創作日記

 青磁作品を中心に創作しています。
  陶芸作品が出来るまでの過程を、
   日常の暮らしを通して紹介しています。

釉薬がけ

2009年02月25日 | 日記

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   工房の中
  


尻に火がつく、と言ったら大げさかも知れないが、千葉三越個展が近づき焦り始めてきた。
三越のホームページを開き、催しの欄を見てみると、すでに個展案内が記載されている。

まだ作れる、まだ充分にアイデアを形に出来る、そう思いつつ今日に至った。
けれど個展案内が三越のホームページに載っているのを見ると、やはり焦り感が出てしまう。
加えて個展案内状も刷り上ってきた。

それなりに作品は揃ってはいるものの、もっと良いものを、品格のあるものをと作ってきた。
しかし、いくらなんでもいい加減仕上げを行わなくては、と思いつつ、ようやく踏ん切りもつき、
窯焚きの準備に入った。

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   窯変鉄耀釉薬の施釉


慎重に、そして丁寧に窯変鉄耀の釉がけを行った。
超高温で焼き上げる窯変鉄耀釉薬。 釉薬が厚く掛かっても薄く掛かっても
宇宙の星々のような複雑な結晶は生まれない。 
加えて炎の当たり具合や、窯の中を流れる炎を上手く調整しなくては結晶は出ない。

今日まで数え切れないほどに窯変鉄釉、窯変鉄耀釉薬を施した作品を焼いたが、
これ!っと満足した作品が焼きあがったことは一度も無かった。
きっとこうなると予測して釉薬がけを行い、炎がスムーズに流れるように窯詰めを行っているが、
窯はそうたやすく思い通りに言うことを聞いてくれない。

ところが窯変とは奇なるもので、
自分の予想とは全く逆の、素晴らしい結果を出してくれることも多々あるから不思議。
炎の芸術、まさにその名の通りの焼き上がりとなって窯から出てくるときほど、
これほど嬉しく幸せなことはない。

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     ロクロ場の窓の外




   イトヒバの常緑樹が美しい


    右の枝木は 山ボウシ


外を眺めつつ、思いもかけない素晴らしい焼き上がりとなって窯からでてくるようにと、
心込めて窯変鉄耀釉薬がけを行った。
例年のこの時期、庭木のイトヒバにもふんわりと雪が積もっているのだが、
今年の冬は雪が少ないせいか、常緑樹の緑が美しい庭の景色である。


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ふろふき大根

2009年02月20日 | 日記

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   玄関脇の ドウダンツツジ
  


強烈な寒波が南下し、雪の無い今年の冬に数度目の積雪。
積雪、と言っても大した量でもなく、5~8センチ程うっすらと積もっただろうか。
朝日を受け、キラキラと輝きうつくしい。

夜中に降ったらしく、先日来の大陸からの黄砂で薄汚れていた庭木の葉っぱも、
真っ白な綿のようなやわらかい雪にすっぽりと包まれ、何だかとても神々しく見える。

明日焚く素焼き作品の準備を整えつつ、庭先のユズが気になっていた。
薄く作った盃の線刻入れを慎重に済ませたところで、庭に出てみた。
朝の雪がまだ解けずに残っている、加えて鎮守の杜の上の空は濃い水色。

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   庭のユズ


このユズ、大きさはピンポンボールをひと回り、ふた回り大きくした種類。
十年ほど前、実家の庭を整地するとのことで、急いで掘り起こし我が家に植えたユズである。
毎年百個以上も実を付けるユズだったが、素人の私が掘り起こしたものだから
根付が良くなく、中々実を付けてくれなかった。
半ば諦めていたユズだったが、この冬初めて7個実を付けてくれた。

実家のユズの木の横には何百個もたわわに実のなる、私の背丈ほどの金柑もあったが、
我が家の庭には木がビッシリと植わっていて、これ以上植物を増やせなく、
とても残念だったが金柑は諦めた。
細い枝が折れそうなくらいに、とても甘い実がなる種類だったが仕方がなかった。

金柑は諦めたが、我が家に植えてから長い間実らなかったユズが初めて実を付けてくれ、
きっとこれからは毎年少しずつ数が増えていくのではと期待をしている。
これ以上寒さに当たると雪焼けをおこし、ユズ肌が汚くなってしまうので採取した。

雪を払いのけたら、案の定いたんでいた。
キレイに洗い、外皮を薄く剥いでひとつかみを細切りにし、残りはみじん切りにして冷凍。
わずかな量だが、新鮮なままなので、いつでも使うことが出来る。

