10年ほど前の冷たい雨の晩秋、
堤防を歩いていたら前の方に白いかたまりが。
何だろうと近づいて行ったら、かわいい子猫。
雨が降っていたのに濡れていなかった。
きっと誰かが捨てていったのか、それとも迷ったか。
でも考えられない。人家はずっと向こうだし。
どうしよう、家にはトラがいる、きっと誰かが見つけてくれる、
そう思って歩き出したら、必死にあとをついてきた。
その姿をみて、このままにして置けなくなった。
寒空に雨、抱っこして胸の中に入れて我が家へ。シロと名付けた。
家に連れて来た時から、シロは家の中に入ってくれた。
勝手口にはトラの家を作ってある。互いにけん制し合っていたが、
次第に仲良くなった。どういうわけか、
トラも私が触るのを拒まなかった。
1年が過ぎる前、かわいそうだったが避妊手術を受けさせた。
人間と異なって動物の回復力は速い。
いつも車の上で遊んでいた。
夜には、この寝姿。
翌年の秋、シロちゃんの姿が急に見えなくなった。
たった60軒余りの小さな町内、くまなく探したが見つからず。
もしや交通事故?そう思って道路も探したが痕跡はなかった。
姿を見たら教えてと、町内の方々にお願いした。
三日、十日、ひと月、三か月、とうとうシロちゃんは現れなかった。
そしてこの前からトラの様子が変。
朝起きてみると、寝床や周辺が荒れている。
他の猫が来て、ケンカでもしたのか?
そう思っていた。
工房のドアも少し開けてあり、
トラがいつでも寝られるようにしてあった。
先日の朝、工房の中のトラに声をかけても返事がない。
中に入ってビックリ!
この足跡、アライグマの足跡。
ドアの隙間から入ってきて、トラが逃げ出したのだろう。
トラは昼間は工房の中に入って寝ているが、
夜はどこかに避難して寝ている。
雪が降っているのに。
シロが居なくなって数か月経った、ある日の夜、
トラが威嚇の声を上げていた。
また猫同士のケンカ、か、
そう思って外に出たら、
アライグマ。
もしかしたら、警戒感のなかったシロ、不幸があったのかも。
トラは前右足が折れているが、片足で逃げている。
あぁ、どうにかならんのか。