建築をめぐる話・・・・つくることの原点を考える       下山眞司        

                     ☆ 2019年1月より、故人が残したものを順次、掲載して行きます。☆

この国を・・・44 : 偽装・偽計、そして 言い繕い

2013-10-31 12:01:07 | この国を・・・
11月3日(「文化の日」)付東京新聞社説、相変わらず論旨明快です。「『文一道』の精神に立つ」」、是非お読みください。[11月3日 9.30追記]


冷たい雨が上がりましたが、空気は少し湿りがちです。筑波も、今日は霞んでよく見えません。
すっかり葉を落とした柿の木が朝日に映えています。欅の黄葉はまだです。


「言葉」とは何か、あらためて問い直したくなるようなニュースが溢れています。

辞書をひいてみました。
「言葉」とは、
「その社会を構成する人びとが思想・意思・感情などを伝え合うための記号として伝統的な慣習に従って用いる音声。また、その音声による表現行為。・・」これは、「新明解国語辞典」の解釈。
人は、「言葉」を見たり聞いたりすると、その「言葉」の「普通に示すあるイメージ」を描きます。同辞書の「イメージ」の項に、「その言葉(名前)を見たり、聞いたりした人が(直ちに)頭の中に思い浮かべる、そのものの具体的な姿・形。」とある通りです。
通常、私たちが言葉を用いるときには、このイメージが自分の思いを出来うる限り正確に伝えるものであるように、意を尽くすはずです。
ところが、世の中にはそうではない方がたが居るのです。しかも、かなり増えているようです。
簡単に言えば、言葉の生み出すイメージだけを信じ込ませよう、という使い方をしたがる方がたです。

昨今世を賑わせている《メニュー誤表示》騒動などは、その最も簡便形。
メニューの記載事項もさることながら、《誤表示》という言い方もそれに該当します。「偽装ではない」、というイメージを抱かせるための使いかたに他ならないからです。
こういうのを「甘言」と言います。口先だけの言葉。用例に「甘言に釣られる」とあります。「メニュー《誤表示》」は、世の中に「甘言に釣られる」人びとが多いからこそ多発するのかもしれません。
昔からよくあるのが「商品の売り込み」文句。「メニュー《誤表示》」はその系統。

ところが、昨今、政治の世界の「用例」に同様の傾向が多く見られるように思います。
「秘密保護法」などの制定や「集団的自衛権」などについて政治家の語る言葉の数々は、その典型。「メニュー誤表示」の「思考法」と何等変りはない。
宰相が口にする《積極的平和主義》とは何ぞや?どうやら、武力行使をもって平和を維持することを意味するらしい。
こういう言葉遣いを平然とできるのは、ことによると、心身の成長期を、悪しきCMの流行った時期に過ごしたからかな、と思いたくなります。そういえば、偽装ではなく誤表示であると言い張る経営者と、時の宰相は、同じ年代のよう・・・。だからこそ、汚染水は完全にブロックしている、などという言葉を平然と使えるのでしょう。更には、福島を経験したから日本の原発は安全だという《論理》で原発売り込み行脚も行なっている・・。「責任」どうとるのだろう?

「新明解国語辞典」の「言葉」の項の用例に、「「言葉だけが踊っている」というのが載っています。「空疎な表現に終始する」ことです。我が現下の宰相は、「国民など、簡単に言葉で躍らすことができる」、と思っているのもしれません。そんなに人びとは「甘い」でしょうか?「世界」は「甘い」でしょうか?

近くの国道わきに、半分ちぎれた《日本を取り戻す》と書かれたポスターが雨ざらしになっています。昨年の選挙の時の現政権党のポスターです。幸いなことに、宰相の顔の部分は色が褪せてよく見えません。

「取り戻す」という語には、所有権を取り戻す、という意と、「以前の良い状態」に帰る、という意の両義あるようです。しかし、この惹句だけでは、詳細は不明です。しかし、最近の様態からすると、取り戻すのは、どうやら、敗戦前の日本の姿、あのときは弱肉強食で「強」のアメリカに負けた、だから「強」になりたい・・・、「力」を蓄えたい、武力行使ができるようになりたい、つまりは、「合法的に」戦争がしたい、ということらしい。「原発維持」もそのためかも・・・。

言葉は、「言い繕う」ためにあるのではありません。
私たちは、「言葉」:「その社会を構成する人びとが思想・意思・感情などを伝え合うための記号として伝統的な慣習に従って用いる音声。また、その音声による表現行為。」の本当の使い手にならなければならない、と思います。

「日本家屋構造・中巻:製図編」の紹介-5 : 「四 普通住家 略木割」-その1 

2013-10-26 10:22:32 | 「日本家屋構造」の紹介


今回の章は、普通の家屋の各部の標準的な仕様・部材寸法、あるいはその決め方(木割法)をを具体的な数字で示している章です。

部材寸法については、現在の「教科書」はもちろん木造建築についての「解説書」の類でも、まったく具体的に示されていない、と言ってよいでしょう。
それゆえ、初心者は、部材の寸法決めに際し、大いに悩むことになります。
私の場合、やむを得ず、これは、と思う諸事例の図面を参考にして決めていました。部材寸法のおおよそが身につくまで、つまり、自分で決められるようになるまで、10年近くかかったように思います。

ここに紹介されている部材寸法や決め方(木割法)は、長年、多くの大工諸氏が現場で習得し、継承してきた「経験値」と考えてよいでしょう
現在のように、時の政府や《有識者》《学者・研究者》が(恣意的に、勝手に)決めたものではない、ということです。
つまり、強度的にも見栄えの点でも、妥当であり問題ない、と現場の実践で裏付けられてきた部材寸法であり決め方、なのです。
それゆえ、この数値、決め方は、ほとんどが現在でも通用するはずです。その意味で、貴重な資料・データと言えます。


   なぜ現在の教科書や解説書では、部材寸法について具体的に示さないのでしょうか?
   おそらく、「構造計算」という「概念」が建築界で「優位な位置」を占めるようになったからだ、と私は思っています。
   以前にも書いた気がしますが、「構造工学」を学ぶ学生に、部材の断面はどのようにして決める?と訊ねると、大方は構造計算で決めると答えます。
   実際は、「先ず断面を『仮定』し」、「構造計算」は、その仮定した断面が問題ないかどうか、確認するために行うに過ぎない、と言うと怪訝な顔をします。
   構造計算で自動的に断面が決まる、と考えているらしいのです。学生以外でも、そのように考える方が多いのではないでしょうか。
   そこで問題は、断面をどうやって仮定するか、ということになります。「仮定」がなければ、「計算」もできないからです。
   しかし、教科書には「仮定」の決め方は触れられていないのです。
   通常「仮定」は、どうやって決めているか?その「拠り所」は、「経験」によってそれぞれが築いた「直観」以外にありません。
   しかし、「経験」に基づく「直観」などというのは、工学系の研究者・学者諸氏が最も嫌う「概念」です。
   だから、「仮定断面」の決め方について、触れることができないのです。それゆえ、現在の教科書には、部材寸法について、具体的記述がない。
   私は、このように考えています。

