アブソリュート・エゴ・レビュー

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デビル

2015-07-10 23:42:14 | 映画
『デビル』 ジョン・エリック・ドゥードル監督   ☆☆☆★

 Netflixで鑑賞。原案は『シックス・センス』のシャマラン監督で、かなりシャマラン監督のテイストが感じられる映画だ。ビルのエレベーターの中に5人の男女が閉じ込められ、一人ずつ殺されていく。エレベーターの中でどうやって殺されるかというと、停電して暗闇の中で物音や悲鳴が上がり、灯りがつくと一人死んでいる、という具合だ。だから誰が犯人か分からない。当然、全員が自分以外の誰も信じられなくなり、罵倒しあったり、あわや殺し合いに発展しそうになったりする。

 一方、エレベーターの外ではビルのセキュリティ係やエンジニアが、なんとか彼らを救出しようと努力を続ける。エレベーターの中でけが人が出てからは、刑事もやってきて捜査が始まる。この中と外のコミュニケーションの制約のかけ方がなかなか巧く、たとえば外からの声はエレベーターの中に聞こえるが中の声は外に聞こえない。また、定期的に停電して真っ暗になるのでその間、外から中の様子はまったく分からなくなる。

 この設定だけ聞くと普通のサスペンスもののようだが、エレベーターの乗客がたった5人で、また外から刑事に見られている状況で連続殺人が起きるというのはあまりにも無理があり、大体シャマラン監督原案で普通のサスペンス映画になるわけがない。というわけで、タイトルからも明らかなように、この映画はどんどんオカルト方面へと傾斜していく。冒頭のナレーションでまず悪魔のことが語られ、また事故が起きて早々警備員がモニターにぼんやりと不気味な顔が映るのを目撃する。この警備員は信心深い男らしく、モニターの前で祈りを奉げたり、エレベーターの中に集まったのは全員罪びとだし目撃している自分たち(刑事含む)も意図的に選ばれたのだ、なんてことを口走る。

 最初この警備員は皆に頭がおかしいと思われるが、やがてエレベーターに乗り合わせた5人が5人とも犯罪者であることが判明する。しかも相互に関係はない。偶然にしては出来すぎだ、というわけで警備員はこの中の一人が悪魔だと言い出す。刑事は信じないが、あまりにも不可解な事件の連続にやがてこの「悪魔説」をだんだん受け入れていく。要するに、過去に悪いことした罪びとたちがここに集められて、一人ずつ悪魔のえじきになっていくというわけだ。すごいアイデアである。一歩間違えれば子供だましだ。これ以外にもエレベーターの修理工が墜落して死んだり、警備員の一人が感電して重傷を負ったりし、このようにありえない偶然が重なることでこの異常な事件は展開していく。

 まあ、ミステリやサスペンスものではないことは最初から分かっていたが、思った以上に人工的な話だった。寓話的といってもいい。このわざとらしい人工的な設定がいかにもシャマランっぽいのだが、実のところ、刑事が警備員にいちいち「君の理論では事件の結末はどうなるんだ?」などと尋ねたりするのはわざとらし過ぎてギリギリという感じだ。つまり、アホらしさの一歩手前である。このあたりの許容範囲は人によって異なるだろうが、私の場合はまあギリギリオーケーで、結果的にはわりと楽しめた。人によってはバカバカしい映画だろう。ただしこのあまりに現実離れした設定さえ受け入れれば、場面場面のスリルの盛り上げ方はなかなかうまいと思う。

 それからシャマラン監督原案なのでラストに嫌などんでん返しがあるんじゃないかと警戒していたら、意外にもちょっとイイ話風の、快い終わり方をする。悪くない。まあ映画というよりTVの深夜劇場っぽいが、小粒ながら佳作だと思う。



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2 コメント

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Unknown (青達)
2015-07-12 01:17:38
 うぬぬ……シャマランですぞ。シャラマンではなく。別にどっちでもいいけど。

 ちなみに僕は「シックスセンス」は公開からずっっっと後になって(もちろんオチは知らずに)観て、すぐに冒頭の「オチは言わないでください」とCMでさんざん流れた「I see dead people」の二つでほとんど最初の方にネタに気付いてしまい、以降は全て答え合わせになるという悲劇に。

シャマランは、まあ、うまく儲けた人だな、って印象しかないなあ。
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シャマラン (ego_dance)
2015-07-14 12:49:18
大変失礼しました。さっそく修正させてもらいました。実は、ずっとシャラマンだと思っていました。はっはっはっ。

私は「シックスセンス」はオチがあるということも知らずに観て、見事に騙されたクチです。日本ではCMがヘンな風に煽りすぎなんじゃないでしょうか。
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