アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

Love Not Money

2009-04-02 21:17:50 | 音楽
『Love Not Money』 Everything But the Girl   ☆☆☆☆

 ベン・ワットとトレイシー・ソーンのユニット、エヴリシング・バット・ザ・ガールのセカンドである。ファースト『エデン』がジャズやボサノヴァの色が濃く、大人っぽくけだるい雰囲気だったのとうって変わり、このセカンドはロックンロールやカントリー色が前面に出た、よりストレートで溌剌としたサウンドになっている。それは軽快なドラムと清冽なギターの響きで幕を開ける一曲目『When All's Well』から明らかだ。二曲目の『Ugly Little Dreams』などすっかりカントリーである。そういうわけで、このアルバムはいわゆるネオ・アコースティックにジャンル分けされているらしい。

 ファンの評価はどうもまちまちで、初期の最高傑作という人もいれば、地味な駄作という人もいるようだ。確かにこの人たちの作品にしては、洗練性というか洒脱さがそれほど感じられない。ストレートに明るい曲がある一方で暗い曲はかなり暗い。実際米国のAmazonでは彼らの作品中このCDのみ入手不可となっている。が、私は結構好きである。一曲一曲の完成度が高いというより、全体の雰囲気と流れがいい。最初に溌剌としたキュートな『When All's Well』でぐっと惹きつけ、『Shoot Me Down』のようなけだるくノワールな曲で酔わされる。

 そしてなんといっても、最後の『Angel』が美しい。『Shoot Me Down』と似たけだるくメランコリックな雰囲気で始まり、この世の悲惨を歌う暗い歌詞はどこか怒りを感じさせるが、サビの「Show me something more...」でハッとするほど感動的な旋律へと展開していく。アルバム全体がストレートで素朴な、EBTにしては無骨といってもいいサウンドなので、最後に現れるこの美メロが余計に引き立っている。この『Angel』はいかにもEBTらしい曲とはいえないかも知れないが、個人的に彼らの曲の中で1, 2を争うほど好きである。
 


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