創作日記

 青磁作品を中心に創作しています。
  陶芸作品が出来るまでの過程を、
   日常の暮らしを通して紹介しています。

「シロ」への思い

2009年05月30日 | 日記


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先日まで満開だった 「 エビネ 」、 季節の移ろいとともに、今は葉が勢いを増してきた。
エビネの咲いている場所は、私がいつも居るこの部屋の窓ガラスの外。
手水鉢の横に植わっていて、毎年その姿をめでることが出来る。

Photo

     トラとエビネ


仕事をしながらも庭の雑草が生い茂ってきていることが気になりつつ、
仕事の手を休め、エビネの花が咲いているところの草むしりをしていた。

「 ニャ~ン 」、ん? トラが体をすり寄せてきた。
シロが居なくなってから寂しくなったのか、トラがこれまで以上に私に寄ってきている。
たった一人ぼっちになった、トラ。 私が庭に出ると何処に居たのか、必ず鳴きながら近づいてくる。

思えば去年の今頃、同じ状況で草むしりをしていたら、
シロがまつわり付いて、草むしりどころでなかったことがあった。
その時の写真がこれ。

Photo_2

   シロとエビネ


いつも家の周りの何処かに居たシロ。 ある時はトラと一緒に昼寝をしていたり、
トラも妹が出来たのが嬉しかったのか、いつも毛づくろいをしてやっていた。

Photo_3

    ハーブ畑の
      トラとシロ


エビネの季節が終わりを告げる頃、前庭の畑ではハーブが種をつけ始め、
その横に植えてある野菜棚の手入れも始めていた私。
この時ばかりはどちらが先に私に寄りそうか、にらみ合いをしていた。

確かトラは14、5歳。 シロはまだ一歳くらい。
力ではとてもトラにかなわないシロだか、元々人間嫌いのトラは途中で諦めて、
何処かへ行ってしまっていた。
そのトラの後姿を追うシロの様子が可愛くて、畑仕事の手を何度も休めていた。

Photo_4

   ハーブの中のシロ


可愛いシロが姿を消してから随分と月日が経過してしまった。
なのに、いまだにシロのことが忘れられない。
忘れられない、と言うより、信じられないのだ。

シロの姿を求めてどれほど探したことだろう。
町内のネコを飼っている人にはシロの特徴を話し、もし見かけたら教えてと頼み、
もしかしたらと思うところも、そして隣町も徹底的に探した。

最悪、事故の事も考え家から200メートル先の自動車道も見てみたが、事故の形跡も無し。
町内の道にも事故に遭ったネコの姿は無し。   シロの身に一体何があったのか。
シロは我が家に来てから人見知りするようになった。 玄関のチャイムの音が聴こえようものなら、
一目散に隠れてしまう。  そのようなシロは誰かについて何処かに行くとは考えられない。

仕事が終わり夜テレビを観ていると、頻繁に動物を取り上げた番組が放映されている。
ほのぼのとした場面もあれば、目を覆いたくなる場面も出てくる。
その都度、シロの無邪気な姿やしぐさがいやおうなしに頭をよぎる。

もし、万一どこかで生きているなら幸せであってほしい。
不幸にも命を落とすことがあったとしたなら、苦しまずに旅立ったことを願う。
そんなことを思いながら目頭が熱くなり、つい涙がこぼれてしまう・・・。


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沢庵の煮物

2009年05月25日 | 日記


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五月の小松、と言えば、今では全国的に有名になった祭りがある。
豪華な山車の舞台で行われる、子供歌舞伎の小松お旅祭り。
それに協賛して小松美術作家協会展も、14日~19日まで開催された。

小松美術作家協会に所属している私、今回は青磁線文壷を出品した。
小松、と言うか、石川県は九谷で有名な焼物の産地、
色鮮やかな九谷焼きの中に、私の青磁作品がどのように映るかと、いつも気がもむ。

地元では作品の発表を殆どしていない私、
このような展示会を通して、地元の方々に作品を知っていただくのも良い機会。
というのも、私が住んでいる六十数軒しかない荒木田町、
町内のほとんどの方々は、私の仕事はロクロ師、素地師だと思われている事実である。

九谷焼きの産地と言えば、やはり絢爛豪華な上絵の九谷焼き。
その素地を作っているロクロ師の存在は、決して表舞台に出ることはない。
過去も現在も、ロクロ師はひたすら粘土をこねて作品を作り出している。
しかし、そのロクロ師も指折り数えるくらいしか居ない現状である。

Photo_3

     沢庵の煮物


そのような中、昨秋漬け込んだ沢庵(たくわん)の発酵がすすみ酸っぱくなってきた。
母が漬け込んだ沢庵、重石を持ち上げられないと言うものだから、樽をすっかりキレイにした。
酸っぱくなった沢庵を薄く切り、真水にさらして塩気を取り除き、濃いだし汁で煮詰めた。

