水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

コメディー連載小説 里山家横の公園にいた捨て猫 ④<6>

2015年04月19日 00時00分00秒 | #小説

『新居で暮らす、という訳にもいかないしね…』
『通うにしたって、私の方からは無理だと思う』
『確かに…。みぃ~ちゃんは伝えられないからな。それにしても、いい天気だね』
「ええ…」
 二匹は背を丸め、尻尾(しっぽ)の先を丸めた。
 その頃、邸内では里山が超高級紅茶を飲んでいた。傍(かたわら)に侍女(じじょ)風の高貴な老女が、里山が食べたことも見たこともない超高級菓子が乗った皿を置いた。スイーツには滅法、目がない里山だったが、これは、なんと? と訊(き)く訳にいかず、黙って食べ始めた。里山にもプライドは少なからずあったのだ。スィーツを食べながら里山は小次郎とみぃ~ちゃんのことを、さてどう話していいものか…と考えた。
「いや、実はですね…」
 意を決した里山は、小鳩(おばと)婦人に語りかけた。
「あらっ、なんざまぁ~すかしら?」
「うちの小次郎とみぃ~ちゃんが…」
「えっ? 小次郎君と宅のみぃ~ちゃんが、どうかしましたの?」
「いや、その…あの…」
 里山はどう伝えていいのか…と、難儀した。
「ほほほ…面白いお方」
 小鳩(おばと)婦人は、また手持ちのダイヤモンドが散りばめられた扇ゅおうぎょで口を押さえ、笑う口を隠した。よく扇を使うお方だ…と、里山は思った。


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