アブソリュート・エゴ・レビュー

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高校教師

2016-09-15 23:20:24 | 映画
『高校教師』 ヴァレリオ・ズルリーニ監督   ☆☆

 『帰らない夜明け』に続きアラン・ドロンの映画を鑑賞。これは日本のドラマ『高校教師』の元ネタとも言われる映画だが、うーむ、こういう映画だったか。惜しい。設定や雰囲気は悪くないと思う。無精ひげのアラン・ドロンもかっこいいし、イタリアの街並みもいい感じだ。ヒロインのソニア・ペトローヴァもミステリアスな美しさがある。冒頭しばらくはなかなかいいじゃないかと思いながら観ていたが、途中からどんどんテンションが下がっていく。最後はもうほとんど画面に集中することができなくなっていた。耐えがたいほどに冗長なのである。

 無意味に長いパーティー・シーン、数々の説明的な愁嘆場。登場人物がぞろぞろ出てきて、深刻な顔で昔のいきさつを説明したりする。最後はとってつけたような悲劇的結末。基本的には、世をすねて虚無的になっているアラン・ドロンが、これも色んな過去があって自暴自棄になっているソニア・ペトローヴァといい仲になり、二人で新しい生活を築こうとするが…というシンプルなメロドラマである。が、このストーリーで二時間以上もある。ダラダラした、どうでもいいようなシーンが続く。途中で「もう勘弁してくれ」と言いたくなる。

 そういう無駄なエピソードは全部削り、冗長な部分を刈り込めばもっとよくなったはずだ。ドロンもペトローヴァも存在感ある役者だし、音楽もムーディーでそれなりに印象的なんである。80分か90分ぐらいの、スタイリッシュでアンニュイなメロドラマにすれば、名画とはいえないまでも妙に記憶に残る佳作、ぐらいにはなったはずだ。

 冒頭の、ドロンのとても教師とは思えないアウトローなキャラはなかなか面白かった。平気で授業をずっぽかして外に出て行く。禁煙の教室でタバコを吸う。生徒にまでタバコを勧める。かと思ったら、ふざけた発言をした生徒にいきなり「教室を出ていけ」。このニヒルな教師と影のある少女の出会いは、なかなか絵になっていた。ドロンの吐くセリフも印象的なものがいくつかあった。たとえば、「どんなにつらいこともいつかは過ぎ去る」「後悔なんて贅沢だ」など。

 その後のグダグダな展開が実に惜しい。残念な映画だった。



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