再びロクロ場を徹底的に掃除し、
青磁釉薬を掛ける準備を行った。
釉薬の中にゴミなどが入らないよう、細心の注意を払った。
ほんのりと肌色をしている青磁釉薬、青磁の原料は酸化鉄。
酸化鉄、平たく言えば錆(さび)。
何も分からなく無我夢中で本を参考に試験を繰り返した若い頃、
青磁の原料は酸化鉄と書いてあり、原料店から仕入れていた。
参考書通りに調合し、高温で焼いても青い色が出なかった。
ロクロ修業と同時に始めた釉薬研究、
指導してくれる先生もなく、ひたすら本を読み漁った。
乳鉢でゴリゴリと調合することが毎晩の日課だった。
嫌になる位の調合を行ったが、どうしても色が出なかった。
何が間違っている? 参考書通りに行っているのに、と頭を抱えた。
そして閃いた。
青磁の青色を出す素(もと)、錆=酸化鉄を作る必要がある、と。
化学はサッパリわからないし、超苦手。
どうしたら酸化鉄を、純粋な錆を作ることが出来るか、
試行錯誤を繰り返し、ようやく私の手で錆を作ることが出来た。
それがこのタンクの釉薬に調合してある酸化鉄である。
酸化鉄を加える量は、ほんのわずか、100gに対して耳かき1杯ほど。
多く入れれば青磁色が濁る。少なければ色が出ない。
錆は作れたが、調合で何度もつまづいた若い頃。
数日、穏やかな天気が続き、トラも工房前で日向ぼっこ。
ゴミが入ったら困るから、と、工房前でトラの相手を。
気持ちいいのか、ゴロゴロと転がって、
ゴロゴロと喉を鳴らすトラ。
そして甘噛みを。
先日まで、雨が降り出すと雷が鳴りだしていた上空、
堤防の歩きをしたかったけれど、やはり雷に遭遇したくなかった。
ようやく薄曇りになり堤防へ出かけた。
春はどこぞ、とあたりを見回しての歩き。
小さい春見っけ!、オオイヌノフグリ。
やっと咲き出してくれた小花、
その傍らにはピカピカ光る、黄色の外来植物。
もうすぐ春はすぐそこに。