グアンタナモ収容所(Guantanamo Bay detention camp:Gitmo)は、キューバのグァンタナモ米軍基地に設置されているアメリカ南方軍グアンタナモ共同機動部隊運営の収容キャンプだということですが、対テロ戦争を呼びかけたブッシュ大統領時代に、テロに関与している疑いのある人物や、秘密情報を持っている疑いのある人物が、次々に強制連行され、収容、監禁、拘禁されるようになったということで、よく知られるようになったと思います。
グアンタナモ収容所の問題は、いろいろ指摘されていますが、まず、確たる証拠がなくても、疑いを持たれれば強制連行されることであり、また、裁判にかけられることなく逮捕・長期勾留されることがあります。
また、アメリカは、グアンタナモ収容所の収容者に対し、“捕虜”と”犯罪者”の処遇を、脱法的に使い分けているとも言います。”捕虜”であればジュネーヴ条約を適用する義務があるのですが、”犯罪者”にその必要はないからです。
グアンタナモは、アメリカの領土ではないので、アメリカの国内法の効力が及ばず、さらに、国際法も適用されない、ということも重大な問題だと思います。
キューバのカストロ政権が、アメリカの基地租借は非合法と非難し、キューバが返還を求め続けていることも、無視されてはならないことだと思います。
だから、グアンタナモ収容所に関しては、さまざまな批判や非難があり、調査情報もあるようですが、特に、赤十字国際委員会が、米軍は被収容者に対して心理的、物理的な強制を加えており、拷問に等しい、とする報告書を作成しているという事実は見逃せません。
また、アムネスティ・インターナショナルも「世界の人権状況に関する年次報告書」で、「対テロ戦争を口実にした収容所での人権侵害」を告発しているといいます。
下記は、「驚くべきCIAの世論操作」ニコラス・スカウ:伊藤真訳(インターナショナル新書027)から抜萃したものですが、そうしたグアンタナモ収容所に対する国際世論の批判や非難をかわすために、アメリカがどのようなことを画策してきたかがよくわかると思います。
民主主義を装うアメリカの悪事に目を閉じていては、戦争はなくせない、と私は思います。
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第五章 グアンタナモ収容所の隠蔽工作
2001年9月、崩壊した世界貿易センタービルの瓦礫の粉塵が収まるや否や、公安国家アメリカは一連の秘密政策の実施に乗り出した。それらはいつ終わるとも知れない戦争と、世界規模で監視をし、身柄を拘束するシステムの急激な拡大へとつながった。CIAはホワイトハウスと国防総省の職員、および選りすぐりの憲法学者たちと密接に協力し合い、巨大なスパイ網や「囚人特例移送制度」を構築し、「秘密施設(ブラック・サイト)」における「強化型尋問」の蔓延などをもたらした。要するに「政府公認の誘拐」と「秘密収容所」における拷問だ。それもすべて国内法と国際法の枠組みの埒外で行うのである。このことはすでに広く報じられてきたが、この「超法規的」な制度の心臓部はキューバの南端、アメリカ最古在外米軍基地にある国防総省のグアンタナモ収容所だ。この施設には最重要クラスの囚人たちが収容されており、国際的にも極めて関心が高いだけに、この俗称「ギトモGitmo」を訪れる報道機関のために、当局は入念に演出した取材コースを設けた。
プロパガンダ一色のグアンタナモ収容所取材ツアー
「連中は、私たちを連れてきては手の込んだ芝居を打って、どれほどすばらしい施設かを見せようとしました」と『ポリティコ』誌の国防総省担当記者のブライアン・ベンダーは言った。オンラインニュースサイト『ヴァイス・ニュース』のジェイソン・レオポルドも何度かグアンタナモ収容所を取材したことがあるが、取材は事実上の「メディア向けのサーカス」とでも呼ぶべき代物だとして、ベンダーと同様の感想を抱いている。レオポルドは言う──情報操作どころの話じゃない。まったくプロパガンダと洗脳そのものだ。米軍が演出した『素晴らしい施設グアンタナモ』を見せられるだけだ。グアンタナモというのはそんな場所だ。『収容者にこんなにたくさんビデオ・ゲームや本があるんですよ。食事も見てください! 収容者たちにどんな食事を出しているか、ぜひ試食してみてください』なんて言う具合さ、ふざけんな、相手は監獄にぶち込まれているんだぞ、って言ってやりたいね」。
