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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

1分単位の労働時間の把握について

2022-10-02 23:47:44 | 労働基準法

「労働時間は1分単位で算定していかなければならず、賃金は1日単位での端数処理は認められず1カ月の労働時間の合計について端数処理が認められている」ということについてはよく会社さんにご説明します。その根拠としては、労基法の全額払いの原則と賃金の端数処理についての通達となります。

・労働基準法24条(賃金の支払)賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。

例外としては労使協定の締結による1部控除が認められていますが、原則として賃金はその月(賃金算定期間)ごとに全額支払わなければならないものとされていますので、日ごとに労働時間について15分に丸めたりすることは認められていません。

・昭和63年3月14日基発150号、婦発47号

賃金の計算において生じる労働時間、賃金額の端数の取扱いについては次のように取り扱われたい。
一 遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理
 5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットをするというような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について、賃金の全額払の原則に反し、違法である。(略)
二 割増賃金計算における端数処理
 次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、法第24条及び第37条違反としては取り扱わない
(一) 1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
(二) 1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
(三) 1か月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、(二)と同様に処理すること。
(略)

従って毎日1分単位で労働時間を把握し、合計した時間数については30分未満切り捨て、30分以上切り上げが認められるということになります。

以前は労働時間の管理システムが15分単位で切上げ切捨てを行っているものが多く見受けられたのですが、ここ10年ほどは労基署の調査でも1分単位が必要ということでの是正勧告は普通に行われるため今はシステム自体がほとんど1分単位で把握できるものになっていると思います。

それでは、会社は例えば始業時刻が9時であるとして8時に出勤した社員に対して1時間の朝残業代を支払う必要があるのかということになります。基本的にここからは会社ごとに色々な管理方法があるのだと思いますが、「業務は必ず始業時刻の9時から始めることを徹底する」「始業時刻の1時間を超えた出社時点から仕事をする場合許可制とする」など管理していくことが考えられます。確かに始業時刻が決まっているのですから早めに来て仕事をするということになると「始業時刻の繰上げ」と同じことになるため、始業時刻までは仕事を行わないことを指示することはできないわけではないと考えます。ただし若干もったいないようにも感じ、また始業時刻が9時ジャストと並んだ出勤簿を見ると本当にきっちりその時刻から開始しているのか、前出の1分単位の把握義務もあり心配になります。

残業は会社が許可したもののみをカウントして残業代を支払うのは「黙示の指示」があったとみなされた場合には未払い賃金が発生するので、残業許可制を採用する場合はかなり許可とその後の実態の把握、時間外労働にカウントする必要があるかどうかの判断をきちんとしていく必要があります。従って許可制を採用するとしても1時間を超えた場合程度でないとなかなか管理が大変ではないかという印象です。

結局、朝早めに出社した時間数を1分単位で把握していくと、ほとんど残業していない場合であっても締め日に合計してみると1時間程度の時間外労働は発生する場合が多いのではないかと推察します。またフレックスタイム制を採用している場合は始業・終業時刻を労働者に委ねることになり、実際の始業時刻から終業時刻までを1日単位で把握し、1カ月の合計が清算期間における総労働時間となるため、そこで最後に端数処理するという通達通りの取扱いになり、ある意味管理としては楽になるといえます。うちの事務所でも働き方改革とコロナでフレックスタイム制と在宅勤務を導入した結果、1か月の時間外労働が30分以内というケースも結構あり、かなり自己管理しているのだろうなと感じることもありますが、法律の遵守の観点と管理の観点の両方からすっきりした感はあります。

先週のことですが、黒部ダムを見に行ってきました。この夏、黒部ダムにはまってしまい、映画やプロジェクトXのDVDを購入し観たり、書籍を数冊読みあさり、とうとう実際に行ってきました。昭和30年代の日本の高度経済成長を支えるための、企業の決断と諦めない強さや使命感に感銘を受けます。ツアーだったので黒部ダムの滞在時間が短く放水を見たにとどまった感があるので、この秋もう一度行って資料館とレストハウスでダムカレーを食べる予定です。