Photo_3

   ふろふき大根




   白釉草紋皿

   約24センチ角

ユズの冷凍保存と、今日使う分を小皿に入れ、
秋に収穫してあった大根、水分が抜けないようにとポリ袋に詰めて保存してあったものを
一本取り出して調理し、コトコトと時間をかけて軟らかく煮詰めた。

料理の下準備が出来たところで再び工房に入り、
明日の素焼き用の作品を窯に詰めた。
午後から天候が崩れてきたが、明日は穏やかな日になることを祈ろう

さて、窯詰め作業中にすっかり軟らかく煮えた大根、
次は我流の田楽味噌の調理。 砂糖を使わないので、白味噌と少々の蜂蜜を使った。
とろみを出すため、邪道かもしれないが本葛も少量使った。
程よい甘さに仕上がった田楽味噌、ふろふき大根に、とろ~りとかけ、
仕上げに細切りにしてあった、収穫仕立てのユズを添え、ふろふき大根の出来上がり。
さて、今晩は日本酒、それとも黒糖焼酎でも。


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酒盃

2009年02月15日 | 日記

いつものことだが、あと少しで個展、という時になって作品の構想が次々と湧いてくる。
もっと早くアイデアが浮かんでくれれば焦ることもなかろうに、といつも思ってしまう。

酒、アルコール類はとても好きだが、実のところアルコールに弱い私。
アルコールを分解する酵素が無いのか足りないのか、ほんの少しで酔っ払ってしまう。
しかし、どういう訳か種々の飲み物の良し悪しが分かるから不思議。

今月に入ってから日本酒を飲む機会が増えてきた。
うまい酒、反面これはどうも、と思ってしまう酒、その時々で種々の銘柄をいただくが、
酒の味も大切だが、器が気になってしょうがない。  特に外で飲む時にそれを感じてしまう。
せっかくの芳醇な酒が、つまらない器で味が半減してしまっている。

表現はよろしくないが、大酒飲みではないので、
せめて持つ手に馴染み、うまい酒が更に美味くなる器をと思い、作ってみた。

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   輪花盃
  

スッキリとした輪花盃、少し深めに作り、ぐい呑みとは一味異なった趣に仕上げてみた。
最初に見本を一個作り、乾いた段階で唇に当て違和感があるか確かめてみた。
輪花の部分が邪魔をするようにも見えるが、うまい具合にピッタリと唇に当たってくれた。

構想では白磁で焼き上げてみたいと思っている。
五輪花、六輪花と二種作り、温かみのある白磁に仕上がればと願っている。
味わい深い酒類ならば、あえて何を呑む時に使えばいいかと迷わなくても充分に耐えうる器、
そう思い作り上げた。

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     盃類

大物を作りつつ、ぐい呑み、盃の事も考えていて、ようやく何種類か作りあげた。
小さな作品だが、とても気を遣う作品でもある。
うまい酒が一段も二段も美味く感じるようにと思いを込めた。

コップ酒もたまにはいいが、良い器は至福のひと時を与えてくれるに違いない。
ひとりで呑む時も、気の置けない人と呑む時も、この器ならばピッタリ、そう思っている。

向こうの盃にはサラッとした文様を彫りこんでみようと思う。
アルコール類を入れたとき、ふわっと浮かび上がる文様が似合うはず。
心を休めてくれ、楽しいひと時を醸しだせるような作品になるよう、心込めよう。


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うつろい

2009年02月10日 | 日記

先週の日曜夜、工房でロクロを回しつつ何気にラジオを聴いていた。
9時半過ぎ、チャンネルをNHK第二放送に切り替えた途端、尾崎先生のお声が流れてきた。
えっ? 和やかな雰囲気の中で 「 源氏物語と香り 」 について講演されていた。

途中から聴いたので内容が中途になってしまったが、とても分かりやすく解説されていた。
そういえば鎌倉芸術祭の展示会の前に、名古屋で講演をされていたことを思い出した。
その文化講演会の録音が先週の日曜夜9時からNHK第二で放送されたのだった。
テレビの 「 美の壷 」の放映日はお聞きしていたが、文化講演会の事は知らず、
初めから聴くことができなく、残念!

