道ならぬ恋とは、まさしく小次郎とみぃ~ちゃんのことだった。小次郎が意を決して里山にその想いを打ち明けたのは、完成試写会を迎えた日だった。
『実は、しかじかかくかくなんですよ』
「なるほど! かくかくしかじかじゃなく、しかじかかくかくなんだな。なぜ、もっと早く言わなかった!」
里山は小次郎に、しかじかかくかくだと聞かされ、思わず怒っていた。水くさい、お前と俺の中で…と瞬間、思えたのだ。
『どうも、すみません。でも、僕は飼われている身の上ですから…』
「馬鹿なことを言うんじゃない。飼われているのは里山家だ。今のお前は、立派な里山家の稼(かせ)ぎ頭(がしら)じゃないかっ! 俺もひと肌、脱がん訳にはいかんだろう…」
里山は熱い口調で語った。小次郎は、ひと肌、脱ぐとは大げさな人だ…と思ったが、思うに留めた。
『はあ。まあ、そうなるんでしょうか…』
「なるとも、なるとも。…そういや、いいとも、終わっちまったなぁ。そんなこたぁ~どうでもいいんだ! それよか、みぃ~ちゃんの方は?」
里山は漫才のボケとツッコミを一人でやった。
『それなんですよ。小鳩(おばと)婦人も知らないと思いますし…』
「そりゃそうだ…。ニャ~じゃ分からんからな。さて、どう算段するかだが…」
里山は腕組みし、小次郎は尻尾(しっぽ)を軽く巻いた。しばらくして、里山が口を開いた。
「とにかく、みぃ~ちゃんが婦人の手を離れる機会を探るとしよう」
しばらく、小次郎のスケジュールを開けていたのを幸いに、里山と小次郎は探偵気どりでみぃ~ちゃんのオッカケを始めた。そこはそれ、並みのトウシロとは違い、こちらも業界人、いや、業界猫である。