駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

冠動脈が閉塞すると

2022年04月25日 | 町医者診言
           

 心筋梗塞は今もかなりの確率であっという間に人の命を奪う怖い病気だ。心筋梗塞の病気の首座は冠動脈にある。冠動脈というのは心臓自身に血液を送る血管で大動脈に比べたら細く短く、東名高速に比べたら県道程度のものだ。何故、そんな細く短い血管が閉塞したくらいで死に至るかと言えば、全身に血液を送る心臓自身も血液が必要でその供給をしているのが冠動脈だからなのだ。冠動脈に動脈硬化が起こり、血流が流れにくくなると狭心症になり閉塞すると心筋梗塞になる。
 こうした構造がしばしば重大事故の陰に隠れている。原子力発電所の冷却水も同様で莫大な電力を発電する原子炉には過熱しないように冷却水が必要でそれはポンプで供給されている。万一ポンプが動かなくなった時には非常用ディーゼル発電機で動く電動ポンプが備えてあるのだが、福島原発では置いてあった位置が悪く海水に漬かって動かせず原発のメルトダウンが起きてしまった。この小装置軽視が数兆円を越える損失を生んだ。
 実は同種の問題はリニア新幹線にもあるのだ。リニア新幹線には超伝導が使われている。絶対零度近傍では電気抵抗がゼロになり電磁誘導で磁力を利用する際に熱が発生しないので熱でエネルギーをロスせず好都合なのだ。しかし絶対零度近くまで冷やすには液体ヘリウムが必要でこれが実は高価なのだ。ヘリウムはアメリカで一リットル200円くらいなのを日本は4-5000円出して購入することになるらしい。それとリニア新幹線が在来の新幹線の3-5倍の電力を使用することはどういうわけか問題として取り上げられない。超伝導は絶対零度近傍から少しでも温度が上がると失われて(クエンチという)、リニア新幹線は浮遊力を失い真っ暗なトンネルの中で火花を散らして急停車し飛行機の着陸失敗と同じ事が起きる。
 リニア推進派の人達はクエンチは起きないことにしており南アルプスの自然も破壊されないことにしている。運良く十年クエンチが起きなくても震度五以上の地震が起きればクエンチと同様のことが起きるだろう。東北新幹線の脱線事故を見れば直ぐ分かる。
 リニア新幹線推進派の人達は二十一世紀最大の国内投資事業の視点でしか考えていない。経済成長に利して儲かる、景気の良い話はどんどんやろう、反対する奴はケチを付けているだけだと無視しようとしている。科学的な考察が欠落している。
 百万歩譲って、一体運賃はいくらにするつもりだろう。そんなに早く移動する必要のある賢者や重要人物は居ない。顔が見たければオンラインがある。新幹線は十分速いし、頭を冷やす時間も呉れる。超特急で阿呆が飛び交っても愚論愚策が湧き出るばかりだ。
コメント (2)
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