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   憩いの森
  

今日もラジオを聴きつつ仕事をしていたら、アナウンサーの会話で、その通りと思うことがあった。
「 こんなにも雪が降らない冬は嬉しいけど、何だか怖い気もする・・・」 と。
確かに生活する分には雪の無い冬はとてもありがたいし、何をするにしても楽である。
けれど年々気候に変化が出てくると、「 雪の無い冬っていいなあ 」などと、
のん気なことを言っていいものかと、心配も増してくる。

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     新しくなった 鏡見橋

作品作りと用事を済ませ天気も良くなってきたので、いつもの憩いの森に出かけてきた。
大正、昭和初期の民家が移築され、万葉集を書き記した木板が多々ある森、
突如に現れたごとくの真新しい 「 鏡見橋 」。  なぜか違和感を感じてしまった。
侘び寂びが漂う憩いの森、古材を再利用した方が風情を醸し出せるのにと思った。

ラジオの中の会話ではないけれど、昨年は雪があって憩いの森を歩くことは出来なかった。
雪が少ないと言うか、雪の無い今年の冬、憩いの森は全く冬を感じられない。
渡り鳥の姿も少ないように感じた。 いつもはビッシリと水面に浮かんでいるのに
目で数えられるほどの渡り鳥、この現状は尋常ではないように思えた。

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    ミズバショウと

       山ガエルの卵

さまざまなことを考えながら歩き橋を渡りきると、目の前にミズバショウが植わっている水溜り。
この前来た時には見かけなかったカエルの卵、狭い水溜りの中にいくつもあった。
いつ生んだか定かではないが、この時季には早いような気もした。

このまま暖かい日が続けば、数日以内にオタマジャクシが見られるかも。
オタマジャクシはカエルの子、は分かるが、なぜ「 オタマジャクシ 」という名が付いたのだろう?
ふ化した姿が調理に使うオタマに似ているから、そう名付けられたのか? 素朴な疑問である。

種々の木々が植わっている 憩いの森。
その木々には関連した万葉集の短歌が添えられている。
普段気にすることも無く脇を歩いているが、尾崎左永子先生の文化講演会をラジオで聴き、
改めて、いにしえ人が歌った短歌を読みながら、憩いの森の散策を終えた。


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越川さゆり・和音 サロンコンサート。

2009年02月05日 | 日記

飽きもせず家と工房を何度も行き来し、
それでも足らずに庭を見て回り、野菜や春咲く花々の様子を眺めたり、
そのようにして構想が湧いてくるのをひたすら待ち続けていた日々。

そろそろ頭の中で形がハッキリし始めたころ、
ミサ曲の練習の時、いつも伴奏をしてくださる越川さゆりさんから
お嬢さん、越川和音さんとデュオコンサートを催しされるとお誘いいただいた。

Photo

   ? 演奏曲目 ?


   亜麻色の髪の乙女

   月の光

   美しき夕べ

   白鳥

   タイスの瞑想曲

   エチュード  作品25の1

   ノクターン 作品32の1

   ノクターン 作品27の2

   宮城道雄  春の海

   チェロ・ソナタより 第3楽章


雪の季節なのに、空からは細かい雨が降り続いていた土曜午後、
金沢の中央、片町あたりは観光客であふれていた。
その一角にあるビルの3階がコンサート会場。
演奏される曲目のパンフレットをいただき、なじみのある曲目があることに何となくホッと。

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 ピアノ ・ 越川さゆり


 チェロ ・ 越川和音

越川さゆりさんの御挨拶から始まり、演奏される曲目の説明を頂いた。
また、お嬢さんは夜行で土曜日の朝、金沢に帰られたとのこと。
学業とともに各地で演奏会も行っていて、充実した忙しい日々を送っている和音さん。
演奏技術の修練はもちろんの事、聴いてくださる方々の前で演奏することは至極大切で、
聴衆者の反応がじかに伝わり、これからの彼女にとって大変有意義なことと思っている。

聴いてくださるすべての人々に感動を与えることも大切な要素だが、
たった一人でもいいから、その人の心深くに和音さんの音色を届けることができれば、
最高の、素晴らしい演奏者といえる、ぜひそのようなチェリストになって欲しいと願いつつ、
和音さんの奏でる、心に響く演奏を聴かせていただいた。

私は、越川さん母娘の演奏会を聴くのは今回で3度目。
今回はサロン・コンサートということもあって、すぐ目の前でお二人の演奏を聴かせて頂いた。
さすがお母さんとお嬢さん、お互いを気遣いつつピタッと息も合い曲目は進んでいった。

お二人の世界にいざなって頂き、あっと言う間に1時間が経過してしまった。
いつもながらの、越川さゆりさんの大きな愛で聴衆を包み込むピアノ演奏。
和音さんの若々しく、エネルギッシュなチェロの響き。
更に研きをかけ、大きく世界に羽ばたいて欲しいと願い会場をあとにした。

家に帰り着き、サロン・コンサートの余韻にひたりつつ、
あなたの、あなたの心に届くようにと作品のデザインを描きだした。

● 越川和音 ・・・東京藝術大学音楽学部器楽科4年在学中。
           今春より、東京藝術大学大学院音楽研究科修士課程に進学予定


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