一方の話だけを聞いて沙汰をすな、と篤姫が注意していたから、女医さんにも言い分はあるだろうが、Mさんは憤慨して訴えたことだ。
X総合病院の皮膚科の女の医者は何だ。診察中一言も喋らなかった。じろっと病変を見て、表面からサンプルを取って顕微鏡で見ること一分、ちょちょっとカルテを書いて二分、この間質問も説明もなく、一言もしゃべることなく診察はお終い。受付で処方箋を貰い薬局に行ったら「水虫ですか?」と聞かれた。驚いて「えっ」と言ったら黙まってしまい、塗り薬を二本呉れた。説明書を読むと皮膚真菌症らしいのだが、こんな少しではすぐなくなってしまう。「先生、別の皮膚科を紹介して下さいよ」と憤然としている。
あり得ることだ。尊大な感じの爺さんの見たくもないただれた皮膚を見せられ、なんだこの女の医者はとじろじろ見られて、何も言いたくなかったのかも知れない。それでも八割方、Mさんの憤慨は理解出来る。どうしてそんな診察がまかり通るのだろう。
本人にそれでは不十分という自覚がない、そして誰も注意できない存在なんだろう。彼女の言い分を聞かずに断罪は申し訳ないが独善不遜は臨床医には不向きと申し上げたい。