『太陽にほえろ! スコッチ&ボン編1(DVD-BOX「スコッチ登場」)』
マカロニ、ジーパン編に続き、今度はスコッチ編である。実は私は沖雅也ファンであるにもかかわらず、これまでスコッチ出演時の『太陽にほえろ!』をほとんど見たことがなかった。ちゃんと観るのは今回初めてである。
さて、このスコッチ刑事、これまでの新人刑事達とはまったく違うキャラクター設定がなされている。マカロニ、ジーパン、テキサス、ボンと、若さゆえにどこまでも熱く危なっかしくしかしまっすぐに突き進んでいく刑事達とはまさに正反対、クールで無表情、老練で凄腕、しかも七曲署の刑事達の仲間意識さえ真っ向から否定するニヒリストなのである。DVD特典のインタビューで、プロデューサーが「刑事達がみんな仲良くなり過ぎちゃったので、異分子を投入しようと思った」という発言をしているが、まさに異分子、番組としてはかなり冒険だったに違いない。へたすると『太陽にほえろ! 』の世界を破壊しかねない異形のキャラクターである。
『必殺』シリーズのファンならば、このスコッチ刑事が『必殺仕置屋稼業』の市松と双生児的なキャラクターであることに気づくだろう。人情味を欠いたニヒルな言動、凄腕、そして美青年。もちろんこっちは刑事なので人殺しはしないが、すぐに拳銃を抜いて発砲するという危ない性格をしている。まわりに一般人がいても発砲しようとするのである。拳銃を撃つことに対して常にためらいとわだかまりを見せてきた歴代新人刑事と比べると、ほとんど同じ刑事とは思えないほどだ。
こういうスコッチはある意味『太陽』の歴代刑事の中でももっともリアリティを欠いた、非現実的なキャラクターといえるかも知れない。もちろんボスにしても殿下やゴリさんにしてもリアリティがある刑事像とはとても言えないだろうが、そんな中でもスコッチはひときわ現実離れしている。そういう意味でスコッチ編を見ていると、スコッチと他の刑事達の描写が水と油のようなところがあり、作劇的に危うさを感じる部分もある。少なくとも、七曲署チームのバランスが不安定になっているのを感じる。スコッチ主演編ではスコッチと他のメンバーが対立することが多いので、他のメンバーの主演編でスコッチをどう扱ったらいいのか脚本家も困ったのではないか。実際、主演編以外でのスコッチの存在感はとても薄い。あまり他のメンバーとの交流を描けないというスコッチの性格設定がその原因だろう。
さて、スコッチ編第一話『スコッチ刑事登場』。冒頭から沖雅也登場。女に通報され、警官に逮捕され、七曲署へと連行されてはじめて自分の身元を明かす。ゴリさんいきなり激怒。しかし顔色ひとつ変えず、「拳銃をいただけますか」。拳銃の携帯拒否をしたジーパンとはえらい違いだ。部屋を出て行ったスコッチを見送った七曲署刑事一同、困惑気味である。殿下でさえ「スタイルは英国風だが、とてもジェントルマンとは言えないな」と憎まれ口を叩く。
そしてゴリさんがスコッチの銃身の短い銃を見て、狙いがより正確な銃身の長い銃を見せて「この3センチの違いが分かるか」と聞くと、傲然と「3センチ分銃を抜くのが遅れるということだ」と返す。何と、銃を早く抜くことを何よりも重視しているのである。そしてゴリさんとの対立を決定的にするセリフ。お前の捜査には人情味が感じられないというゴリさんに向って、「テキサスっていうおれの前任の刑事ね、犯人を一人も殺さないで逮捕するために殉職したそうじゃないですか。人情味のある刑事になるっていうのはそういうことだ。テキサス刑事を殺したのは誰でもない、あんた達ですよ」
これはいかん、これは『太陽にほえろ! 』で言ってはいけないセリフである。当然の結果としてゴリさんの鉄拳が飛ぶ。スコッチは唇の血をぬぐい、捨て台詞を残して去る。「おれはまだ死にたくない」
何という強烈な個性だろうか。こんなんでこの先大丈夫かと心配になる。さて、この第一話、事件の方もこのスコッチの個性を最大限に活かした印象的なものになっている。おれは犯人じゃないと主張する前科者をスコッチは冷酷に追い詰めていく。前科者は心臓病があるといい、スコッチの目の前で発作を起こす。それをまったく動じないで冷ややかに見つめるスコッチ。見ているこっちはまだ前科者が真犯人かどうか分からないので、ひやひやする。結果的にスコッチの正しさが証明され、事件は解決する。
(明日へ続く)
