電脳筆写『 心超臨界 』

悲しみは二つの庭を仕切るただの壁にすぎない
( ハリール・ジブラーン )

人間学 《 自らのための「人生ノート」――伊藤肇 》

2024-07-04 | 03-自己・信念・努力
電脳筆写『心超臨界』へようこそ!
日本の歴史、伝統、文化を正しく学び次世代へつなぎたいと願っています。
20年間で約9千の記事を収めたブログは私の「人生ノート」になりました。
そのノートから少しずつ反芻学習することを日課にしています。
生涯学習にお付き合いいただき、ありがとうございます。

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東京裁判史観の虚妄を打ち砕き誇りある日本を取り戻そう!
そう願う心が臨界質量を超えるとき、思いは実現する
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■『小樽龍宮神社「土方歳三慰霊祭祭文」全文
◆村上春樹著『騎士団長殺し』の〈南京城内民間人の死者数40万人は間違いで「34人」だった〉
■超拡散『世界政治の崩壊過程に蘇れ日本政治の根幹とは』
■超拡散『日本の「月面着陸」をライヴ放送しないNHKの電波1本返却させよ◇この国会質疑を視聴しよう⁉️:https://youtube.com/watch?v=apyoi2KTMpA&si=I9x7DoDLgkcfESSc』
■超拡散『移民受入れを推進した安倍晋三総理の妄言』
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文芸評論家の梅田晴夫が敗戦直後、先輩から原本のジャン・アヌイ選集を1週間の期限つきで借り、それを「筆写」した。相当な難行苦行だったが、結果はジャン・アヌイの精髄にハッキリ手を触れることができた。それまでの梅田は「筆写」などということはバカげたキザな所業だと思い込んでいた。ところが、これを契機として「文学を書き写すという作業のもつ大きな精神的影響力をしみじみと感じさせられた」と告白している。


『人間学』
( 伊藤肇、PHP研究所 (1986/05)、p86 )
第3章 応待辞令の人間学

◆自らのための「人生ノート」

ゲーテの一言からアンドレ・モロアを連想した。

「本を読みながら、ノートを傍らに置いて、覚えておきたいと思った意味深い葴言をそこに書きとめておくのは好ましいことである。何時か気持ちがふさいだ時など、これを眺めれば、書きとどめられた賢者たちの思索は、生きてゆくのを助けてくれるだろう」

もともと、生きた悟りや心に閃く真実の智慧あるいは力強い行動力は、けっしてダラダラした長ったらしい概念や論理から得られたものではない。

それは体験と精神とが凝縮している片言隻句によって悟るのであり、また、その原理原則を把握することによって実践するのだ。したがって、語録とか、葴言というものは、経験を積めば積むほど、教養が深くなればなるほど、身につまされてわかってくる「おとなの学問」なのだ。

「おとなの学問」である以上、漫画でもみるような調子でうわの空で読んだのでは、何年かかっても語録の真髄に触れることはできない。

そこで、精読し、筆写するということになる。

文芸評論家の梅田晴夫が敗戦直後、先輩から原本のジャン・アヌイ選集を1週間の期限つきで借り、それを「筆写」した。相当な難行苦行だったが、結果はジャン・アヌイの精髄にハッキリ手を触れることができた。

それまでの梅田は「筆写」などということはバカげたキザな所業だと思い込んでいた。ところが、これを契機として「文学を書き写すという作業のもつ大きな精神的影響力をしみじみと感じさせられた」と告白している。

たしかに外国文学を味わい得る実力を養うには、原文の筆写が最も手っとり早い。自分の好きな文章を一節なり、一章なり、根気よく、何度も何度も、くり返し「筆写」しているうちに、外国文の構造やニュアンスが、何時とはなしにのみこめてくるのである。

2・26事件で惜しくも凶弾に倒れた高橋是清は毎日、「ロンドンタイムズ」や「ニューヨーク・タイムズ」を克明に読み、必要な記事はノートに丹念に「筆写」した。

あまりに時間と手間とがかかりすぎるので、みかねた倅(せがれ)の是彰夫人が「私がスクラップに張りましょう」と申し出ると、「いや、それはありがたいけれども、スクラップに貼ってもらったんじゃ、それっきりになってしまう。こうやって自分で書いておくと、頭にしっかりと刻みこまれて参考になる」といって断った。

