建築をめぐる話・・・・つくることの原点を考える       下山眞司        

                     ☆ 2019年1月より、故人が残したものを順次、掲載して行きます。☆

A・AALTO設計「パイミオ・サナトリウム」の紹介―1

2013-08-18 11:59:00 | 建物案内
「回帰の記」のなかで、surroundings の創出に意を注いだ設計例として、A・AALTOの設計した「パイミオ・サナトリウム」の名を挙げました。
私の年代近辺の方なら知っている設計事例ですが、若い方がたは知らない方が多いかもしれません(「近代建築史」の一事項として、「教科書」にはあるはずですが・・・)。
そこで、いろいろな書物から図面や写真、スケッチなどを編集して紹介させていただくことにします(私は現地を訪れたことはありません)。

サナトリウムとは「療養所」という意味ですが、特に、20世紀のはじめは、日本でも、「結核の療養所」を意味することが普通でした。
当時、結核の治療法として、新鮮な空気と陽光の下で過ごす療法(「大気療法(たいきりょうほう)」が勧められていたのです。
場所として、高原や林間、海岸などが選ばれました。日本では、堀辰雄など、多くの文人の療養した信州・八ヶ岳山麓の「富士見のサナトリウム」などが有名です。
   結核の治療法が変わり、現在、パイミオも富士見も普通の病院になっています。

パイミオ・サナトリウムは、ALVAR AALTOが自身の入院経験を基に設計したと言われています。
すなわち、当時の病院は、患者にとっての surroundinngs の視点を欠いてデザインされていることを体験し(たとえば、はベッドに横たわっている患者に眩しすぎる天井の照明など・・・)それを患者の立場から見直そうとしたのです。それは、病室の設計に如実に現われていますが、今回は、先ずパイミオ・サナトリウムの全容・概要を図と写真で紹介します。

フィンランドは、国全体が森林の、日本の高原のような地域。パイミオは、首都ヘルシンキの西150㎞のトゥルクという町の近くにあります。


①全体俯瞰 針葉樹の森の中に埋もれている

②配置図 ①は、この図の左手の上空からの俯瞰 ループ状の線がアクセス
Aと付してある棟が病棟 B:共用棟 C:厨房、機械室 D:ガレージ E:医師用住宅 F:職員住宅など


③スケッチ このスケッチから、病棟の位置が最初に決まっていたことが読み取れます。すべての病室が陽光を受けるように、病棟は東西軸に一列に病室を並べる。
次に、この病棟に対して、Bの共用棟をどのように並べるか、いろいろと考えているようです。この二棟の関係で、建物に向かう人の「気分」が決まってしまうからです。ただ、二棟をⅤ型に配置することは、かなり早く決まっているようで、むしろ入口回りをどうするか、検討している様子がスケッチからうかがえます。

以前にも紹介しましたが、ALVAR AALTO のスケッチは、単なる「形」の「追及」つまり「造形」確認のためのスケッチではなく、その「形」がつくりなす surroundinngs を事前に確認するためのスケッチであることがよく分るのではないでしょうか。それは、右側のスケッチと、後掲の⑥の写真を見比べるとわかります。


上:④標準階平面図 下:⑤地上階平面図


⑥建物へのアクセスから見た全景 
正面が入口、右手の中層建物が病棟(配置図のA)左手が共用棟(配置図のB)。③のスケッチ参照。

⑦病棟断面図
病室への陽光の採りこみに工夫がこらされています。次回紹介の予定。


⑧病棟の屋上に設けられている「大気浴」のためのバルコニー 
病室からここへ出てきて一定時間過ごすのです。 療養者でなくても居たくなります。⑦断面図参照
地上の散策路も見えます。「大気浴:森林浴」に使われる散策路です。

今回の最後

⑨入口ホールにある中央階段
療養者は普段エレベーターを使うと思いますが、この階段も歩きたくなるでしょうね。
   初めてこの事例に接したとき、
   踏面、蹴上、幅木のおさめ方もさることながら、手摺のつくりかたに感動したことを覚えています。
   手摺をこのようにおさめる(階段の勾配に平行におさめ、なおかつスムーズに段差なく折り返す)のは、断面図を描くと分りますが、結構難しいのです。


次回は、病室まわりの詳細を紹介したいと思います。

図版出典
①③⑥⑦⑧⑨
“Alvar Aalto Between Humanism and Materialism”(The Museum of Modern Art,New York 1997年刊)
②④⑤  
“ALVAR AALTO bandⅠ 1922-1962”(Les Editions d'Architecture Artemis Zurich 1963年刊) 




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