OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

年休継続勤務の考え方・開業記⑤初めての営業

2010-12-05 23:36:53 | 開業記
 年次有給休暇は、会社に入社当初は6箇月間、その後は1年間「継続勤務」していることが付与の条件になっています。この継続勤務は一つの会社に継続して勤務している場合がもちろん該当しますが、高年齢雇用確保措置として定年退職後継続雇用された場合はどうなるでしょうか?通達でこの場合も実質的に労働関係が継続している限り継続勤務として前後の勤務期間を通算しなければならないことになっています(昭和63.3.14基発150号)。
 しかし平成18年春の高年齢者雇用安定法の改正の前年、各企業からのお問い合わせに上記通達を元に、労働局にも確認した上で、継続雇用制度の場合は継続勤務として前年分も繰越し及び6.5年以上勤務している方には20日の年休の付与をしていかなければならないと回答しておりました。

 それが施行3か月前くらいになると労働局の担当部署の回答が「本来そのような考え方ではあるのですが、労使の合意があれば継続勤務として取り扱わなくてもかまいません」という回答に変わってしまいました。企業側のクレームがきつかったのでしょうか?要するに、継続雇用制度で契約する際の労働条件において、年次有給休暇の付与は6箇月継続勤務して初めて10日付与ということで、労働者が合意していればよいということです。その時私は焦りました。顧問先企業には情報として連絡ができますがセミナーで聞いてくれた企業などには情報としてご連絡するすべがありません。結局直前に駆け込みで準備した企業にはそれを伝えることができましたが、半年以上前からきちんと準備した企業に伝えられなかったという残念な思いが残りました。それ以来改正の際どのような行政解釈になるかは最後まで様子見と考えながら回答しております。

5 初めての営業
 TACに毎週1回行って法人事業部の業務である企業向け通信講座の採点をするのは5、6人で皆開業したばかりのメンバーでした。のちにこのメンバーが島中先生、三浦先生、井上先生と講師仲間になっていくのですが、駆け出しの頃にこのメンバーと一緒に仕事をできたのは本当に楽しく良い思い出です。

 まだまだ少ししかない実務仕事の中でも開業したての頃は疑問だらけでしたので、1週間疑問を貯めておいて、毎週水曜日の休憩時間に色々とに皆の意見を聞いてみるのです。知識経験ともに少ない中での意見交換ですから、今聞いたら卒倒しそうな内容のことをしゃべっていたような気がしますが、それでもずいぶん助けられました。

 2年後に新標準テキストを島中先生が書くことになり、皆で校正をしてそれを使って勉強会もしました。社労士は色々勉強しなければならないことが多くて楽しいなと思っていました。開業した時経験がなかったとしても、例えば事務指定講習で知り合ったメンバーや受験生時代のメンバー又は支部の自主研究会のメンバーなどの人間関係を大切にして、相談できる仲間を持つ必要はあると思います。支部のベテランの先生にはここはというときに相談することができますが、お忙しいのでそういつもいつもというわけにはいかないからです。

 そのような環境であっても、仕事は向こうから来てくれることはありません。毎週「顧問先できた?」と採点チームのメンバーに冷やかし半分聞かれてもなんの戦略もなく開業した身としては「顧問先なんてなくても良いんだから。私は研修とか受けられればそれでよいの」とかわすしかできませんでした。

 しかし3か月たっても何も起こらないとするとこのままずっとこの状態?というのもちょっと悔しくて思い切って営業に行くことにしました。初めての営業は脱サラした夫の先輩のところでした。先輩の会社をというより先輩のお仲間の会社で何かありませんか(今なら何かありませんかではなく「こういうことができますが」くらいは準備したいですね)、ということで今考えると営業ツールも持たず気の利かないことこの上ない営業であったのです。しかし、ちょうど就業規則を作った方が良いと税理士さんから言われていたので頼んでみようかなというお話を先輩から頂き、初めて開業社労士として仕事をすることになりました。就業規則を作成後顧問先となって頂いて、それから20年近く今も顧問先第1号としてOURSの名簿のトップに君臨する存在です。本当に感謝しております。