前置きが長くなりました。本論に入ります。

     **********************************************************

はじめに、「四 普通住家略木割」の原文を転載します。


以下、註を加えながら現代風に読み下します。ただ、長くなりそうですので、今回は「各部木割」までとし、「縁側及化粧之部」「間内之部」「外廻り下見張り之部」は次回といたします。

建物の高さによって柱の直径を定める方法
   柱径が、木割の基本。それゆえに、先ず柱径を定めなければなりません。
   柱径は、建物の高さ、すなわち柱の長さに応じて決まる、というのが、この書の考え方です。現在でも通用すると考えてよいでしょう。

      柱の長さ      柱の大きさ    
      9尺(≒2.7m)   3寸4分(≒103㎜)角
     10尺(≒3.0m)   3寸6分(≒109㎜)角
     11尺(≒3.3m)   3寸8分(≒115㎜)角
     12尺(≒3.6m)   4寸   (≒121㎜)角
     13尺(≒3.9m)   4寸2分(≒127㎜)角
     14尺(≒4.2m)   4寸4分(≒133㎜)角
     15尺(≒4.5m)   4寸6分(≒139㎜)角
     16尺(≒4.8m)   4寸8分(≒145㎜)角
     17尺(≒5.1m)   5寸   (≒151㎜)角

縁側や便所などの柱の径は、本屋の柱径(A)より、その十分の一減らすか(∴0.9A)または十分の一・五減らす(∴0.85A)。
部屋内の釣束(つり づか:吊束)の径は、本柱の径(A)の十分の八(∴0.8A)とする。

ここに記した部材寸法、木割は、市場で販売されている(市販の)木材を標準として定めている。
すなわち、「押大四角(おし だい しかく)」を3寸4分または三寸6分角に、五寸角を3寸8分または4寸角に削り仕上げるものとする。
   註 聞き慣れない用語があるかと思いますので、以下に、「日本建築辞彙」新訂版より用語の解説を転載します。
        「押(おし)」「押角(おし がく、おし かく)」の略。
        「押角」:七寸角より小なる木材を押角という。
        「大四角」「押四寸五分角」をいう。
       七寸角以上を「大角(おお がく)」とし、それ以下を「押角」となすことあれども、また所によりては、
       九寸より「大角」となし、九寸未満を「中角」となし、五寸未満を「小角(こ かく)と称することあり。

      なぜ七寸角以下の材の呼び名に「押」と言う字を付すのか、その訳・謂れが分りません。
      市販の4寸5分角は、正4寸5分ではなく、曳割り前の寸法:墨掛け寸法で、実寸は4寸強程度ではないかと思います。
      そうであると仮定すれば、4~6分削ることで、3寸6分~3寸4分に仕上がります。
      近世の建物の柱には仕上がり4寸2分程度が多く見られます。おそらく市販の五寸角:実寸4寸8分程度:を削り仕上げるからではないでしょうか。
        現在、市販四寸角をプレーナーで仕上げると、3寸8分程度に上がります。
      以上は私の推測です。間違っているかもしれません。

      「日本家屋構造」の紹介-2で、製材法の解説の部分を転載してありますが、墨掛け寸法と実寸の差の詳細(鋸の厚さ?)、あるいは「押角」の意などに
      ついては説明がありません。
      「押」の意を含め、当時(あるいは近世)の製材法や市販木材について詳しい方、ご教示いただければ幸いです。

各部の部材の木割
土台の大きさは、「柱一本一分」の角とする。一分とは、柱径の十分の一の意。
つまり、柱径をAとすると、土台は1.1A角とする。
足固(足堅:あし がため)成(せい:高さ)柱一本四分×幅 一本一分、すなわち1.4A×1.1A
大引柱一本三分×一本一分、すなわち1.3A×1.1A。ただし、松丸太の場合は、二間のとき末口6寸
根太成2寸5分×幅2寸。普通は市販の「二寸角」
   註 二寸角:八寸角十六割にして、実寸は一寸七分角程なり。長さは一間、一間半及び二間の三種あり。(「日本建築辞彙」新訂版)
:下等の家屋では中貫(ちゅうぬき)、すなわち幅3寸2~3分×厚5~6分、中等家屋では、大貫(おおぬき)、すなわち幅3寸6~7分×厚7~8分
   註 大貫杉大貫は、長さ二間、幅四寸、厚さ一寸の墨掛なり。実寸は幅三寸九分、厚さ八、九分程なり。・・・
      中貫杉中貫は、長さ二間、幅三寸五分、厚さ八分とす。尤もこれは墨掛寸法なる故、実寸は幅三寸二、三分、厚さ六分~六分五厘程なり。
                                                       以上「日本建築辞彙」新訂版の解説より
床板:下等家屋では六分板(正3~4分位、註参照)、上等家屋では一寸板(正7~8分位、註参照)。
   註 以下は、「日本建築辞彙」新訂版の解説。
      六分板墨掛厚六分なる板をいう。実寸は四分五厘程(≒13.6mm)にして、幅一尺以内、長さ一間なり。
      一寸板墨掛のとき厚さを一寸宛となす故この名あり。されど実寸は八分五厘(≒25.8mm)内外なり。
      松一寸板は、長さ一間、一見半、及び二間の三種、
      檜一寸板は、長さ一間、
      杉一寸板は長さ二間にして東京にては普通これを板割(いた わり)と名く(なづく)。一寸板の幅は七寸~一尺程。
      板割:・・・東京近傍にては、単に板割といえば杉一寸板のことなり。・・
間柱(ま ばしら):普通は松六本三寸(ろっぽん さんずん)(括弧内は「正1寸4~5分×1寸2~3分ほど」の意と解す)または市販の二寸角(正1寸7~8分×1寸4~5分)を用いる。
   註 以下は、「日本建築辞彙」新訂版の解説。
      間柱(ま ばしら)大柱の間に、一尺五寸間内外に建てたる小柱にして、「下見(したみ)」」「木摺(き ずり)」などを取付けるためのものなり。
                  大きさは松「大三寸(おお さんずん)」ないし「五寸角二つ割」程なりとす。
      なお、頭注に次のようにある。
         「大三寸」「六本三寸」に同じ。「大三寸」「五寸角二つ割」とでは、大きさが異なる。前者は伝統的な、後者は木造洋館の間柱であろうか。
         前者は間半(ま はん)(三尺のこと)に壁貫に添え付けて立てられ、 塗壁の補強、押縁下見の下地の用をなし、
         後者は木摺下見板張の下地に使われた。
      六本三寸(ろっぽん さんずん):松七寸角十六割にして、長さ九尺及び二間の二種あり、実寸は一寸五分×一寸二分なり。
                          「大三寸」、「松一寸七分角」、「五分八」などの別名ありて、安普請の根太、垂木などに用うるものなり。
      二寸角:前掲根太の項の註参照。   

          「六本三寸」の呼称の謂れが分りません。ご存知の方、ご教示いただければ幸いです。
          また、七寸角を縦横それぞれ四つに割ると(墨掛十六割)、計算上、1寸7分5厘角になります。
          それが実寸1.5寸×1.2寸になるのはなぜか(なぜ縦横同じ寸法にならないのか)、この点もご教示いただければ幸いです。
         
