アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

イタリア広場

2009-11-08 20:41:28 | 
『イタリア広場』 アントニオ・タブッキ   ☆☆☆☆  あのタブッキ幻のデビュー作がついに翻訳された、ということで飛びつくようにして買った『イタリア広場』。名前だけはずっと前から知っていたが、もう訳されることはないかも知れないと思って諦めていた。それにしてもタブッキ、『ダマセーロ・モンテイロ』以降の新刊が全然訳されないのはどうしたことだ。『トリスターノは死ぬ』など新作は発表されているというのに。 . . . 本文を読む

小早川家の秋

2009-11-06 23:48:23 | 映画
『小早川家の秋』 小津安二郎監督   ☆☆☆☆★  『LATE OZU』ボックス中の一枚、『小早川家の秋』を鑑賞。それにしてもこのBOXは良いなあ。もう最高。  今回は『秋日和』+『浮草』といった趣きである。まず原節子と司葉子の『秋日和』コンビ、ただし今回は母子でなく姉妹、の嫁入り話で映画は幕を開ける。姉の原節子は未亡人であるのも『秋日和』と同じ。まず加東大介が原節子をバーに呼び出し、そこにた . . . 本文を読む

遠い家族

2009-11-04 01:31:19 | 
『遠い家族』 カルロス・フエンテス   ☆☆☆★  再読。オクタビオ・パスは『アウラ』とこの小説を「完璧な小説」と賞賛したらしいが、個人的には評価が難しい。かなり妙な小説である。ただ、フエンテスの文体とそれが作り出す雰囲気が魅力的であることは間違いない。私はこの小説の書き出しがとにかく大好きで、何度読んでもほれぼれしてしまう。フエンテスは流麗な文章の中に詩的な比喩を次々に繰り出して、あっという間 . . . 本文を読む

赤い橋の下のぬるい水

2009-11-02 20:12:16 | 映画
『赤い橋の下のぬるい水』 今村昌平監督   ☆☆☆★  日本版DVDで再見。主演は『うなぎ』と同じく役所広司、清水美砂のコンビ。例によって奇妙で不穏で滑稽でちょっとシュールな世界が展開するが、『うなぎ』と比べると毒気は薄めだ。ほのぼのしている。そのせいで印象は薄く、今回二度目の鑑賞だが内容をほとんど覚えていなかった。ただ、観始めるとそこそこ面白くて退屈することはない。  会社が潰れて失業者とな . . . 本文を読む