開業記④開業当初の状況

2010-12-05 21:56:09 | 開業記
 昨日は東京都社会保険労務士会の社労士教育学院が主催する「事例に学ぶ、労務監査のポイントと実務」の研修を受けに行きました。大野事務所のパートナー社員である野田先生と元渋谷支部支部長である内木先生が講師となり、ご自身の経験を惜しみなくお話し頂きたくさんの「気づき」や「なるほどというポイント」がありました。土曜日に研修というのも、ゆったりと勉強に集中できて意外に良いものでした。BBクラブの会員にもばったり会うことができて結婚の報告を受け、満たされた気持ちになりました。

4 開業当初の状況
 開業するには、まず全国社会保険労務士会連合会の名簿に登録する必要があります。そこで、登録するため開業する事務所の管轄の都道府県社会保険労務士会に申請に行くことになり、当時お茶の水と秋葉原の中間地点にある東京都社会保険労務士会に行きました。その当時はまだ開業者が今ほど多くなかったせいか、5時直前に駆け込んだにもかかわらず当時の会長である石原会長に面接をして頂いて社会保険労務士の心得をお伺いした覚えがあります。登録には20万円程度の費用が必要でしたが、開業の決心がつかない期間にアルバイトで貯めた貯金を充てました。
 
 事務所のゴム印、名刺、挨拶状を準備して、当時は電話も加入権を購入する必要があったためそのお金はなく自宅との兼用でしたしワープロ(当時はパソコンはそろそろ普及し始めたなくらい)も持っていましたので、それでOK。これで行くぞとワクワクしました。しかし挨拶状を出す人はみんな専業主婦になった友人ばかりで、ここに出して何か仕事に結びつくのかな~という感じでした。

 それだけすると何をして良いかわからなかったので、とりあえず覚えて頂いているとは思えなかったもののカネボウ時代の顧問社労士の永島セツ先生の事務所に思い切ってお電話して、社労士の事務所を見せて頂きたいとお願いしました。実はそれまで私は開業社労士を永島セツ先生しか見た(それも10年前)ことがなく、何かきっかけをつかむにもどう動いて良いのか分からずワラにもすがる気持ちでした。先生の事務所で何をお話ししたか緊張しまくっていた以外は今ではほとんど覚えていないのですが、とにかく所属する渋谷支部の支部長(現東京政連会長の富田弘先生)と、渋谷支部には東京会を将来背負って立つ副支部長(現東京会副会長の大野実先生)がおられるのでにご挨拶に行きなさいということでした。東京都社労士会という区分だけでなく支部という区分があり活動は支部が中心になるということが想像できました。そこで早速お二人の先生のところにご挨拶に行き、たまたま富田支部長が今日は定期会議があるので渋谷東武ホテルの親睦会に来なさい、ナニ会費なんていらないからということで、初めて社会保険労務士の集まる場に行くことになったわけです(本当に会費を持たず行って、お財布を開けたらそんなお金は入っておらず、受付の先生にびっくりされたのをよく覚えております。本当に世間知らずだったわけです)。

 その初日から、支部の先輩方はまったくわけのわからない私のような新規開業者に本当に親切に自分の開業当初のことなどを話してくれました。社会保険労務士の市場は今現在でもまだ余裕があると私は考えています。新たに顧問先になって頂いた企業にこれまで社労士がいなかったということはざらですから、同業者はライバルというよりは業界全体で水準をあげて行く仲間、みんなで協力しあい企業に必要とされる存在になるほうが大切だということになります。例えばその会でその後も様々なヒントをいただきいつも応援して下さる田中和典先生から「小磯さん、僕も開業当初は社労士の業務をしたことがなかったんだけど、ある時は会社の社長、ある時は事務員、ある時は社労士ということで使い分けて、分からないことを役所に電話したりして聞いたんだよ」ということを伺いました。「なるほどね~」と実に感心しました。その後私もよく開業したばかりの方にその話をしてきましたが、これは勇気をもらいました。支部の先輩の先生は何でも聞いてきたらいいよと言ってくださる方が多く、それは渋谷支部の特徴でもありまた社労士業界の全体の雰囲気でもあると思います。今思えばこの日やっと扉が開き始めたのだと思います。