ベートーヴェンの9曲の交響曲。全てたいへん大きな山々である。第1番と第9番では演奏時間、オケの規模など大きな違いがありますが、作品の重さは同じだと私は思っています。その中で一番好きな作品は何番?と聞かれたら、やはり第3番の「英雄」と答えてしまいます。曲のスケールの大きさ、胸のふくらむような広々とした世界に聴くたびに圧倒されます。
さて、私にとって大変懐かしく、また、それからの私の音楽への指針を決定つけた演奏のCDが届きました。
ベートーヴェン 交響曲第3番 変ホ長調「英雄」
朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団
Victor JM-XR300007 (1977年10月東京文化会館でのライブ録音)
私事で恐縮であるが私が初めて朝比奈隆の演奏を聴いたコンサートのライブ録音である。なぜ、このコンサートのチケットを購入する気になったのか、よく憶えていません。私は関西の人間なので大阪のオーケストラの公演に近親感をかんじたのかもしれません。プレイガイドでの朝比奈隆の写真による公演のポスターを見て、何か凄いものが聴けるという予感があったのかもしれません。またチケット代もNHK交響楽団の定期公演より安かったこともあるかもしれません。
当日の座席は何と文化会館の1階の最前列のほぼ、ど真ん中でした。現在はネットで好きな場所を選ぶ事が出来ますが、当時はプレイガイドへ行ってみなければ、どんな席があるか、わからない時代だったので新宿のプレイガイドでしたが、最前列の真ん中を確保できた時は、びっくりでした。
ベーム指揮ウィーンフィルのコンサートと同じですが、この時も単なる運の良さだけではない「朝比奈隆を初めて聴くなら、ここで聴きなさい」という神様のご配慮があったと今も思っています。
コンサート当日、ステージに登場した朝比奈さんの姿は貫禄十分で、まさに巨匠という雰囲気が十分に伝わってきました。この時、巨匠はまだ68歳!である。また最前列のど真ん中の席だったので指揮者の息使いも伝わってきて、たいへんスリリングでした。これがライブの魅力かもしれません。また後年のようにメガネはかけていませんでした。
プログラムは「田園」と「英雄」でしたが、やはり「英雄」が凄かった!そしてクラシック音楽というものが、こんなに心の中を熱くするものであるという事を初めて思い知らされました。そして、こんな凄い指揮者が日本にいたとは!朝比奈隆という指揮者を知った喜びは本当に大きかった。
これ以降、東京での大学生時代、朝比奈さんの演奏は出来る限り脚を運びましたし、現在までCDの収集は続いていますが、1977年10月の大阪フィルとの「英雄」のコンサートは、私の朝比奈隆の原点であり、一人の音楽家とこのような出会いが出来たことは本当に幸せである。
なお、この時の「英雄」の録音はコンサートの後、数ヵ月後、レコードとして発売され、当然、購入しましたが第2楽章の「葬送行進曲」の途中でA面からB面へ裏返しにしなくてはいけないのが、何か緊張感が途切れるようで興ざめで数回聴いただけで、そのまんまになっていました。今回、マスターテープからのダイレクトカッティングによるCD化で当日の会場の雰囲気が蘇るような見事な復刻で、約30年の年月を感じさせないもの、東京文化会館の座席に座っているような気分でした。
さて1977年頃、朝比奈さんのレコード評はボロクソで、ひどいものでした。まだまだ大阪フィルの演奏も未熟な点もあり、ほとんどの音楽評論家は、それらが気になったのでしょう。当時はカラヤンとベルリンフィルやショルティとシカゴ響の全盛時代だったので朝比奈隆指揮大阪フィルの録音の出る幕はなかったのでしょう。あれだけライブでは素晴らしいのに・・・と思い、現在まで続く音楽評論家不信(数人の評論家は除く)の原因となりました。
晩年の朝比奈さんの人気は凄く、こんな人が?と思う評論家までほめだしました。朝比奈さんの音楽を多くの方々にわかってもらうのは嬉しいのですが、何か複雑な心境でした。「レコード芸術」誌の最新号での「名曲名盤300」選びのブルックナーのページを読みながら、まだまだ真に朝比奈さんの音楽が理解されていないと痛感しました。単なるご長寿指揮者の演奏と思われるのは、たいへん遺憾です。最近の全盲の辻井伸行氏のコンクール優勝の扱いと何か共通するものを感じてしまいます。
やはり私は一時のブームに流されることなくクラシック音楽を聴いて行きたいものです。それを教えてくれたのは、朝比奈さんでした。1977年当時、カラヤンやショルティの時代、晩年には考えられないほど、まだ評価の低かった朝比奈隆という指揮者を知ることが出来たのは私にとって大きな財産となりました。
