手ごろな大きさの皿があれば、どのような用途にも便利と思い、
焼き上がりの大きさ、約25センチ~26センチの皿の製作を行った。
粘土の塊を、「 菊もみ、たたきもみ 」の順に粘土の固さが均一になるよう、丁寧にもみ、
ロクロに粘土をのせ土ころしを数度行った。 何だか恐ろしい呼び方だが、これを行わないと
粘土がいうことを聞いてくれないのである。 この作業を行いつつ、中心軸を決めていく。
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土ころし 物騒な呼び方の作業 |
皿を作ることは難しいが、壷を作るとなると更に土ころしを何度も行わなくてはならない。
それを怠ると土を上の方に引き上げることができないのだ。 当然ながら壷は作れない。
その点、平皿はそれ程も気を遣わなくても粘土が横に伸びてくれるから、幾分か気楽でもある。
丁寧に5、6回の土ころしを行ったあと、
いよいよ広げる作業へと移っていく。
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少しづつ広げる |
回転している粘土と手との摩擦が起こらないよう、同じ土で作ってある 「 どべ=泥土 」をつけ、
中心に指で穴を開け、ゆっくりとそのままの状態で横へと広げていく。
急がず、慌てず、少し広げ、ドベをつけて又広げる、そのようにして希望の大きさまで広げる。
いくらゆっくりと少しづつ広げても、指跡はどうしても残ってしまう。
指跡を残す目的のデザインならば、このまま仕上げの作業に移るのだが、
今回の作品は、見こみ(内側)にスッキリとした線文を掘り込むデザインなので
木べらを使って平に仕上げる必要がある。
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木の道具 へらを使って指跡など消す |
どの仕事も同じことが言えるが、道具は自身の使い勝手のよい物、
手に馴染むものを作ることが大切。
「 筆を選ばず 」のことわざもあるが、やはり道具は大切なもの。
焼物の世界に入ってから先輩諸氏の木べらを参考に、すべて自分の道具は作ってきた。
木べらについて言えば盃から始まって壷まで、何百種あるだろう。
随分と作ってきたものだと、それらを収めてある箱を眺めてフーッと溜息。
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寸法を測る |
さて、木べらで内側の指跡や余分な粘土もとれ、次は寸法を測ってみる。
竹を使った、トンボの形の寸法測りもあるが、今回は直径だけ吟味することにし、
鉄で作った半円形の弓で大きさを測ることにした。
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なめし皮で ふち周りをキレイに仕上げる |
計算通りに仕上がった浅めの皿、口(ふち)周りをキレイに整えるために、
鹿のなめし皮を使っての作業。 この皮も思い通りの品が手に入らず、
随分前に買ったものを今も大切に使っている。
長く使用しているために所どころ穴さえ開いている。
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焼き上がりの大きさ 25センチ大の皿 |
このような作業を行って出来上がった皿。
作りたての皿なので、ヒビが入らないようにゆっくりと水分を飛ばしていく。
触ってもゆがまない段階になってから、最初に思い描いた線文を彫りこんでいく。
彫りこみが完了したら、次は高台の削りを行う。
彫りこんだ線文の中に釉薬が流れ込み、品の良い皿に焼きあがってくれることを願い、
美しい青磁釉薬を施す予定にしている。
料理を盛ってもよし、果物をもってもよし、何を盛っても邪魔をしない程度の文様を彫りこむ。
使わないときは飾ってもいただけるような、スッキリとしたデザインに焼き上げようと思う。