日本の近代史を批判したり弾劾したり嘲弄(ちょうろう)したりわが国を蔑(ないがし)ろにした論客は無数にいます。しかし、近代日本の達成を情(なさけ)容赦なく零(ゼロ)と決めつける、これほどまでに冷酷な裁定は、ひとり大塚久雄の比類なき独創でありましょう。1章でも述べたとおり、「近代科学成立の基盤たる合理性も見出されない」という峻厳きわまる断罪は、典型的な一例です。 . . . 本文を読む
世界最高の経営者と言われるジャック・ウェルチは、若い頃、吃音(きつおん)がひどく、なかなか治らなかった。彼が吃音に悩まずにすむよう、母が絶好の言い訳を考え出してくれた。「頭がよすぎるからよ」と、母はよく言っていた。「おまえほど頭の回転が速ければ、誰だって舌がついていかないよ」。ジャック・ウェルチは実際、長いあいだ、言葉がつっかえてしまうことをまるで気にしなかった。母が言うとおり、頭の回転が口の回転より速いのだとずっと信じていた。 . . . 本文を読む
「トップとシャッポは軽いほどよい。上等な帽子はかぶっていることを意識させないものです」 (蛇の目ミシン工業社長 嶋田卓弥)。この帽子のところは、神といってもいいし、リーダーと置き換えてもいい。上になる者ほど陰徳を積むという意味にもとれる。 . . . 本文を読む
日間賀島で開かれた先日のトイレ掃除に学ぶ会で、めいらくグループが発行する会報誌「百寿」のNo.5をいただいた。食品メーカーなので、食にまつわる話が出てくる。日本のことわざ「腹八分目に医者いらず」と同じような意味をもつ西洋のことわざが紹介されていた。皮肉やウイットがきいていて興味深いので紹介してみたい。 . . . 本文を読む
ペリーを動かした人物の一人が、オーガスト・ベルモントというロスチャイルド財閥の米国における代理人です。このベルモントの義理の父親がペリーなのです(ペリーの娘キャロラインと結婚)。そうしますと、ペリー来航は「日本市場を開放させよう」という国際金融資本家たちの意図にもとづいたものであることが窺(うかが)えます。 . . . 本文を読む
さて、こうして日本にもファシズムがあったと自ら認定するや否や、丸山眞男は、ただちに「日本のファシズムの社会的な担い手」の究明に着手します。おそろしく単純な有無を言わせぬ二分法によって、有罪者が摘発される一方で、無罪の判決を受けとる人たちが確定するという仕組みです。この場合は、社会を構成するさまざまな人間の当然な個人差は、いっさい問題にされません。十把(じっぱ)ひとからげに、特定の社会階層に属する人のすべてが狙い撃ちされます。 . . . 本文を読む
このようにカミを見ると、天皇が現人神(あらひとがみ)と呼ばれていたこともよく理解できよう。つまり天皇は神(かみ)の直系の子孫という意味で神(かみ)であるのみならず、すべての氏族の源(かみ)の上に立つ者(かみ)である。またいろいろなカミ、つまり大臣(かみ)とか頭(かみ)とか守(かみ)とか督(かみ)とかの上(かみ)の意味でもある。また、いっさいの先祖の霊(かみ)を祭る大司祭長(かみ)( pontifex summus )でもある。 . . . 本文を読む
プルタークは、知識の豊かさをほめられるよりは、むしろ自分の判断力を認めてもらいたかったのだろう。話を詰め込みすぎて読者を食傷気味にさせるよりは、もっと読みたいという余韻を残すのが目的だったにちがいない。どんなにすばらしい題材でもくどすぎるのはよくない。ということを彼は百も承知していたのだ。やせた貧弱な身体を、衣装を重ねて隠すように、問題を正確に把握していない人は言葉で埋め合わせしようと必死になるものだ。 . . . 本文を読む
親の庇護から離れて独り立ちしたいという願望はたいへん強いものである。しかし、子供を自分の独占物にしたり、子供の犠牲になることによって家族の関係が円滑にいっているような場合には、この独り立ちという自然な行為が家族に危機をもたらすことになる。 . . . 本文を読む
教養がなく財産の少ない人間でも、立派な人格さえ持ち合わせていれば他人に大きな影響を与えられる。それは、一回の労働者であろうと、議員のような要職に就いていようと事情は変わらない。 . . . 本文を読む
額(ひたい)に汗して働く姿は尊い。だがいつまでも額に汗して働くのは知恵のない話である。それは東海道を、汽車にも乗らず、やはり昔と同じようにテクテク歩いている姿に等しい。東海道五十三次も徒歩から駕籠(かご)へ、駕籠から汽車へ、そして汽車から飛行機へと、日を追って進みつつある。それは、日とともに、人の額の汗が少なくなる姿である。 . . . 本文を読む
女の人は朝起きるとすぐに、どんなへちゃでも顔の造作を直すために鏡の前で一生懸命、そらもう低い鼻ぶったたいたり、言っちゃすまないけど、いろいろとなさるでしょう。なさっていいですよ。けっして悪いとは言わない。それと同じように、心もやったらどうだい、心も。 . . . 本文を読む
しかし、わかったようでわからないのが「空(くう)」です。そこで、くどいようですが、もう少し空について学びつづけてまいりましょう。“奈良の大仏”さまで有名な東大寺の清水公照(しみずこうしょう)長老が、同寺を訪れた外人から「空(くう)とは何か」との問いを受けました。 . . . 本文を読む
中国に1号店を出す1年前、1991年に上海大学眼鏡学部の設立に出資を決めたとき、私は真っ先に永田家に足を運んだ。さわさんは既に亡くなれていたが、誰より先にご霊前に報告したかった。さわさんが教えてくれた「その国の人のための企業」という原点を、これからも見失わずにいたいと思っている。 . . . 本文を読む