これは北陸だけの食べ物かどうかは分からないが、この地方では沢庵の煮物、と呼ばれている。
近年、「 たくわんの贅沢煮 」 としてスーパーなどでも売られているが、値段の高いのには驚き。
確かに手のかかる面倒な料理の一つだが、それにしてもほんの数枚しかないのに値段が不釣合い。

「 塩抜きが終わったよ、」と母。 濃いカツオだしを作り、やわらかくなるまでコトコトと煮込み、
味付けは酒、醤油、味醂の薄味できめた。  もちろん、タカノツメも忘れずにいれて。

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   青磁掛け分け
       木の葉皿


   白磁輪花ぐいのみ


   ヒョウタン形はし置き


昼間は20度を超える暖かさだが、夕方から急に冷え込んでくる。
花冷えならぬ、さつき冷えだろうか。 梅雨冷えの言葉はあるが、五月冷え(さつきびえ)は果たして。
冬の間使っていた灯油は、とうの昔に済んでしまい、肌寒い夜はエアコンをつけている。

そして今日、久し振りにロクロ師、K師を訪ねた。
「 堂前ちゃん、個展どうやった? 」と心配してくれた。
「 お陰さまで皆さんに支えていただき、こんな大変な状況だったけれど成功した、」と言うと、
「 良かったなあ、どうやったか心配しとったんや、」とニッコリ。

個展前に訪ねた時にはK氏一人がロクロを回していたが、今日は状況が違っていた。
二十歳を過ぎたくらいの青年が、K師の隣でロクロを回している。
聞けば、京都の訓練所で勉強してきたとのこと。 むずかしい香炉を丁寧に作っていた。

もしかしたらK師のロクロ技術を継承してくれるであろう若者もあらわれ、
K氏には何よりの後継者ができ、私までもが嬉しくなってしまった。
これから先の九谷焼き、このような青年が誰にも邪魔されずに表舞台に出られるよう、
シッカリとした制度を作らなければ、そして私もその手助けをしなければと思った。

何となく、心の中があたたかくなり、
酒の好きなK師は美味い酒を飲んでいるであろうと思い、
私も沢庵煮(たくわんに)を肴に、ほろ酔い気分で今宵を過ごしている。


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五月晴れのもと

2009年05月20日 | 日記

爽やかな風渡る五月の昼下がり、
能登海浜道路は思ったよりも車が少なく、
道路沿いのニセアカシアは白い花が満開の頃を迎えていた。

アカシア、と言えば蜂蜜をすぐに連想してしまう。
以前、純粋なアカシアの蜂蜜をいただいたことがあったが、誠に香り豊かで味も濃厚。
車窓を飛び去っていくアカシアを見つつ、今一度あの頃の蜂蜜を味わいたいと思った。

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   石川県志賀町


    ヴィトレの丘


約一ヶ月前に訪れたヴィトレの丘、桜が満開だったが、
今はすっかり緑に包まれ、若葉が擦れ合うサラサラとした音が何とも心地良い。
天気も良く、広く大きな窓から入ってくるお日様の光が暑いくらい。

今回は個展と個展の間に陳列していただく作品を持参した。
昨秋の作品とはガラッと趣を変え、変化の富んだ作品をご覧頂くことにした。
もちろん青磁は主体なので、大きな青磁壷をドンと置いて頂き、
窯変灰釉壷や窯変鉄釉壷の珍しい発色した作品を陳列させていただいた。

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      「 プランタン 」

    白桃と赤スグリのムース
   


一仕事が終わり、マスターが淹れてくれたコーヒーを味わいつつ、
少しばかり甘くて美味しいケーキをほんの一口。
甘さを控えたムースのケーキと、上に添えてある果物がひと時の安らぎを与えてくれた。

つい一ヶ月前に会ったはずなのに、色々な話題に話しが弾み、
作品のこと、世の中の動きの事、これから咲き始める林の山野草のこと、
どれもこれも興味のある話で、あっと言う間に時間が経過してしまった。

Photo_3

     ヴィトレの丘の前庭


   実を付け始めた、ブルーベリー


ヴィトレの丘では自家菜園のブルーベリー畑を持っている。
畑までは遠いので、前庭で育てていられるブルーベリーを見せていただいた。
丁度実が付き始めたばかりで、林の中を渡ってくる五月の風に緑の実がユラユラ揺れていた。

初めて訪れた時は遠くに感じたが、
こうして幾度か訪れてみると、さほど遠くにも思わないから不思議である。
四季折々の風情を楽しめるヴィトレの丘、次に訪れる時はどのような姿を見せてくれるだろうか。


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森の英気

2009年05月15日 | 日記

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                            クリン草

頭の切り替えが下手を自認している私、
前回の日記にも書いたが、依然として青磁釉薬作りを行っている。
量的に十分すぎるほどの釉薬が出来上がり、今はその仕上げを行っている。
この仕上げを完璧に行わないと、焼きあがった青磁発色の品格が無くなってしまう。

仕事場もきれいにしてあることだし、ロクロも使えないし。
ならばこの際、白磁釉薬も作ることにした。
近々白磁釉薬も足らなくなる見通し、青磁釉薬と同じ製造工程なので、
青磁釉薬製造の延長と考えて作業を始めた。

