電脳筆写『 心超臨界 』

人生は良いカードを手にすることではない
手持ちのカードで良いプレーをすることにあるのだ
ジョッシュ・ビリングス

高尚と低俗が生物学的効果として同じならば、その違いはどこにあるのか?――茂木健一郎さん

2011-10-02 | 09-生物・生命・自然
【 このブログはメルマガ「こころは超臨界」の資料編として機能しています 】

『欲望する脳』
【 茂木健一郎、集英社 (2007/11/16)、p57 】

最近のfMRIを用いた研究では、音楽を聴いた時の感動も、基本的には食べ物や水、セックスのような生きるために必要な報酬に対する脳活動と同じであることが示されている。この研究では、被験者にそれぞれ自身が最も感動する音楽のフレーズを申告させ、その部分を刺激として用いた。曲は、全てクラッシック音楽から選ばれた。自分の愛するフレーズを聴いている時の被験者の脳では、右に述べた、より原始的な生物学的刺激に対する報酬系の活動と基本的に同じ活性化パターンが現れたのである。

バッハの音楽を聴いた時の感動を支える脳のメカニズムが、薬物依存症のような短絡的な快感の脳機構と異なるのならば、話はやさしい。片方を高尚と呼び、もう一方を低俗だと決め付ければ良いだけの話である。両者に多くの共通点があり、恐らくは同じであると言っても良いくらいであるという事実を付き付けられた時、私たちは面食らう。高尚と低俗が生物学的効果として同じならば、その違いはどこにあるのか? 明らかにバッハを聴いた時にしか感じない主観的体験は、一体どこに消えてしまったのか。ここに、人間の欲望や文化について考えるための大切なヒントが隠されている。

【 これらの記事を発想の起点にしてメルマガを発行しています 】
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 能率というのは、目的を果た... | トップ | 青春が甘美なのは、「粗さ」... »
最新の画像もっと見る

09-生物・生命・自然」カテゴリの最新記事