今後も、一般の評価が、どう変わろうとも朝比奈さんの演奏を聴き続けていくつもりです。
さて、私にとって大変懐かしく、また、それからの私の音楽への指針を決定つけた演奏のCDが届きました。
ベートーヴェン 交響曲第3番 変ホ長調「英雄」
朝比奈隆指揮大阪フィルハーモニー交響楽団
Victor JM-XR300007 (1977年10月東京文化会館でのライブ録音)
私事で恐縮であるが私が初めて朝比奈隆の演奏を聴いたコンサートのライブ録音である。なぜ、このコンサートのチケットを購入する気になったのか、よく憶えていません。私は関西の人間なので大阪のオーケストラの公演に近親感をかんじたのかもしれません。プレイガイドでの朝比奈隆の写真による公演のポスターを見て、何か凄いものが聴けるという予感があったのかもしれません。またチケット代もNHK交響楽団の定期公演より安かったこともあるかもしれません。
当日の座席は何と文化会館の1階の最前列のほぼ、ど真ん中でした。現在はネットで好きな場所を選ぶ事が出来ますが、当時はプレイガイドへ行ってみなければ、どんな席があるか、わからない時代だったので新宿のプレイガイドでしたが、最前列の真ん中を確保できた時は、びっくりでした。
ベーム指揮ウィーンフィルのコンサートと同じですが、この時も単なる運の良さだけではない「朝比奈隆を初めて聴くなら、ここで聴きなさい」という神様のご配慮があったと今も思っています。
コンサート当日、ステージに登場した朝比奈さんの姿は貫禄十分で、まさに巨匠という雰囲気が十分に伝わってきました。この時、巨匠はまだ68歳!である。また最前列のど真ん中の席だったので指揮者の息使いも伝わってきて、たいへんスリリングでした。これがライブの魅力かもしれません。また後年のようにメガネはかけていませんでした。
プログラムは「田園」と「英雄」でしたが、やはり「英雄」が凄かった!そしてクラシック音楽というものが、こんなに心の中を熱くするものであるという事を初めて思い知らされました。そして、こんな凄い指揮者が日本にいたとは!朝比奈隆という指揮者を知った喜びは本当に大きかった。
これ以降、東京での大学生時代、朝比奈さんの演奏は出来る限り脚を運びましたし、現在までCDの収集は続いていますが、1977年10月の大阪フィルとの「英雄」のコンサートは、私の朝比奈隆の原点であり、一人の音楽家とこのような出会いが出来たことは本当に幸せである。
なお、この時の「英雄」の録音はコンサートの後、数ヵ月後、レコードとして発売され、当然、購入しましたが第2楽章の「葬送行進曲」の途中でA面からB面へ裏返しにしなくてはいけないのが、何か緊張感が途切れるようで興ざめで数回聴いただけで、そのまんまになっていました。今回、マスターテープからのダイレクトカッティングによるCD化で当日の会場の雰囲気が蘇るような見事な復刻で、約30年の年月を感じさせないもの、東京文化会館の座席に座っているような気分でした。
さて1977年頃、朝比奈さんのレコード評はボロクソで、ひどいものでした。まだまだ大阪フィルの演奏も未熟な点もあり、ほとんどの音楽評論家は、それらが気になったのでしょう。当時はカラヤンとベルリンフィルやショルティとシカゴ響の全盛時代だったので朝比奈隆指揮大阪フィルの録音の出る幕はなかったのでしょう。あれだけライブでは素晴らしいのに・・・と思い、現在まで続く音楽評論家不信(数人の評論家は除く)の原因となりました。
晩年の朝比奈さんの人気は凄く、こんな人が?と思う評論家までほめだしました。朝比奈さんの音楽を多くの方々にわかってもらうのは嬉しいのですが、何か複雑な心境でした。「レコード芸術」誌の最新号での「名曲名盤300」選びのブルックナーのページを読みながら、まだまだ真に朝比奈さんの音楽が理解されていないと痛感しました。単なるご長寿指揮者の演奏と思われるのは、たいへん遺憾です。最近の全盲の辻井伸行氏のコンクール優勝の扱いと何か共通するものを感じてしまいます。
やはり私は一時のブームに流されることなくクラシック音楽を聴いて行きたいものです。それを教えてくれたのは、朝比奈さんでした。1977年当時、カラヤンやショルティの時代、晩年には考えられないほど、まだ評価の低かった朝比奈隆という指揮者を知ることが出来たのは私にとって大きな財産となりました。
今後も、一般の評価が、どう変わろうとも朝比奈さんの演奏を聴き続けていくつもりです。