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   藤 と 水芭蕉


釉薬を作り続けながら、ほぼ毎日歩きの運動も続けている。
遠くへは中々出かけられないが、近場には私の心を満たしてくれる森がある。

月日の経過と共に、さまざまな姿を見せてくれる森の植物たち。
ついこの前まで愛らしく、清楚な白い花を咲かせていた水芭蕉、いつの間にか巨大な葉が生い茂り、
今はその上に伸びてきた藤の花が、緑の葉にやさしい紫色を添えている。

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   キンラン


遊歩道と言うべきか、散歩道と言う方が正しいのかは分からないが、
森の小道を歩きつつ、今年も姿を見せてくれるようにと願っていた、「 キンラン 」、
同じ場所で美しく小さい花を咲かせていた。

何年前か、キンランを見つけ、なんと美しい花だろうと思っていて、
翌日も観察しようと出かけたら姿がない。 その場所には掘り起こした穴だけが残っていた。
山に咲くこれ等の植物、家に持って行き植えても根付くはずがないのに、と思い、
悲しくなってしまったことがあった。

それから数年、
良識ある方々が増えたのか山野草が持ち去られることも少なくなったように思える。
薄暗い木立の中でひっそりと咲いている、「 キンラン 」、確認しただけで7本はあった。

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   スズラン と ?


小道をたどっていくと、陽の当たる場所へと出て行く。
古い民家を移築した庭先には、スズランが今にも音を奏でそうに咲いている。
その中に混ざって咲いている紫の花、いったいこれは何と言う名前だろうか。

何年も歩いているところだが、初めて見たようにも思える。
それとも全く気づかず見落とした花か。

それはそうと、我が家の庭には困るくらいに増えたスズラン、気がついたら数本しか咲いていない。
邪魔で抜いたわけでもなく、除草剤など使ったことも無いのに不思議。
「 イワウチワ 」 も 「 福寿草 」も気がついたら消えてしまっている。
森を歩きながら、我が庭にも再生して欲しいなと願いつつ。

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   竹林

季節ごとにさまざまな表情を見せてくれる森、
木立を抜ける風音と共に、サラサラと竹林が奏でる音も爽やかな季節には似合う。
太い真竹の上へと伸び始めた 「 蔦=ツタ 」、
これ等、森からの英気を頂いて、白磁釉薬作りも気を抜かずに進めなくてはと思う。


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青磁釉薬・製造・Ⅱ

2009年05月10日 | 日記

青磁釉薬を作り始めて早や半月。
ただひたすらに釉薬作りをしていた、と言うより他の事が出来なかった。

毎度のことだが、頭の切り替えが悪い。
特に仕事に関して言えることだが、一つの事に集中してしまうのだ。
これをしながらあれもする、どういう訳か仕事にかかわることになると、
それが出来なくなってしまう。

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  回転しているポットミル


錆を細かく粉砕するためのポットミル、昼夜を問わず回りっぱなし。
錆を細かくすればするほど、美しい青磁が焼き上がる。
分量に合わせ、もうすでに3回目の粉砕である。

その間、基礎となる釉薬の調合と製造を毎日行ってきた。
大量の水を使うため、釉薬を入れるポリタンクがあっという間に一杯になってしまう。
そうなると、しばらく製造作業を休まなくてはならない。

ではその間何をしているかと言えば、畑に行って野菜づくりを手伝ったり、
我が前庭の野菜の手入れをしたり。
昨年同様、フルーツトマトを10本、ゴーヤ、パプリカ、キュウリ、ハーブ類も植えた。

それぞれの苗に支柱を取り付け、風よけもシッカリと施し、やがて10日。
覗いてみると植えた時よりも倍の大きさに成長している。そろそろ風除けを取り除いても大丈夫。
その間、耳はたえず工房のポットミルの音を確かめている。

時間の経過と共にポットミルが次第に軽やかな音を立ててきた。
塊(かたまり)になっていた錆が細かく粉砕されてきたのだ。
製造中の基礎釉薬も落ち着いてきているし、次の作業に移らなくてはいけない。

Photo_2

   ロクロの上での

  青磁釉薬製造作業


ポットミルの中身をすべて出し、次に粉砕する原料を入れてポットミルを回す。
そのようにして原料の調整を毎日行っている。

せめて工房がもっと広ければ作品作りも同時にできるのに、と思いつつも、
頭の切り替えが下手な私、立派な工房があったとしても結局一つの事に集中してしまうだろう。
とにもかくにも、青磁釉薬が計算どおりに作れるか心配でならないのだ。

仕事場の中でゴロゴロと回っているポットミル、その音にも敏感になってしまっている。
錆は細かくすればするほど美しく青色が発色するが、基礎となる原料の細かさの加減で
釉薬が失敗するのだ。
 
一つの青磁釉薬を作るために調合する原料は約10種。
それらを正確に管理し、粉砕時間を確認している毎日。
作り始めてやがて半月。 製造工程も終盤に入ろうとしている。


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