塗込貫(ぬりこみ ぬき):普通の三寸貫または中貫背付(せつき)にて図の如く(原文中の小図)左右の厚さを三分位、中央部を五分位の山形に削り用いる。         
   註 以下は、「日本建築辞彙」新訂版の解説。
      三寸貫(さんずん ぬき):長さ二間、幅三寸、厚さ七分の杉材をいう。その実寸は幅一寸六分~二寸二分、厚さ三分五厘~五分なり。
        墨掛寸法3寸が、実寸1寸6分~2寸2分にまで狭くなる理由が分りません。どなたかご教示を!
      背付(せ つき):丸身(まるみ)付 
      塗込貫(ぬりこみ ぬき):小舞竹を取付けるための貫にて、勿論塗隠(ぬりかくし)となるものなり。
                      「壁下地、間渡竹切込み、塗込貫、杉中貫取付け、小舞掻付け(かきつけ)」など。

軒桁柱間六尺の時は、成一本二~三分×幅一本一分(柱径をAとして、1.2~1.3A×1.1A)
    二間以上持ち放しの時は、成九寸以上×幅六寸以上。
             
小屋梁(こや ばり):長さ二間の時、松丸太末口七寸以上
             長さ三間の時、松丸太末口九寸以上
飛梁(とび ばり):長さ六尺の時、末口四寸五分
            長さ九尺~二間の時、末口六寸           
   註 長さとは梁間:支点間の距離:の意と解します。

小屋束:梁間二間又は三間の時、三寸五分角あるいは四寸角
棟木、母屋:四寸角又は四寸五分角
野隅木、谷木:四寸角
野垂木:普通は二寸角(丸身なし)
   註 二寸角:松二寸角は、八寸角十六割にして、実寸は一寸七分角程なり。長さは一間、一間半及び二間の三種あり。(「日本建築辞彙」新訂版)
広小舞:幅四寸以上五寸×厚一寸以上一寸五分
鼻隠し:幅三寸五分以上四寸×厚八分以上一寸
軒先裏板六分板
   註 六分板については、床板の項の註参照
瓦桟(かわら ざん):普通は並小割(なみこわり)正八分×一寸
   註 並小割(なみこわり):杉の四寸角十二割または五寸角二十割なる細き木にして、長さは二間なり。
                    実寸は幅一寸、厚さ九分ほどのものなり。(「日本建築辞彙」新訂版)
野地(板)三寸貫小間返しに打つものとする。
   註 三寸貫については、塗込貫の項の註参照。
土居葺(どいぶき)杮板(こけらいた)正寸もの(長さ八寸、厚五厘)を葺足一寸五分で葺く。
   註 土居葺(どいぶき):屋根瓦下なる薄板葺をいう。その板は厚薄により等差あり。・・・。(「日本建築辞彙」新訂版) 
      杮板(こけらいた):屋根を葺くために用いる薄板にて、長さ八寸、厚五厘内外あり。「かきいた」と称するは甚だしき誤なり。(「日本建築辞彙」新訂版)
      葺足:屋根に葺きたる瓦、石板などの下端より、その下なる瓦などの下端迄の長さ。(「日本建築辞彙」新訂版)
        要は、現われている部分の長さ。
軒唐草(のきからくさ)止木(とめぎ)」、土居土(どいつち)止木中貫を用いる。
   註 土居土止木葺き土・土居土のずれ落ちを止めるための桟。軒先瓦より上の位置に打つ。土留桟と同義。
      軒唐草止木軒唐草(軒先瓦の意と解す)下には葺き土はないので瓦を掛ける瓦桟が要る。そのの意と解す。
        唐草とは唐草模様軒先瓦には、唐草模様付もある。
         しかし、すべての家屋が唐草模様付軒先瓦を用いたとは考えられず、軒先瓦の「通称」だったのではないか?
棟折(むなおり)押縁三寸貫を用いる。
   註 棟折(むなおり)押縁杮葺の棟の押え。三寸貫は前註参照。

                                          以上で「柱径の定め方」「各部木割」の項終り。

     **********************************************************

職方同士の「慣用語」と思われる「用語」が続出し、読み下しながら、「日本建築辞彙」の編纂者も当初は困惑したのではないか、といらぬ感想を抱きました。

次回は、「縁側及化粧之部」「間内之部」「外廻り下見張り之部」を紹介します。日数がかかりそうです!

追補 貫について[追補追加 27日 11.30]
「日本家屋構造」では、が、建物の強度を確保するための必要部材である、との解説は特にありません。
しかし、「壁は自由な存在だった」シリーズ(全編をカテゴリー「壁は自由な存在だった」で括りましたので、そこから検索できます)で触れたように、日本の建物が、いわゆる筋交いや耐力壁を設けることをせずに(開口部を自由に扱いながら)長年にわたり健在であり得たのは、柱相互を貫で縫う工法が広く普及していたからなのです。
一般の家屋では、書院造が、一つの規範とされてきた、と言えます。したがって、木割にもその影響が色濃く見られます。実際の書院造の木割についてまとめた表を、「日本家屋構造」の紹介-6で載せてあります。その表から、は、柱径をAとすると、幅は柱径あるいは柱径の8割 (0.8A~1.0A)程、厚さは柱径の1/4~1/5 (すなわち0.2A~0.25A)程が用いられていたことが分ります。
「日本家屋構造」では、大貫、中貫、三寸貫という用語を多く見かけます。それぞれの具体的な寸法を再掲すると次のようになります。
   大 貫:長さ二間、墨掛寸法で幅4寸、厚さ1寸、実寸、幅3寸9分、厚さ8、9分程
   中 貫:長さ二間、墨掛寸法で幅3寸5分、厚さ八分、実寸、幅3寸2、3分、厚さ6分~6分5厘程
   三寸貫:長さ二間、墨掛寸法で幅3寸、厚さ7分、実寸、幅1寸6分~2寸2分、厚さ3分5厘~5分
三寸貫は、小貫(こぬき)と呼ぶ地域もあるそうです。三寸貫は、柱を縫う材としては使われず、多用途の下地用の材として扱われていたように思えます。
   多分、端材の小幅板をの語で総称するようになっていたのかもしれません。
上記の項で、は、下等家屋(本書矩計図例にある「普通住家」が相当する、と解します)で中貫中等家屋大貫を使うとありますが、普通住家は、総高さが十尺を超え、径実寸3寸6~8分程ですから、中貫で厚さは、柱径の1/5弱になり、中等家屋では総高さ13尺を超えるため、柱径4寸2~4分、大貫の厚さで柱径の1/5近辺になります。これは、ほぼ往年の木割に相当しています。いずれも、長年慣用されてきた寸法が継承されたのではないでしょうか。