マカロニ、ジーパン編に続き、今度はスコッチ編である。実は私は沖雅也ファンであるにもかかわらず、これまでスコッチ出演時の『太陽にほえろ!』をほとんど見たことがなかった。ちゃんと観るのは今回初めてである。
さて、このスコッチ刑事、これまでの新人刑事達とはまったく違うキャラクター設定がなされている。マカロニ、ジーパン、テキサス、ボンと、若さゆえにどこまでも熱く危なっかしくしかしまっすぐに突き進んでいく刑事達とはまさに正反対、クールで無表情、老練で凄腕、しかも七曲署の刑事達の仲間意識さえ真っ向から否定するニヒリストなのである。DVD特典のインタビューで、プロデューサーが「刑事達がみんな仲良くなり過ぎちゃったので、異分子を投入しようと思った」という発言をしているが、まさに異分子、番組としてはかなり冒険だったに違いない。へたすると『太陽にほえろ! 』の世界を破壊しかねない異形のキャラクターである。
『必殺』シリーズのファンならば、このスコッチ刑事が『必殺仕置屋稼業』の市松と双生児的なキャラクターであることに気づくだろう。人情味を欠いたニヒルな言動、凄腕、そして美青年。もちろんこっちは刑事なので人殺しはしないが、すぐに拳銃を抜いて発砲するという危ない性格をしている。まわりに一般人がいても発砲しようとするのである。拳銃を撃つことに対して常にためらいとわだかまりを見せてきた歴代新人刑事と比べると、ほとんど同じ刑事とは思えないほどだ。
こういうスコッチはある意味『太陽』の歴代刑事の中でももっともリアリティを欠いた、非現実的なキャラクターといえるかも知れない。もちろんボスにしても殿下やゴリさんにしてもリアリティがある刑事像とはとても言えないだろうが、そんな中でもスコッチはひときわ現実離れしている。そういう意味でスコッチ編を見ていると、スコッチと他の刑事達の描写が水と油のようなところがあり、作劇的に危うさを感じる部分もある。少なくとも、七曲署チームのバランスが不安定になっているのを感じる。スコッチ主演編ではスコッチと他のメンバーが対立することが多いので、他のメンバーの主演編でスコッチをどう扱ったらいいのか脚本家も困ったのではないか。実際、主演編以外でのスコッチの存在感はとても薄い。あまり他のメンバーとの交流を描けないというスコッチの性格設定がその原因だろう。
さて、スコッチ編第一話『スコッチ刑事登場』。冒頭から沖雅也登場。女に通報され、警官に逮捕され、七曲署へと連行されてはじめて自分の身元を明かす。ゴリさんいきなり激怒。しかし顔色ひとつ変えず、「拳銃をいただけますか」。拳銃の携帯拒否をしたジーパンとはえらい違いだ。部屋を出て行ったスコッチを見送った七曲署刑事一同、困惑気味である。殿下でさえ「スタイルは英国風だが、とてもジェントルマンとは言えないな」と憎まれ口を叩く。
そしてゴリさんがスコッチの銃身の短い銃を見て、狙いがより正確な銃身の長い銃を見せて「この3センチの違いが分かるか」と聞くと、傲然と「3センチ分銃を抜くのが遅れるということだ」と返す。何と、銃を早く抜くことを何よりも重視しているのである。そしてゴリさんとの対立を決定的にするセリフ。お前の捜査には人情味が感じられないというゴリさんに向って、「テキサスっていうおれの前任の刑事ね、犯人を一人も殺さないで逮捕するために殉職したそうじゃないですか。人情味のある刑事になるっていうのはそういうことだ。テキサス刑事を殺したのは誰でもない、あんた達ですよ」
これはいかん、これは『太陽にほえろ! 』で言ってはいけないセリフである。当然の結果としてゴリさんの鉄拳が飛ぶ。スコッチは唇の血をぬぐい、捨て台詞を残して去る。「おれはまだ死にたくない」
何という強烈な個性だろうか。こんなんでこの先大丈夫かと心配になる。さて、この第一話、事件の方もこのスコッチの個性を最大限に活かした印象的なものになっている。おれは犯人じゃないと主張する前科者をスコッチは冷酷に追い詰めていく。前科者は心臓病があるといい、スコッチの目の前で発作を起こす。それをまったく動じないで冷ややかに見つめるスコッチ。見ているこっちはまだ前科者が真犯人かどうか分からないので、ひやひやする。結果的にスコッチの正しさが証明され、事件は解決する。
(明日へ続く)
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