崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

「国境が無い」

2008年09月17日 05時01分06秒 | エッセイ
 北アイルランドのベルファストへ向かった。タクシーの運転手さんに雨のことを心配して話をしたら年中雨の国であること、「去る土曜日を記憶しているか」つまりその日だけは一日中晴れたということ、今年は珍しく23度まで気温が上がる日が多かったという。ふつうは15度くらいであるという。いつも曇っているので木も大きく伸びないようである。
 160キロあるベルファストまでのバスの往復の料金は非常に安い。市内定期バス料金と同じであった。快適なバス旅行であった。静かに考えながら観察することができた。車内はいつも郷土民謡などを流している。北アイルランドはイギリスであるので国境を越えていくので旅券を用意したが、それはナンセンスであった。二か所で客を乗せるために寄った国境の地点を地図では確認できたが国境を実際に感ずることは全くなかった。将来の国境はこうなるべきだと強く感じた。ベルファストはイギリスとは言ってもアイルランドの北部の都市にすぎない。注目しているケースメントに関する資料を探してもここダブリンより貧弱で満足できなかった。無蓋車に乗って市内を回ったが寒くて半分は下の車両に座った。
 アイルランド人にとって国家とはアイデンティティとしては重要ではない。彼らはまだ30%くらいはアイルランド語アイリシュをもっているが、消えつつある。しかし民謡などの伝統文化を強く保存しようとしている。テレビなどでも民謡番組などが多い。今は政治的なナショナリズムより文化復古主義を強く持っている。韓国に似ている点が多いことを感ずる。タクシーの運転手さんはイギリスと違うところは民族しかないと言い、韓国人が好きだと言った。私は日本から来たと言ったのになぜそう言ったのだろうか。