現在、ヌキとして市販されている木材は、通称105mm×厚15mmですが、実寸は幅100mm×厚14mm程です。また、柱径は、総高さに関係なく通称105mm、実寸100mm程が多いようです。ゆえに、貫厚は、柱径の1/6程です。したがって、これで縫っても、往年の木割には相当せず、当然容易に撓むので、耐力も期待できません。現在の法令では、ヌキに面材を張った壁を面材耐力壁として認定していて、これを貫工法と呼ぶ方もいますが、この場合、ヌキは単なる壁下地材にすぎないことに留意する必要があります。つまり、貫工法と呼ぶのは誤りです。
1950年の建築基準法制定以来、往年の工法は疎んじられてきましたが、それとともに、本来の貫の効用・効能が無視され、その結果、市販の貫材も単なる端材と見なされるようになった、それが現状の市販ヌキ材の実態ではないでしょうか。 


「日本家屋構造・中巻:製図編」の紹介-4 : 「三 住家を建設せんとするとき要する図面」-その2

2013-10-18 15:28:25 | 「日本家屋構造」の紹介


今回は、「住家を建設せんとするとき要する図面」のうち、残りの「地形根切図」「床伏図」「小屋組」の項を紹介します。
はじめに原文をそのまま転載します。文中記載の図は、読み下しのところに転載します。
     


「地形根切図(ぢぎょう ねぎり ず)」
   註 現在の表記では「地図」が普通です。
以下、読み下します。ただ、わかりやすくするため、文中の順番を多少変えます。

地形とは、建物の柱、壁などの基底(き てい)をなし、上部からくる荷重をなるべく広く平均に地上に伝えるべく行う工程で、そのために地面を採掘することを根切(根伐)と言う。そのうち、側通りや間仕切下などを細長く掘ることを布掘(ぬの ほり)りと言い、または床束(柱)の下など局部だけを掘り下げることを壷堀(つぼ ほり)と呼ぶ。
地形根切図は、側まわり、中仕切りなどの平面図、切断図などによって、その仕様、寸法を示すために作成する図で、丁寧な場合は、土台、玉石、沓石などを別々に図にすることもある。
第五図(下図)は、第二図(再掲します)に示す家屋の伏図を示したものである。
     

我が国の従来の建物では、西洋の石造煉瓦造の家屋とは異なり、上部よりかかる荷重はきわめて小さいので、地山(ぢ やま)の固い所では、第五図・に示す方法で問題ないが、腰回りを煉瓦積にしたり、あるいは土蔵のようなつくりの場合は、到底長期にわたり荷重に耐えることはできないから、そのような場合は、算盤(そろばん)または蠟燭地形(ろうそく ぢぎょう)などを用いなければならない。算盤(そろばん)蠟燭地形(ろうそく ぢぎょう)については、「構造編」に詳しい説明がある。

   註 上巻・構造編所載の「水盛・遣方」「地形」の項は、紹介から漏れてしまいました(紹介する前に入院してしまい、失念!)。
      後日あらためて紹介することにします。
      今回は、そのうちの蠟燭、算盤の解説部分と図だけ下記に転載いたします(図は、原本の図を編集)。
        
      上図の蠟燭地形に、ほ算盤地形の図で、の側面図。
      蠟燭地形および算盤地形は、ともに杭打ちを必要とする地形で、
      地盤の表層が建物の重さに耐えられない状態のとき、地下の硬質の地層までを打ち、そこへ荷重を伝える方法である。
      には松の生丸太を使う。
      蠟燭地形(図)は、の頭へ玉石を据え、蠟燭石を立て、側石を受ける。
      算盤地形(図)の算盤木には径7寸の松の生丸太の両面を杣削りし、
      長さ2尺5寸位に切り、杭の頭に取付け鎹(かすがい)で固める。
      補注 杣削り:斧を使って削りとること。
      捨木(捨土台)は、同じく松の尺角二つ割位のものを用い、継手は相欠きで継ぎ、算盤で取付け固める。
      補註
      地下水位よりも深いところは、腐朽菌の生育に必要な酸素が少ないため、木材が腐朽しにくい。
      それゆえ、木製(特に、耐力があり腐りにくい松)の杭が用いられてきた(旧帝国ホテルでも使われている)。
      算盤、算盤木(「日本建築辞彙」の解説を要約)
       礎盤(そばん)礎盤木(そばんぎ)が、ソロバン、ソロバンギと間違って読まれ、その結果「算盤」の字があてられるようになったようである。
      蠟燭(石)(「日本建築辞彙」の解説を要約)
       地下水位より深い部分には木杭を用い、地表に近い部分は、腐朽を避けるために石製の束柱に代え、その石を、形状から蠟燭(石)と呼んだ。
       土蔵の基礎などで用いられた地形(地業)

土台は、の最下部に設けられ、を固定し、上方より来る荷重を一体に分布させる役割を持つ横木である。乾湿の繰り返す場所にあるが、特に水湿に対して強いヒバ、ヒノキ、クリなどを用い、樹液が発散するため(樹液の発散を避けるため、の意と解します)、下面および側面にコールタールを塗ると、大いに防腐効果がある。
   註 コールタール塗布による防腐は、「樹液の発散を避けるため・・・」というより、
      木材表面にコールタールの被膜をつくり、木部が直接水分、空気に接すること(腐朽菌繁殖の温床になる)を遮断する方法と考えられる。
     コールタールは劣化しにくく、下地への付着力も強く、被膜が剥落することがない。金属板等の防錆にも使われている。[文言追加 19日9.00]
      同様に、古来使われてきた防腐剤にクレオソートがある。
      これは、クレオソートの強力な殺菌作用による防腐と考えられる(腐朽菌が繁殖しない)。木製の電柱、枕木には、クレオソート注入法が使われた。

床伏図(足元図)
土台、床束、足固め、大引、根太、床板などの大きさや位置、仕口などを第六図(下図)のように、平面図にて示す図。

大引は、両壁間の距離が短い方に3尺間に架け、4尺~6尺ごとに床束で支える。床束の動揺を防ぐために、大貫の類をに差すかまたは面に釘打ちする。これを根柵貫(ね がらみ ぬき)と呼ぶ。
   註 根柵貫:現在は根搦貫と書くのが普通では。
      大貫:墨掛寸法で幅4寸×厚1寸(実寸で幅3寸9分×厚8~9分程度)
      現在市販の通称「ヌキ」(厚さ実寸14㎜・4分5厘程度)は、材としては問題外の「規格」であることに留意。[文言追加 19日9.00]
根太は、普通1尺5寸間で大引上端に渡り欠きとし、大釘打ちとする。根太継手千鳥に配置する。これを「筏(いかだ)に打つ」と言う。
   註 渡り欠き大引渡り腮(わたりあご:下図)で掛けるために根太の一部を欠きとること。
      材の欠き取り部分が小さくて済み、かつ、二材を確実に組むことができる。
     
      図は「日本建築辞彙」より転載
各室の押入、あるいは台所などの板の間に於ける拭い板表面は、敷居と平らに納め縁板の上端は、敷居下端とするのが普通だが、敷居上端より、1寸6~7分下りとしてもよい
   註 「拭い板」:平滑な床板(「日本建築辞彙」新訂版 による):再掲
便所の床板は、縁板上端より、更に1寸以上高くする
足固めは、室の内外部各敷居の下に設け、外部で壁のある個所では半足固めとして根太受を兼ねる。足固め大引の仕口は、図中の乙、丁のように扇枘差(おうぎ ほぞ さし)とする。
最近家屋構造の改良が盛んに為され、これらの仕口の不完全を補うものがあるが、これについては後章であらためて説明する。