筆者にも、そういうノートが数冊あるが、その一部を抜萃してみよう。

● 天才だけが飛躍するのです。ただ、しかし、人間が絶えず天才であり、英雄であるということはむずかしいことで、ある時期に英雄であり、天才であるにすぎない。あたかも美女や美男が、ある短い時間だけがそうであるように……。そういう持論を僕はもっているのです。つまり、生涯を通じて、天才であり、英雄であるという人間はおそらくいない。肝腎な時に天才であったり、英雄であったりした人間が後世に残る大事業をするのです。
                        ――海音寺潮五郎

● 美しい行為は美しい言葉から生まれる
                           ――ゲーテ

● 足を踏んでいる者には踏まれている者の痛みはわからない。
                          ――鶴見俊輔

● 有名なのが名文か? いや、そうではない。君が読んで感心すれば、それが名文である。
                          ――丸谷才一

● 柳田国男は「史心」という言葉を残した。私たちのしてきたことが、どう歴史に組み込まれたか。そして、それは私たちに何を教えているかを、何時も問いかけてみるのは大事なことなのだ、と私はこの言葉を解釈している。
                          ――角田房子

● 友と話し合うことの本当の現実は、話し合っている時にあるのではなくて、別れてから帰る道で、さて、考えなければならない何が心に残り、刻まれたか、ということの中にある。
                      ――ドストエフスキー

● 私は、最もすぐれた女たちが、一人の才智ある男に感服するのをみたが、と同時に彼女たちはほとんど同じ言葉で大馬鹿者をほめていた。
                        ――スタンダール

● 嫉妬とは、自信のない人間、自分のうちに安定感をもたぬ人間の陥る精神のくせである。
                         ――亀井勝一郎

● 嫉心深き者は内争を生じ易し。与(とも)に交りを結ぶべからず。また、与にことを喋るべからず。
                          ――廣瀬淡窓

● 一流になる見込みのないことに手を出すな。手を出したら、一流になるまでやれ。
                          ――永井 隆

● タフでなければ生きて行けない。
  優しくなければ生きて行く資格がない。
                  ――レイモンド・チャンドラー

● わたしは延命の願をしました。
  まず、はじめは啄木の年を越えることでした。
  第二の願をしました。
  それは子規の年を越えることでした。
  それを越えた時、第三の願をしました。
  お父さん あなたの年を越えることでした。
  それは私の必死の願でした。
  ところが、それも越えることができたのです。
  では、第四の願は?
  それはお母さん あなたのお年に達することです。
  もしも、それも越えることができたら最後の願をしたいのです。
  それは世尊と同じ齢(よわい)まで生きたいことです。
  これ以上は決して願はかけませんからお守り下さい。

  〈啄木27歳。子規36歳。父42歳。母73歳。世尊80歳〉
                          ――坂村真民

● 自分より優れたる者を自分のまわりに集めし術を心得し者、ここに眠る。
                   ――アンドルー・カーネギー

● 私は同時に三つの本を書いている。本を書くことは私の運命だ。しかし、ゲーテと同様に少しでも静かな時をもって本を完成できたら、と思う。

あなたがたはゲーテが、その最後の著作を書き終えて、包んで紐(ひも)をかけたことを思い出すだろう。ゲーテはその時、こういった。

「今こそ満足だ。死を待つことができる」

これはゲーテが死ぬ2カ月前であった。
                       ――シュバイツェル

● 釈迢空は、自分の作品が文学碑として石に刻んで建てられることを厳しく拒絶した。残るべきものは、作品みずからの力で残るという自負と潔癖さの故であろう。
                          ――岡野弘彦

● 女房だろうと誰であろうと、人間を愛するためには、ある程度、嚙まずに丸のみにしなくてはダメだ。牛肉だって、あまりながく嚙んでいると、うまくも何もないカスになってしまう。
                          ――石川達三

● 「裸で寒くないようにするには、どうしたらいいでしょう」というと、「からだ中を顔にすればいいんだ」という話があるが、私は、できることなら、生活のあらゆることを趣味としたい。小説を書くことも、私にとっては趣味なら、風呂場のタイルを磨くことも、スカートの丈をつめることも趣味でできるのである。そうすれば、生活全体が遊びともなり、同時に、かなり本気の、うまくゆけば、生命を賭けるという状態の一歩手前くらいの厳しい仕事にもなりそうである。
                          ――曾野綾子

● われ男(お)の子 意気の子 名の子 剣(つるぎ)の子 詩の子 恋の子 ああもだえの子
                         ――与謝野鉄幹
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