アブソリュート・エゴ・レビュー

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キングコング対ゴジラ

2008-10-24 23:06:07 | 映画
『キングコング対ゴジラ』 本多猪四郎監督   ☆☆☆★

 日本版DVDで鑑賞。ゴジラ三作目、シリーズ初のカラー作品である。一作目『ゴジラ』の荘厳さはかけらもない脳天気な娯楽映画になっているが、これはこれで面白い。「ゴジラとキングコングを戦わせたらおもしれーだろうな!」という制作側のワクワク感が画面いっぱいに溢れている。

 南海の孤島からキングコングを連れてくるパシフィック製薬トリオ、高島忠夫と藤木悠、そして宣伝部長の有島一郎のやり取りは完全に喜劇で、なかなか笑える。つるつるした顔の高島忠夫はいつも元気いっぱい、藤木悠はビビリで、有島一郎は宣伝のことしか考えていない。この三人が連れてきたコングが太平洋上で目を覚まし、日本上陸してゴジラと対決することになる。一方、高島忠夫の妹・浜美枝はたまたまゴジラに襲われた列車に乗り合わせて逃げ出し、恋人の佐原健二が救援に駆けつけたりする。浜美枝を助け出した佐原健二の「このあわてものさん!」には爆笑。

 ちなみに今観るとどこまでギャグでどこまでまじめだか分からないセリフが多々あってなかなか味わい深い。中でも浜美枝と高島忠夫のやりとり「ノックぐらいするものよ」「ちぇっ、ノックもトスバッティングもあるもんか」にはむせそうになった。

 しかしこの映画を観ていて思ったのは、そういえば昔のゴジラ映画は市井の人々が主役で物語をひっぱっていたなあ、ということ。平成になるとゴジラもガメラも、怪獣と戦う側の人々が主役になるパターンが多いようだ。個人的には自衛隊とかゴジラ対策チームとかの人々を物語の中心に据えない方が面白いような気がする。市井の人々メインだと、物語の中にいきなり出現する怪獣の異物性、異形性が際立つが、怪獣対策チームが主役だともともと怪獣対応が彼らの仕事なわけで、つまり怪獣出現が想定の範囲内になってしまうのだ。どうも面白くない。

 ところで浜美枝はゴジラに追われて川に落ちびしょぬれになりながら逃げ、またキングコングに捕まって握りつぶされそうになるという、両方の怪獣との絡みがあって大熱演だ。この頃はまだ若くて初々しい。キングコングは本作で浜美枝を手に持ったまま国会議事堂に登るわけだが、①美女にひかれる、②有名な建物に登る、というオリジナル映画の二大特徴をここでも発揮している。「美女と野獣」パターンの一典型としてのキングコングは、こんな極東のお祭り特撮映画に出演してまでもその遺伝子に伝わる宿命から逃れられないらしい。私はそのことに不思議な感慨を覚えた。

 他にも、この頃のゴジラ映画はちょっとした脇役にも松村達夫とか、地味にいい役者を使っていて嬉しい。黒澤映画に出てくるような役者がどんどん出てくる。それからなんといってもこのDVDジャケット写真が素晴らしい。私がこのDVDを購入したのは半分ぐらいこのジャケット写真のせいである。炎の海と青い空のコントラスト、小さく写ったキングコングとぶん回されている巨大なゴジラという大胆な構図、そして危機的状況にありながらどこかのんきな感じのゴジラ、と見れば見るほど味のあるスチールなのである。


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