小屋組
第七図(下図)は小屋組の形状を表す図で、軒桁、小屋梁、母屋(もや)、棟木、谷木、束などの位置組み方仕口などの構造を伏図および切断図によって示す。この小屋組は、第二図に示した家屋を例にしている。

伏図だが、軒の出は略してある。
図中の単線は、軒まわり、母屋、谷木、隅木の位置を示している。縁桁は、軒桁より一段下がるが、その位置は、本体の軒先との取合いで調整する。
の組み方は次の通り。
「い六」~「ち六」の敷梁(しきばり)すなわち下木として、「は一」~「は十」、「い四」~「ち四」、「ほ六」~「ほ十」、「い七」~「ほ七」と順次組み、その他は上木として架ける。
母屋の隅の組合せ箇所の下に>梁がないときは、「い三」~「は三」のように飛梁(とび ばり)を設け母屋を受ける小屋束を立てる。
飛梁は、一方は軒桁兜蟻(かぶとあり)で掛け、他方は上に渡り欠きとして架ける。飛梁は多少登木(のぼり き)の状態になる。
の切断図は、伏図のある部分を切断して、各材の位置、用途を明らかにしてその構造:つくりかた:を示し、必要に応じて部分詳細図を描くことがある。
   註 兜蟻(かぶとあり)については、「日本家屋構造の紹介-11」に説明があります。

                                「住家を建設せんとするとき要する図面」の項終り

近時雑感・・・・暮しのカレンダー

2013-10-14 16:55:45 | 近時雑感

気候がおかしなせいか、柿の色づきがわるいようです。これは渋柿。


通院リハビリを終了して半月以上になります。そこであらためて気付いたのは、退院後、週一回の通院リハビリの日を、いわば「起点」にして一週間がまわっていた、暮しのリズムができていた、ということでした。
通院リハビリがなくなってから、ふと、今日は何曜日だったけ、と自問することがありました。「起点」が具体的にないからだと思います。まだ、本当には発症前に回帰できていないのです。
こういう「感覚」は、「退職」したときにも味わったように思います。要するに、「他動的に」与えられていた「起点」がなくなり、新たな「起点」がつくられていないことによる違和感とでも言えばよいかもしれません。別の言い方をすれば、自らを律する、あるいは、自らが差配できる(と思える)カレンダーがつくれていない、ということでしょうか。


私の暮している集落は、8割以上が農家です。そして、その大半は高齢者、私と同年代かそれ以上の方がたです。若い世代に代替わりしているお宅もあります。その場合は、かつての「主人」は、いわゆる「隠居」。この地域では、大抵、屋敷の中に「母屋」と「離れ」があり、隠居者は「離れ」に住まわれるのが普通です。
隠居は、のんびり暮らせている、と傍からは見えるかもしれませんが、私の印象は少し異なります。もちろんすべてではありませんが、隠居された方は、早く「老いる」ように見えるのです。
夕暮れ時、門前にぽつんと座り込んで、あたりを何を見るというのでもなく眺めている姿を見ることがあります。しばらくして、最近姿を見かけないな、などと思っていると、今は、どこそこの施設に入っている、などという話が伝わってきます。
農家の方がたは、季節の移り変わりを身をもって感じながら、その季節なりの農事を決めています。その「差配」を、長年、ご夫婦でやってきた、それが、隠居で、いわば失せてしまったのです。何も自分のやることがなくなってしまった。その「喪失感」は、余人には想像できないほど大きいのではないでしょうか。門前に佇む姿に、それが表れているように私には見えました。隠居と言えば恰好よいですが、もしかしたら、これでは姥捨てと変わらないのかも・・・、などと思ってしまいます。

私が散歩に行く一つのコースの折り返し点に、200㎡程度の小さな畑があります。まわりは、それとは違い大面積の耕地です。今は一面落花生(ちょうど収穫期です)。しかしその小さな畑では、季節の色とりどりの草花や、多種多様な野菜が育っています。
この畑を営んでいるのは、この集落の大地主の奥さん。私と同年代かと思います。腰が曲がっています。この方が、途中はちょっとした坂道なのに、何とバイクに乗って!自宅から500mほど離れているこの畑に通って育てておられるのです。広大な所有地のほんの一画なのですが、ここだけはすべてこの方の差配に委ねられているようです。そして、この方は、腰が曲がっているのにバイクに乗っているように、非常にお元気なのです。いつも溌剌としています。近在には、同年齢の腰の曲がった女性が多数おられます。多くは、デイサービスに通っているようです。
この違いは、自ら自らの日々を差配できる、差配できていると思えることが有る、自分の暮しのカレンダーを持てている、かどうかに起因しているのではないか、と私には思えます。
そして、このことは、「高齢者を『介護する』」とはどういうことか、示唆しているのではないか、と考えています。
隠居された方には、何もさせない、のではなく、例えば、代替わりした家人:若い世代の方が、農事にについてのノウハウを訊ねる、教えを乞う、それも、いや、それこそが「介護」なのではないか、と思えるのです(そういう「能力」は、シルバー人材センターに登録すればいい、なんていうものではないはずなのです)。
自ら差配できることがある、差配できていると思えることが有る(これは、世にいう《生きがい》などというようなものではない)、そうであれば、「老いる」度合いも小さくなる、そして、いわゆる「狭義の介護(身の回りの世話など)」の必要も減るのではないか、そのように感じています。

小さな畑では、今、菊が満開です。


私も、自主トレも含めた暮しのリズムを安定させなければなりません。


「日本家屋構造・中巻:製図編」の紹介-3 : 「三 住家を建設せんとするとき要する図面」-その1 

2013-10-06 21:42:22 | 「日本家屋構造」の紹介


「三 住家を建設せんとするとき要する図面」の章を紹介します。
原本で「要する図面」として挙げられているのは、「配置図」「平面図」「姿図(建絵図)」「矩計図」「地形根切図」「床伏図(足元図)」「小屋組(図)」です。
ただ、分量の点で、今回は「配置図」「平面図」「姿図(建絵図)」「矩計図」の部分を紹介することにいたします。かなり長くなります。ご了承ください。

   原本の用語を、現在の用語にすると、姿図(建絵図)=立面図、地形=地業、根切=根伐、になります。
   なお、「矩計」に、「かねばかり」の読みが付されていますが、現在は一般には、「かなばかり」と読んでいると思います。

     **********************************************************

はじめに、原本を載せます。







原文を現代風に読み下します。文中に表示の図は、読み下しのところに載せます。

三 住居を建設するにあたり必要な図面
住居を建設するにあたっては、一、二に於いて述べた要旨に基づき、次の諸図を制作することが必要である。
「大体の配置図」
考案された建てようとする家屋の大体の形状、門、庭園、塀・柵等の大きさ、位置などを示す図。

