オペラファンの仕事の合間に パート2

大好きなクラッシック音楽やフィギュアスケート、映画などを語ります。メインは荒川静香さんの美しさを語るブログ。

「戦争レクイエム」

2011年01月26日 15時08分13秒 | NHK交響楽団
この前の日曜日の早朝、NHKハイビジョンで昨年12月のNHK交響楽団の定期演奏会からブリテンの「戦争レクイエム」の放送がありました。指揮はシャルル・デュトワ。合唱は東京混声合唱団とNHK東京児童合唱団。
私はエルガーやディーリアスなどイギリス音楽の作品も大好きである。そして行き着いた到達点にブリテンの音楽があると思っているので、かなり前からデュトワがN響で「戦争レクイエム」を振ることを知り、放送を楽しみにしていました。
本日の朝、録画を見ましたが、これが2度目である。最初より2度目の本日の方がいっそう感動を深くしました。特に第6曲の「リベラ・メ(我を許し給え)」は深い感動に襲われました。
この感動は演奏のレベルの高さもありますが、ブリテンのこの作品の持つメッセージの強さから来ているに違いありません。もし、この作品の聴き手が、正面を向いて、このメッセージを受け取ることが出来なかったら、この作品は単なる合唱を伴った大掛かりなオーケストラ音楽になってしまうでしょう。

「戦争レクイエム」はブリテンの多くの作品の中でも大作であり、傑作の一つでしょう。
1940年ドイツの空爆によって破壊されたイギリスのコヴェントリーにある聖マイケル教会に新たに建立された大聖堂の献堂式を行うために、この教会の委嘱によって書かれた作品である。そして1962年5月30日の献堂式にて初演された。
歌詞には、通常のレクイエムに用いられるラテン語の典礼文以外に、第1次大戦にて戦死したイギリスの詩人W・オーウェンの詩も使い、全体は六楽章から構成されています。
この作品のスコア冒頭に次のような、詩人W・オーウェンの一節を書き記しているとのことである。
「私の主題は戦争であり、戦争の悲しみである。詩はその悲しみの中にある。詩人の為しうる全てとは、警告を与えることにある」
この作品は単に死者の霊を慰める音楽ではなく、戦争という悲劇を二度と繰り返すまいとする作曲者の願いと祈りが込められている。

この作品には作曲者自身がロンドン交響楽団を指揮した録音(デッカ)もあり、私も所持していますが、映像でこの作品に接するのは初めてである。室内アンサンブルがどのポジションで演奏しているのかなど非常に興味深いものがありました。
独唱はソプラノがソ連(現在はロシア)、テノールがイギリス、バリトンがドイツの歌手で、ブリテンが作曲時、第二次世界大戦ヨーロッパ戦線の中心的交戦国の歌手を念頭にしていた同じ国の独唱者であり、このN響の演奏会の意義を高いものにしていると言えるでしょう。
デュトワの指揮するブリテンの録音はまだ無いはずですが、私はデュトワの指揮するブリテンの演奏を聴いたことがあります。かなり昔、デュトワがモントリオール交響楽団と、わが町にやって来て歌劇「ピーター・グライムズ」より「4つの海の間奏曲」を演奏してました。今もこの時の演奏は私の心の引き出しの中にしっかりとしまっています。デュトワはイギリスのロイヤルフィルの音楽監督に就任したとのことで、これからブリテンなどイギリス音楽の録音を期待したいところです。
いつもN響が合唱を伴った作品を演奏する時は音楽大学の合唱団を起用していますが、今回はプロの東京混声合唱団である。共感あふれる、しっかりとした合唱で、この作品を感銘深いものとなりました。

この録画を見終えたあとCDで同じブリテンの「シンフォニア・ダ・レクイエム」を聴き、またまた心の中に強いものを感じました。
このところチャイコフスキーを中心のロシア音楽ばかり聴いていたので、久し振りに聴くブリテンの音楽に新鮮さを強く感じたのかもしれません。