大震災以降、仕事面では、全くと言うほど余裕が無くなってしまった。より過激になってきた。ゴールデンウィークも一杯一杯の状態だった。そして、今、GWを何とか乗り切ったが、物凄い疲労感で、疲れが全く抜けない状態。8月27日の「フレンズ・オン・アイス」まで心身共に自分自身を保つことが出来るのか本当に不安になっている。いや、こんな時こそ絶対、荒川静香さんに会いに行かねばならぬ!
そんな自分自身を癒してくれる、また心に平安を与えてくれる音楽がある。最近、仕事の休みの日は必ず聴いている。
ワーグナー作曲の「ジークフリート牧歌」
ワーグナーが1870年のクリスマスに、妻コジマの誕生日に感謝の印として贈った心温まる作品。当日はワーグナー邸の階段に楽員が並び、ワーグナー自身の指揮によって初演され、コジマを驚かせたという。
なお、イタリアの映画監督ルキノ・ヴィスコンティがバイエルン国王ルートヴィッヒ2世を描いた映画「ルートヴィッヒ」の中で、この初演のシーンがあり、映像で再現された「ジークフリート牧歌」初演のシーンを見て、映画のありがたさを強く感じたものです。
昔から大好きな作品ですが、齢を取るごとに心に、ますます心に浸みてきました。
演奏はハンス・クナパーツブッシュ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団による1962年、ミュンヘンでのスタジオ録音である。(ウエストミンスター盤)
この曲の録音は何種類かもっているが、このクナの指揮によるミュンヘン・フィルとのスタジオ録音一筋である。私の持っているCDの中で昔からの一番の愛聴盤である。何度、聴いても飽き足らない。この録音に初めて出会ったのは高校2年の時。どれだけ長い年月が経ったであろうか。そして今も聴き続けている。音楽の持つ本当の「美しさ」を今も私に教えてくれている。
高校生になってワーグナーに興味を持ち、初めて買ったワーグナーの録音がクナがミュンヘンフィルを指揮したワーグナー管弦楽曲集の2枚組のレコードである。
当時、作品によっては、クナのゆっくりしたテンポについていけない演奏もありしたが、「ジークフリート牧歌」だけはスッと私の耳に入ることが出来ました。今から考えると本当にとんでもない高校生だったと思います。
後年、楽劇「ジークフリート」全曲を初めて聴いた時、第3幕の大詰め、この「ジークフリート牧歌」のメロディが流れてきた時、震えるほど感動したことを今も、はっきりと憶えています。なお楽劇「ジークフリート」の第3幕、ブリュンヒルデの目覚め以降の音楽は私の大好きなワーグナーの音楽の一つです。
CDの時代に入って、このウエストミンスター盤がCD化されると、当然ながらすぐに購入しました。一緒に収録されている歌劇「さまよえるオランダ人」序曲にちなんだ素敵なジャケットの表紙も、たいへん気に入っています。
CD化され残響の乏しさが全く気にならなくなった。暖かみのある素朴で、本当に愛情のこもった演奏。ホルンの音色の濃くの深さ。クナの本当の心の中が見えてくる。
そして最後では名残惜しさを心の中で押さえながら、振り払うかのように、スッと終わるエンディングの美しさ。
これを聴くために、飽きもせず聴き続けているのかもしれません。
なお、夜遅く、仕事から帰宅して、この曲を聴きたくなった時は、住宅事情でCDは聴けないのでクナがウィーンフィルを指揮した1963年のライブ映像のDVDをよく見ます。
映像状態は落ちますが、クナの指揮振りをたっぷりと見ることが出来るのが魅力です。そしてウィーンフィルの素晴らしい響き。
クナの指揮振りは地味、そっけない、面白くないと言われていますが、私は正反対である。クナの顔の表情、目の動き、ちょっとした指揮棒の動きをみているだけで深い感動を憶えます。そして、それらに見事についていくウィーンフィルの見事さ。これを神技と言うのでしょう。
クナはオケのメンバーによく言っていたそうである。
「今夜は、私のタクトをよく見てくださいね」
クナのタクトには、まだまだ秘密がありそうだ。
クナはウィーンフィル、そしてミュンヘンやバイロイトなどドイツの特定のオケしか振りませんでした。アメリカやイギリスのオケを振った話を聞いたことがない。
クナは自身の指揮を本当に理解できるオケしか振らなかった。
そんなクナことクナパーツブッシュの残してくれた録音を私は、これからも大切に聴いていきたい。
そして「ジークフリート牧歌」も聴き続けるでしょう。