「平面図」
いわゆる「間取り(図)」で、上方から見下ろした姿を描くことから「伏図(ふせ づ)」と称することもある。
職業、生活の程度、家族数等によって「間取り」を決め、第一図(下図)に示す一定の符号により、「柱」「床の間」「拭板(ぬぐい いた)」「上げ板」「水流(みず ながし)」「戸袋」「縁」「梯子形(はしご かた)」等の位置、「壁」の位置、「建具の開き勝手」に至るまで、一目瞭然に分るように描いた図をいう。


   註 文中の用語 
     「拭い板」:平滑な床板(「日本建築辞彙」新訂版 による)
     「上げ板」:「揚げ板」とも記す。
            台所の床下などの如く、すべて物を貯え置く所の上なる板にして、取外し自在なるものなり。(「日本建築辞彙」新訂版 による)
     「梯子形」:梯子形の表記の意と解する。「階段」のこと。
            明治初期頃までは固定階段をも称した。(「日本建築辞彙」新訂版 による)
     第一図中の用語
     「榑縁(くれ えん)」:縁側の長さに沿うて板を長く張りて造りたる縁。(「日本建築辞彙」新訂版 による)
           榑(くれ):薄い板、へぎいた(へぐ:薄くはぐ)(「広辞苑」による)
     「榑縁 石畳」:「いしだたみ」:隅部で、板を図のように納める場合の呼び名
     「切目縁(きりめ えん)」:縁の長手に対して直角に板を張った縁。多くは幅広の板を用いる。
                     書院造、方丈などの「広縁」が「切目縁」
第二図(下図)は、平面図の一例で、家族5~6人ぐらいが暮せる平屋建て23坪部屋数5の住居の平面図。玄関わきの8畳間を客間、他の広い部屋を家族が使う。下女部屋、台所などは図の通り。

   註 図の上方、縁の側が南、玄関側が北と思われる。
      図の右上の「三帖(三畳)」が下女部屋、その下の「土間」「拭い板」付の「三帖」が台所。
      煮炊きは「土間」。水甕が置いてあったであろう。「水流し」は、「土間」「板の間」双方から使う。(上下水道、ガスなどのない時代である!)
      家族5~6人ぐらいが暮すには、上方の「八帖」間だけでは無理。日常は玄関わきの「八帖」:「客間」も使う想定だろう。

「姿図(建絵図)」
   註 「建ず(たて づ)」「起図(おこし づ)とも言う。
姿図(建絵図)は、建物が建ち上がったあとの外観(前面、側面、背面等)を描いた図で、施工者にとって大いに必要な図である。住家(すまいや)も一つの物品と同じで、その外観を忽せ(ゆるがせ)にできない。姿図で外観に不良な個所があるときは、小屋組や平面図などの再検討が必要になる。
   註 建築者:字の通り、住家を「建築する」者=施工者
      文中に説明はないが、 第二図 乙が、甲の玄関側(北面)の「姿図」であろう。

「矩計図」
建てようとする家屋の、柱に取付く各材の位置、仕口、構造(つくりかた)の大体の建地割(「割付け」)や、軒の出などを定める図を言う。その寸法等は一定ではなく、設計によって異なるが、一般的寸法をまとめると以下の通りである。
〇土台の下端~畳の上端
  普通の住家  1尺4寸~1尺7~8寸ぐらい
  中等家屋   2尺3~4寸
  御殿造(ごてん づくり) 2尺5寸~  3尺以上とする場合もある
    なお、御殿造の場合は「切目縁」とし、階段、手摺等を設ける(切目縁の仕口は「構造編」参照

   註 上場=上端、下場=下端
     「御殿造」という用語は知りません。「御殿のような」大邸宅というような意の形容語か?ご存知の方、ご教示ください。  

〇内法高:敷居上端~鴨居下端
  通常(柱芯~柱芯6尺)   5尺7寸または5尺8寸
  京間(柱芯~柱芯6尺5寸) 柱内法の幅を高さとする

   註 京間の内法高について
      「木割書」の一つ「匠明」では、「内法=切目長押上端(=畳下板床面)~内法長押下端」=柱間(柱芯~柱芯)とあり、     
      したがって、「敷居」上端~「鴨居」下端=「切目長押上端~内法長押下端」-「敷居の厚さ+鴨居の厚さ」になる。
      それゆえ、「敷居」「鴨居」それぞれの厚さ:丈(成 せい)を2寸、柱径を5寸と仮定すると、
      「切目長押上端(=縁の床面)~内法長押下端」=柱間=6尺5寸
      ∴「敷居上端~鴨居下端」=「切目長押上端~内法長押下端」-「敷居と鴨居の厚さ」=6尺1寸
                                                            ≒柱間(柱芯~柱芯)-柱径=6尺5寸-5寸=6尺
     光浄院客殿は確かにこの数字に近い。( 「建物づくりと寸法-2・・・内法寸法の意味」参照)
      しかし、京間の住居の実例を調べてみると、一般的に「敷居上端~鴨居下端」=5尺7~8寸である(5尺7寸が多い)。
      近江八幡西川家(商家1706年建設):5尺7寸 山口目加田家(武家18世紀末~19世紀初建設):5尺7寸 今井町高木家(商家1840年頃建設):5尺7寸 など
          当初信州横田家を例に挙げましたが、横田家は京間ではありませんでしたので、外しました。目加田家は柱間6尺3寸です。[訂正 7日9.00]
     
〇小壁(こ かべ):鴨居または長押上端~天井回り縁下端間の壁:の高さ
その室の畳数×2.5 or 3.0を高さとする。
  たとえば 六畳間の場合は、6×2.5 or 3.0 ∴1尺5寸または1尺8寸
しかし、大きな室では、内法高の 7/10~8/10 ぐらいにすることもある。

〇その他 天井の張り方など
天井の張り方で注意すべきことは、「床の間」に向って「竿縁(さお ぶち)は「床」と平行に設け、板は、その矧ぎ目をまたは束柱の芯に置くか、板幅の中央にまたは束柱がくるように張る。
   註 書院造や方丈建築では、竿縁の向きについて、このような拘りはない(先の「建物づくりと寸法-2」中の写真参照)。

以下に、普通および中等家屋の「矩計図」を例示する。

「平屋建普通住家矩計(建地割)第三図(甲)」(第二図の住家にも応用)

