枚あわせ。
いずれも9mm厚のプレートを挟んで高張力ボルト締(昔ならリベット)。[説明追加]
大型のトラックが入れないので、小ぶりの材を現場で集積する方法を採っています。
メッキを施したデッキプレートは、形枠の代り。構造要素とは考えていません。
要は、いわゆるジョイストスラブ(繁根太床版)の形枠にデッキプレートを使う、という方法。
   最近は、デッキプレートを構造要素とする方法が盛んなようです。
   
下の写真2枚は、少し離れて見た姿。
銀色に見えるのは、地盤の端部に設けたフェンス。亜鉛メッキの溶接金網製。
風雨に直接曝される箇所のみ、溶融亜鉛メッキが施されています。[説明追加]




床下にもぐるとこんな具合。
上下水、電気等の配管がぶら下がっている。


次の2枚はデッキプレート上の配筋中の写真。



鉄筋が立ち上がっている部分は、CB積みの基礎になるところ。
スラブを打った後で、あらためてCBの立ち上がり筋をセットし、コンクリートを打つ。

CB基礎の打設も終り、現在CB積が進行中。CBは、B種150mm厚。
この写真で写っているコンクリート部分は、建屋の床下になる。床仕上り面は、CB基礎の天端。

CBの中途に見える空隙は、壁が交差する箇所。壁のCB積がすべて終わると、この空隙にコンクリートが充填される。

年内には屋根まで仕上がる予定。
以後の経過は、またの機会に紹介します。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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解説楽しみです。 (ARAI)
2012-10-31 08:47:52
写真を見て思い浮かぶのは昔の駅のホームや家畜小屋、資材置き場など。かつてよく見たブログに出ていた木造倉庫の写真もすぐに思い出しました。
http://kinoie-kanno.seesaa.net/article/119976681.html

「(特に古代の)原理を参考にしました。」とのことで解説を楽しみに待っています。
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Unknown (筆者)
2012-10-31 15:32:44
久しぶりのコメント、有難うございます。
鉄道、特に以前の国鉄の駅舎には、素晴らしい例が、たとえば古レールを使った例や木造駅舎など、いっぱいあります。常磐線にはまだ各地に残っています。九州にも多数あります。
最近の駅舎は、形だけ追いかけているようで、面白くありません(中央線の高架化でつくられた駅が、その例)。

「古代の」などというのは少し大げさで、要は、柱から持ち出した位置で梁を継ぐのではなく(H鋼を使う架構はほとんどこれです)、柱と柱の間に梁を架ける(柱の位置で継ぐ)、ということです。
いずれ図面を紹介します。
返信する

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