駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

回復は六割程度

2020年09月08日 | 診療

           

 

 十五年ほど前、無理な回復運転で痛ましい大事故があった。医院には回復運転はないが休み明けには患者さんが増えるので、一種の回復運転かもしれない。ではどれくらいの患者さんが、本来やっていた時に比べて休み明けに来院されるかというと大体六割というところだ。休み明けはずいぶん忙しく八割くらいの患者数が回復できている気がするが、実際には六割程度だ。だから長く休んだ時は売り上げの落ち込みを覚悟しなければならない。八月はもともと患者数が減る傾向があり、そこにお盆休みを取るので例年10-15%の売り上げ減少がある。よく商売で二八という。芝居小屋が二月と八月はお客さんが減るということから出てきた言葉らしいのだが、寒い時期と暑い時期には客足が鈍るようだ。勿論、二月や八月に売り上げの落ちない業界もあるだろうが、医業にも二八がある。と言っても夏冬ではなく、内科は八月が暇皮膚科は二月が暇というように、診療科によって違い、年一回の落ち込みで済んでいるようだ。

 本来受診するはずだった患者さんがどこへ行ったかというと、自然に良くなって受診する必要がなくなった、他の医院を受診した、そして都合が悪かったりさぼったりで遅らせたの三つに分かれるようだ。高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの慢性疾患は自覚症状がないことが多いので、中には一週間遅れになる人もおられる。そうした患者さんにはお薬はきちんと飲んでくださいとお願いしている。

 現役で仕事をされている患者さんなどは通院が大変なのはわかるので、自己管理のきちんとできる人成績の良い人には長期投与をするようにしている。そして仕事や天候で来れない時のために手持ちに一週間くらい余裕のお薬を持つように指導している。

 自分自身も四種類の薬を二十年飲んでいるが、別に自覚的に変わりはなくとも一日でも飲まない日があるとどうも気持ちがすっきりせず、飲まない日は年一回あるかないかだ。大多数の患者さんは何年も薬を飲んでいると習慣になり、私と同じように薬がないと落ち着かなくなりきちんと飲まれるようだ。きちんと飲めていた人が忘れるようになるのは認知症の始まりのことも多いので見逃さないようにしている。

 薬は自覚しにくくてもちゃんと効いており、飲まないでいると検査データに異常が出てくる。昔の人が言う通り、病気の治療も継続は力なのだ。

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