   註 原本には縮尺 1/20 とありますが、上図は 1/20 ではありません。
総高さ 土台下端~軒桁 峠:11尺6寸
これを以下のように細分する。
  土台下端~敷居上端      :1尺8寸 ただし、敷居は丈(成い せい)2寸×幅 3寸8分
  内法高(敷居上端~鴨居下端):5尺7寸 ただし、鴨居は丈(成い せい)1寸4分×幅 3寸8分
   註 原本の「鴨居」の「幅1寸5分」は誤記と思われます。敷居幅と同じと見なしました。
  小壁の高さ(長押上端~天井回り縁下端):2尺2寸
  天井回縁上端~軒桁上端(峠):1尺6分
   註 説明文では1尺5分とありますが、図に記載の寸法を採ります。
部材寸法 
   註 原文には「木割」とありますが、内容から、部材の寸法の意と解します
      「木割」とは、一般には、柱の太さを1として、それに対する比率で材寸などを示すこと(「日本建築辞彙」)を言います。
    削立て(けずり たて)寸法 3寸8分角  
   註 「普通の」建物でこの太さ。現在の法規の最低《基準》10㎝角がいかに細いか!
  土台 削立て(けずり たて)寸法 4寸2分角
  大引 松丸太 末口 6寸
  根太 普通は 2寸角
  床板 6分板
    地貫(ぢ ぬき)は「大貫」、他は「中貫」とし、「天井貫」を含め、5通り設けるものとする。
   註 「大貫」実寸 幅 3寸9分×厚 8~9分(墨掛寸法で 4寸×1寸)  
      「中貫」実寸 幅 3寸2~3分×厚 6~6.5分 (墨掛寸法で 3寸5分×8分)
      現在市販されている「ヌキ」は、「中貫」よりも薄いことに注意。
  床板 杉 4分板
   註 「 削立て(けずり たて)寸法」 鉋削りをした寸法:仕上り寸法
      「墨掛(すみかけ)」寸法=木口に所要寸法を墨出しした時の寸法、製材すると鋸の厚さ分小さくなる 墨掛 4寸角⇒曳き割ると 3寸8分角程度
      「貫」などではそのまま使うが、柱などは、更に鉋をかけて仕上げる。
      ゆえに、当時の削立て(けずり たて)寸法 3寸8分角の柱は、墨掛寸法では4.5寸角ほどだったのではないか(製材後:曳割寸法で4寸角)
       現在は、曳割り4寸角をプレィナー仕上げて3.8寸角にしています。
      このあたりのことについて詳しい方、ご教示ください。 

「平屋建普通住家矩計 縁側の部 第三図(甲)」    
総高さ 本屋の屋根勾配に応じて定める。
の大きさは、削立て 3寸4分 角とする。
縁框は、丈(成せい)4寸×幅 3寸とし、上端を本屋の敷居上端より 1寸2分下がりとし、縁幅全体で 1/100の水下がりを付ける(この図の場合は 3分)。
   註 縁側は、雨戸を開けている昼間は、雨の吹き込むことがあった。ゆえに、水勾配を要した。
無目(むめ)は、成 1寸6分×幅 3寸1分、無目下端までの内法高は 5尺7寸とする。
一筋鴨居は、成 1寸8分×幅 2寸2分。
欄間:無目上端~桁下端:の高さは 1尺2寸。
縁桁は末口径 5寸。
化粧天井の勾配は 3寸2分(3.2/10)。
軒の出は 2尺4寸、ただし、板葺の場合は、 2尺8寸~3尺とする。
「右割柱の大さは・・」は、意不明
垂木掛:成 3寸5分×幅 1寸8分、化粧垂木:成 1寸6分×幅 1寸4分、:幅 3寸4分×厚 7分、広小舞:幅 4寸5分×厚 1寸2分。
裏板は、杉 4分板、上の野地(板)は、本屋の野地を葺き下ろし、広小舞の上端に突き付ける。
本屋の野垂木は 2寸角、野地(板)は 3寸(幅の)小間返し(こま がえし)に打つ。
   註 棰=垂木
      小間返し:幅と「空き」を同寸にすること。たとえば、3寸幅の板を、3寸空けて張る。これを繰り返す。

「縁側」について、下記を参照ください。     
「日本家屋構造の紹介-14・・・・縁側、その各部の構造」
「補足・日本家屋構造-6・・・・縁側考」
また、日本家屋の開口部建具の変遷については下記に概要をまとめてあります。[追記 8日9.00]
「補足・日本家屋の構造-7」

「平屋建普通住家矩計 便所の部 第三図(甲)」
   註 第三図の姿図は、第二図の平面図の便所には対応していない。 
小便所床板上端縁側上端より 8分以上上げ、大便所の床面は、これより更に 8分乃至 1寸上りとする。
便所外側の窓の高さは、床面から敷居上端まで 3尺5寸とし、敷居上端~鴨居下端は 1尺5寸とし、それ以上の高さは縁側の高さとの取合いによる。
敷居面内に取付け、入口鴨居すなわち無目は、成 1寸3分×幅 3寸 として、入口の方立は、見付 1寸6分×見込 1寸8分、窓敷居、鴨居はともに成 1寸2分×幅 3寸 とする。
   註 文中の法立方立と解す。なお、方立の見込寸法の 1寸8分は?
天井回縁(まわり ぶち)は、成 幅1寸4分×幅 1寸5分、竿縁は 5分× 6分ぐらいとする。
窓の外部に設ける屋根板および雨押えは、ともに杉厚 1寸の板とし、窓の格子は見付 6分×見込 7分、格子の貫は幅 5分×厚 2分とする。
外壁下見板簓子(ささら こ)縁は見付 1寸×見込 8分、板は杉 4分板とする。
   註 外壁の仕様は、簓子下見:板を「羽重ね(は がさね)」にして、簓子(縁)で押さえている。
      羽重ね:雨水の流下をよくし、壁内への侵入を防ぐために、上に張る板の下端を下の板の上端に重ねて張る張り方。
      :竹の先を細かく割って束ねたもの。田楽などで簓子とすり合わせて調子をとるのに用いる。(「広辞苑」による)
      簓子を擦るのに用いる細い棒で、鋸歯状の刻み目がつけてある。(「広辞苑」による)
      羽重ねの下見板を押さえる縁「押縁」には、羽重ねに合わせた段状の刻みを設けてあることから簓子と呼ぶ。
      「猿頭(さる がしら)」:図中「(便所)側面切断図」の窓屋根板上の材
      板庇または板屋根の板上に、所々に取付けたる木にして、上端に小返(こ がえり)付のものをいう。(「日本建築辞彙」による)
         「小返」付:上端に勾配を付ける。頂部を「鎬(しのぎ)」と呼ぶ。 

「平屋建中等住家矩計 第三図(乙)」
総高さ 土台下端~軒桁 峠:14尺
これを以下のように細分する。
  土台下端~敷居上端:2尺2寸 ただし、土台:削立て 5寸角、足固め: 5寸× 6寸、床板: 8分、敷居:成 2寸×幅 4寸2分
  内法高(敷居上端~鴨居下端):5尺8寸 ただし、鴨居:成 1寸6分×幅 3寸8分
  内法長押:成 3寸8分×幅 2寸
  小壁の高さ(長押上端~天井回り縁下端):3尺4寸
  天井回縁上端~軒桁上端(峠):1尺6分
  欄間の敷居、鴨居:成 1寸1分× 3寸2分 欄間内法高:2尺4寸、天井長押:成 2寸7分×幅 2寸。
  天井回縁:成 2寸2分×幅 1寸6分、竿縁: 1寸4分角。
  天井回縁上端~軒桁上端(峠):1尺5寸7分
   註 原文では天井上端より・・とありますが、図から、回縁上端より、に読み替えました。
部材寸法 
   註 原文には「木割」とありますが、内容から、部材の寸法の意と解します
     削立て 4寸2分角
   註 この寸法は、江戸末期の建物(今井町・高木家など)と同じです。
  釣り束、便所柱 削立て 3寸6分角
  根太 成 2寸5分×幅 2寸
  軒桁 成 6寸×幅 5寸、ただし2間以上持放し(支点間が2間以上)の個所では成 1尺以上×幅 6寸とする。
  小屋各部の材寸については、別項の木割を参照のこと。
   註 次回以降に載せる予定です。
  軒の出 1尺5寸、野垂木は 2寸角、広小舞:幅 5寸×厚 1寸5分、鼻隠し:幅 4寸×厚 1寸。
  軒先の天井板は松 6分板、面戸板は杉 6分板とする。野地は 3寸(幅の)小間返し(こまがえし)に打つ。
  布石の高さは地上 3寸ぐらいの高さとし、土台側面より外側へ 1寸5分~2寸ぐらいだし、水垂勾配(みずたれこうばい)を付ける。
   註 水垂勾配:石上に水が溜まらないようにするために付ける勾配

