朝比奈隆のブルックナーの録音を第0番より、たどっていますが作品の重みの為か、後期の作品に入ってペースダウンしてしまいました。いよいよブルックナーの最高傑作の第8番に入りたいと思います。
ブルックナー 交響曲第8番 ハ短調
第1楽章 アレグロ・モデラート
第2楽章 スケルツォ:アレグロ・モデラート
第3楽章 アダージョ:壮重に、ゆっくりと、しかし引きずらないで
第4楽章 フィナーレ:壮重に、速くなく
第1楽章冒頭、第1主題が盛り上がってフォルテシモで達した時、居てもたってもいられなくなるのは私だけだろうか?そして8番の核心といえる第3楽章のアダージョ。チェロが奏でる第2主題の美しさ。そしてブルックナーを聴く至福の時の頂点といえるコーダの素晴らしさ!何度聴いても飽き足らない。
1884~7年に書かれた第1版は演奏もされなかった。1888~90年に第2版を書いたが、92年に出版されたものには、シャルクやハンス・リヒターの意見にしたがったと思われる変更とカットがあるらしい。
ハース版は第2版を基にしながらも、第1版からの引用があるが、ノヴァーク版は第2版の楽譜をそのまま引用している。ハース版とノヴァーク版の違いは第3楽章と第4楽章に見る事ができる。ハース版では第1版から採られた部分がある。
またシャルクやリヒターの意見を参考にした改訂版がありクナッパーツブッシュの録音で聴くことが出来る。
また第1版の録音ではインパル指揮フランクフルト放送交響楽団の録音で聴く事ができ、ハース版やノヴァーク版と別の曲ではないかと思うくらい驚きの演奏である。
朝比奈隆はブルックナーの大家と言われたが8番を初めて振ったのは比較的に遅く1971年の秋である。1950年代から60年代、それまでブルックナーは4番、7番、9番しか演奏していない。70年代に入って5番と8番に巡り会って一気に最高のブルックナー指揮者となった。ちょうど朝比奈隆60代後半の円熟期に入り彼の音楽が一層深くなってきた時期である。彼の8番の録音はどれも名演で最高の遺産といっても良いでしょう。
私が所持している朝比奈隆の録音は下記の通りである。
①大阪フィルハーモニー交響楽団(1976年4月神戸文化ホールでのスタジオ録音)ジャンジャン盤
②大阪フィルハーモニー交響楽団(1976年8月神戸文化ホールでの公開録音)ジャンジャン盤
③大阪フィルハーモニー交響楽団(1980年10月東京カテドラル聖マリア大聖堂でのライブ録音)ビクター盤
④大阪フィルハーモニー交響楽団(1994年7月サントリーホールでのライブ録音)ポニー・キャニオン盤
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⑤NHK交響楽団(1997年3月NHKホールでのライブ映像)NHKエンタープライズ盤
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⑥大阪フィルハーモニー交響楽団(2001年7月サントリーホールでのライブ録音)EXTON盤
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⑤はDVDである。①はジャンジャンでの交響曲全集録音の際、最初に録音され指揮者やオケも出来上がりを気にいっていたとの事だが当時のジャンジャンの社長が気に入らないとの事でお蔵になり再度、録音されたのが②である。長い間、幻のブルックナー録音だったが8年ほど前、ジャンジャンの全集がCD化された時、日の目を見た録音である。
私自身、大好きな録音は②④⑤⑥である。甲乙をつけるのは、非常にむずかしい!④の録音を耳にしたとき、これが最高の8番と思ったのだが、死の年の録音の⑥をきいて、これが巨匠のまさに行き着いたブルックナーの最高の演奏を聴いて、ここまで人間は大きく、深くなれるのかと驚愕したものである。
しかしである⑥がまさに最高と思っていたが、昨年の暮れ、⑤のDVDに接して、また驚き!これも最高ではないかと思ってしまった。最高のブルックナー指揮者と我が国最高のオーケストラとのブルックナーの最高傑作の演奏である。大阪フィルとの演奏では第1楽章、第2楽章はやや様子見で第3楽章から本調子というのもありますが、⑤では、さすがN響、第1楽章からエンジン全開である。とくにティンパニの演奏は最高ではと感じました。
②はまだオケの技術が晩年の録音に比べて不十分な点は多々ありますが、1970年代の巨匠のブルックナーの演奏をきくのは大変貴重ですし、馴れのない気迫に満ちた演奏は、この後の録音にはない魅力のがあり、私ははずせません。
私自身、朝比奈隆の8番の演奏を聴く時はその時の気分で録音を選んで聴いているのが実情です。
以下はブルックナーの8番の私のお気に入りの参考CDです。またの機会に取り上げたいと思います。
①ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団「改訂版」(1963年ミュンヘンでのスタジオ録音)ウェストミンスター盤
②ハンス・クナッパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団「改訂版」(1963年ミュンヘンでのライブ録音)ドリームライフ盤
③カール・シューリヒト指揮ウィーンフィルハーモニー管弦楽団(1963年ウィーンでのライブ録音)EMI盤
④ギュンター・ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団(1993年ハンブルクでのライブ録音)RCA盤
ヴァントはハース盤、シューリヒトは第三楽章までがハース版、第四楽章がノヴァーク版が基本となっていて、本当にブルックナーの版はややこしい。
ヴァントの録音では晩年のベルリンフィルとの録音が有名ですが私はこちらの方が好きです。