アブソリュート・エゴ・レビュー

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亀は意外と速く泳ぐ

2015-06-12 23:03:48 | 映画
『亀は意外と速く泳ぐ』 三木聡監督   ☆☆

 『虹の女神』『サマータイムマシン・ブルース』に続いて、上野樹里出演作『亀は意外と速く泳ぐ』を鑑賞。Amazonで検索して、カスタマーレビューを参考に買ったのだが、それによれば脱力系のゆるーい笑いという触れ込みだった。そういうのは私も嫌いじゃないのでそこそこ期待したのだが、かなり微妙な結果となった。ちなみにこの監督さんはテレビで「時効警察」などを作っていた人らしい。私は観たことがない。

 映画が始まると、夫が単身赴任したため一人で暮らしている若い主婦・上野樹里が亀に餌をやったりベランダを水浸しにしたりというような小ネタが連発される。そこに水道管屋さんがやってきてドタバタ調の芝居をやったりする。やっぱり『サマータイムマシン・ブルース』と同じで、コントっぽい。しかも、笑いのヒット率は低い。個人的には1/3か1/4ぐらいだ。それも大笑いじゃなくクスッとできるのがそれぐらいで、他は別に面白くない。

 またしても、最初の10分で最後まで観れるか心配になった。が、だんだんと慣れて、時々クスッと笑いながら最後まで観ることはできた。まあまあ面白かったネタとしては、あのちっちゃいスパイ募集広告、上野樹里と蒼井優の「そこそこ好き」という会話、加東先輩と出会うエピソード、「目立たない」ためのトレーニング、怪しいスパイ夫婦の会話、蒼井優のキャラ、などだろうか。いずれにしろコントっぽい笑いだが、『サマータイムマシン・ブルース』が力ずくの吉本系ドタバタ・コントだとすれば、こっちは不条理系コントというところだ。「たんすにゴン」みたいな、昔はやった不条理系CMを思い出した。たとえが古くてすみません。

 ゆるい笑いといえば山下監督の『リアリズムの宿』『もらとりあむタマ子』などを思い出すが、そのへんが「あーこういうのあるある」というような微妙な空気感を狙っているに比べ、この映画はかなり「作ってる」感が強い。あんなちっこい広告なんてあるわけないし、スパイ夫婦の会話も現実にはないシュールなものだ。そういう意味では、徹頭徹尾人工的である。悪くいえばわざとらしい。部分的には「狙ってる」感が強すぎて、興ざめしてしまう。

 そういうわざとらしい部分も含めて、観客一人一人のツボにはまるかどうかがすべて、という映画だ。ハマる人なら、小ネタの連続をそれなりに楽しめるかも知れない。それで、あーなんかヘンな映画だったな、と笑っておしまいにすると。しかしまあ、これじゃ私は物足りませんです。


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