「平屋建普通住家矩計 縁側の部 第三図(乙)」
総高さ は、沓石(くつ いし)上端~縁桁上端を 1丈(10尺)7寸として、沓石の高さは地盤より 4寸上り。
は仕上り 3寸8分角、縁框は成 5寸5分×幅 4寸で本屋敷居上端より 1寸6分下りとして、沓石上端より上端までの高さは 1尺9寸とする。ただし、縁幅4尺のときはs、水下がり 4分とする(水勾配 1/100)。
無目(むめ)は、成 2寸×幅 3寸4分、無目下端までの内法高は 5尺8寸とする。
一筋鴨居は、成 2寸2分×幅 2寸4分。
欄間の内法高:無目上端~桁下端:の高さは 2尺2寸。
縁桁は末口径 6寸以上。根太:成 2寸5分×幅 2寸、縁板:榑縁張り幅 4寸×厚 8分。
垂木掛:成 3寸8分×幅 1寸7分、化粧垂木:成2寸×幅 1寸7分、:幅 3寸2分×厚 8分、広小舞:幅 5寸×厚 1寸5分、木小舞:幅 1寸×厚 8分を6寸間明きに打付ける。なお、小さな座敷の場合は、木小舞は幅 6分×成 5分ぐらいにして明きを 3~4寸ぐらいとする。
化粧天井の勾配は 3寸2分(3.2/10)。上の野地(野屋根)は 4寸勾配とし、軒の出は 4尺とする。
縁側柱下の沓石は、上面を縁柱の直径の裏目(√2倍)として、四方の切下げ勾配は2寸5分の返し勾配とする。間内柱下の玉石は、径 1尺2寸以上とし、束下の玉石は径 9寸以上とする。
   註 返し勾配:45度より急な勾配の時、45度を差し引いた残りの勾配を言う。
なお、以上の各材料の大きさは、東京付近の場合の例であり、他の地方では、その地の状況に応じて斟酌すること。
第四図 甲(下図)は、普通住家二階建ての矩計で、東京市内の商家に多い出桁(だし げた)蔀戸(しとみ ど)造矩計を示した例、第四図 乙は中等以上の二階建て住家の矩計である。各所の高さや各部材の大きさは、図から読取ってほしい。
この例の階段踏面蹴上の寸法を求めるには、この二者の寸法数を乗じて50に近接する数であることが肝要である。たとえば、踏面を 1尺とすれば、蹴上は 5寸となり、踏面を 8寸とすれば、蹴上は 6寸2分5厘となる。
もしもこれに手摺を設けるならば、その高さは普通 2尺2寸乃至 2尺3~4寸とする。縁側手摺を設ける場合もこれにならう。
   註 出桁造 「日本家屋構造の紹介-13」参照。

建地割(矩計)についての一般的な注意
柱に於ける貫穴の位置
桁行地貫は、その上端が床板の下端に接するように差し、床板の受木:受け材を兼ねるようにし、梁行は、床板下端より 1寸5分~2寸ぐらい下げ、根太受木:受け材を兼ねる。中等以上の建物は、を兼用せず、根太受木は別途に設ける。
隅の柱の貫穴は、桁行上小根枘梁行下小根枘として差し、もそれに応じて打つ。
なお、胴差、差鴨居の類の枘の小根も同様(桁行を上、梁行を下)とするのを通則とする。
貫の差し方
内法貫は、鴨居の上端より 5分ぐらい上げて差す。
地貫内法貫との間に貫を二通り差すのを、四通貫と言い、一通り差すのを三通貫と呼ぶ。
天井貫回縁上端と平らに差すものとする。
壁小舞・間渡し竹の位置
外壁壁下地の小舞は、縦の間渡し竹の穴を、軒桁下端の芯墨より外側に 4~5分離して彫り、横間渡し竹の穴は、柱芯に彫る。竹の穴は、いずれも柱、貫、間柱などから 2寸離して彫るものとする。
   
                                                 「配置図」「平面図」「姿図(建絵図)」「矩計図」の項終り

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以上お分りのことと思いますが、この書の矩計図の寸法記入が現在一般に奨められている矩計図のそれと大きく異なっています。
ここで示されている矩計は、建築者:施工者のための矩計なのです。
一方、現在一般に奨められている矩計は、建築者のためではなく、確認申請の審査者のための矩計なのです。
現在の矩計は、設計GLからの寸法を指示することが求められています。それゆえ、建築者(大工さん)は、仕事をするために、木造部の寸法を、あらためて計算しなければならないのです。
この書の矩計では、土台下端が基準点になっています。そこで表示される寸法で直ぐに仕事ができるのです

設計図とは何か、考え直してみる必要があるように思います。確認申請のためにつくるものではありません!

次回は残りの図について紹介します。


近時雑感

2013-10-01 15:35:19 | 近時雑感


十月になりました。
10日ほど前から、時折、あたり一帯の空気にキンモクセイの香り。今年は少し早いように思います。常緑の葉に隠れるように秘かに咲いていました。

昨日、9月30日は、「回復期病院」での最後の「診察」。「通院リハビリ」も25日が最後でした。今後は、自主トレで、更なる「回復」を期することになったわけです。
一応、普通に暮らせていますが、左の指先の感覚が鈍く少ししびれがあり、左脚も、歩くのに支障はありませんが、いつも膝のあたりが重い。毎日、朝1㎞、夕方2㎞ほど犬に引かれて歩いてますが、それが終ると一気にくたびれます。体力の回復も今一つのようです。
診察で、Drからは、発症前の状態に戻れた、などと思うな、それは錯覚だよ、いい気になるな、・・と言われました。
心身ともにストレスは厳禁、とのこと。曰く、「役に立たない番犬のように、のんびり過ごすのがいい」(犬に申し訳ない・・。)。「自主トレもサボるんじゃないよ!」・・・。
脳出血は、結構再発があるのだそうです。お言葉に甘えて、焦らずにのんびり行こうと考えてます。
「焦ってものんびりでも、ちゃんと明日はくるんです・・・」 これは、最近よく見る NHK の「フック ブック ロウ」という子供向け番組のイントロの詩。