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アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃

2010-10-15 08:44:19 | 映画
『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』 金子修介監督   ☆☆☆☆

 所有しているDVDで再見。これは平成ガメラ・シリーズで怪獣映画に活を入れた金子監督が、ついにご本尊ゴジラを手がけた記念すべき作品であり、平成ゴジラの息もたえだえの貧弱さ(とハリウッド製ゴジラのショボさ)にうんざりしていたゴジラ・ファンを狂喜乱舞させたものである。

 確かに良く出来ている。平成ガメラ・シリーズの長所はこの映画にも引き継がれていて、それは人間視点で描く怪獣映像の迫力や、アングルや構図の「カッコよさ」へのこだわりなどである。平成ゴジラ・シリーズと比べると「絵」が段違いにカッコいい。特にクライマックス、夜の東京でモスラとゴジラが対峙する場面は見事だ。一連のアクションにストーリーがある。たとえばモスラが滑空し、ゴジラに一直線に向かっていく場面。ゴジラのしっぽではたかれたモスラがキリモミして態勢を立て直し、そのために起きた強風が自衛隊の面々を吹き飛ばす場面。そして急に振り返り、背後から接近してきたモスラにいきなり放射能光線を浴びせるゴジラ、などなど。燃える。

 また金子監督はガメラで回転ジェット、火球など「技」の見せ方に凝って特撮ファンの心を鷲づかみにしてくれたが、本作ではやはりゴジラの放射能光線だ。もともとゴジラはガメラほどギミックが多い怪獣じゃなく、凝るところと言ったら放射能光線ぐらいしかないわけだが、見事に期待に答えてくれている。まず背ビレが不気味な青白い光を放ち、おもむろに口からすごい勢いで光線が飛び出す。おまけに放射能光線による爆発はキノコ雲の形になる。ゴジラが最初に放射能光線を吐く場面では、口が光を放ち始めたところで場面を切り替え、加東かずこが遠くに立ちのぼるキノコ雲を見て「水爆?」と呟く、というもったいのつけ方だ。こういうのがファン心理をくすぐるんだなあ。

 とにかくゴジラが圧倒的に強い。強くて、凶暴だ。それから本作の特徴として、人間の殺され方をことさらブラックに描いている点がある。つまりゴジラによって殺される個々の人間を細かく描写していて(篠原ともえや近藤芳正夫妻)、それがかなり意地が悪い。怪獣の記念写真を撮ろうとしているところを殺されたりする。

 その一方で、平成ガメラ・シリーズに見られた欠点、安直なオカルト趣味や軟派なファンタジー性もやはり引き継がれている。護国聖獣伝説というものを知っている人がやたらたくさん出てくるし、ゴジラは太平洋戦争の戦死者の残留思念ということになってしまう。ファンタジー性ということでいうと護国聖獣であるバラゴン、モスラ、ギドラが合体したり、死んだあとでキラキラした金粉になって姿を見せたりする。

 ちなみに本作では個々の怪獣の設定は完全にリセットされていて、モスラもキングギドラも日本古来の聖獣の一つになっている。まあそれはいい、キングギドラももともとヤマタノオロチあたりから来ているんだろうし。しかし、もともとグッドデザイン賞もののデザインを誇るキングギドラだというのに、あの短い首、ちっちゃい翼の寸詰まり体型は一体どうしたことだ? 不細工にもほどがある。走っていってゴジラの腕に噛み付いたりする。お前は柴犬か。

 個人的にはこれが本作に対する最大の不満だ。ゴジラの強さを強調するためにキングギドラをゴジラより大きくしたくなかったのだろうが、あれじゃあんまりだ。キングギドラは昔のままのサイズとデザインで良かったと思う。そうすればゴジラとキングギドラのバトルはさらに映えたはずだ。

 とまあ、色々と欠点もあり万人にオススメはしないが、とりあえず特撮ファンは必見でしょう。


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