しかし、予想どおり、グアンタナモ収容所を訪れた記者たちの多くは軍のプロパガンダを喜んで鵜呑みにした。つまり「強いて言えば、グアンタナモの収容者は待遇がよすぎる」とまで思い込まされたのだ。レオポルドは、グアンタナモ収容所を紹介する記事の中で。国防総省独特の言い回しに騙されないよう注意したと述べている。例えば鉄製の足枷(アシカセ)は「人道的拘束具」、所内でハンガー・ストライキをやる収容者に使われることの多い、強制的な食料摂取は、「経腸栄養摂取(一般に、管を通して流動食や栄養剤などを胃や腸へ直接注入する方法)」と呼ばれるのだ。レオポルドは記者人生の中でも、グアンタナモの取材中ほど洗脳されているように感じたことはないと言う。「すべてがお芝居。何もかもがリハーサルどおりだった。どんなことをいうかまでリハーサル済みだ。当局は看守たちの発言もすべて決めて指示していたのさ。看守にインタビューする時は、必ず担当者が立ち合って聞き耳を立てている。それ以外には見学者の質問には答えさせない。グアンタナモほどの秘密主義は見たことがない。ブラックホールだよ」とレオポルドは取材を回想して言った。
2013年のある日、たまたま見学者はレオポルドだけということがあった。そのとき、国防総省のまやかしのベールの奥を垣間見ることができた。グアンタナモ収容所のメディア・センターで、案内係は席を外している数分間、一人きりになったのだ。「一人ぼっちでその部屋にいたとき、床にいろいろなカードが散乱しているのに気がついたんだ」と、レオポルドはそのときの様子を回想する。それを一枚を拾って、裏表の両面を読んでみた。これはすごい、とレオポルドは思った。「大発見だった。これだけでも収容所へ来た価値があったというものだ」とレオポルド。手にしていたのは広報官用の「スマート・カード」と呼ばれるもので、取材記者に対して、視察を認めるべきことと認めるべきでないことの指示が書かれていたのだ。
「しゃべってもよいこと」という項目には、打ち出すべきこと──安全、人道的で合法的、隠しごとなし」といったキャッチフレーズが書かれており、さらには「ある看守の一日」など、案内する際に使える「ストーリー」の案まで記されていた。「インタビューの主導権を握り、自信を失わないこと」などと指示するカードもあったし、「横道にそれないこと」として「重要収容者」、収容者の「自殺」、「弁護士の主張」や「捜査の結果」、それに「収容者の釈放に関する憶測」などは、いついかなるときも話題にしてはならない、とつけ加えてあった。カードの最後には「すべては記録に残ることに注意し、決して『ノーコメント』とは言わないこと」と、メディア関係者の案内役に念を押していた。
特別扱い扱いを受けた大手テレビ局──グアンタナモ収容所独占取材。
CBSの報道番組『シックスティ・ミニッツ』では、リポーターのレスリー・スタール記者の取材チームが収容所の見学ツアーを許可され、「前例のない取材許可」と称して放送した。それを見たレオポルドは、これがどういう経緯で許可されたものか、すぐに国防総省の広報部へ問い合わせた。国語総省が返答を拒むと、レオポルドは情報自由法に基づき、『シックスティ・ミニッツ』の取材陣の訪問に関するすべての電子メールその他のやり取りの公開を要求した。ほかの記者たちがグアンタナモへ行く時は気前のいい取材許可なんてもらえないとレオポルドは不満をこぼした。収容棟を見せられても空っぽだ。収容者の姿は遠くからしか見ることができない。だから『シックスティ・ミニッツ』の取材映像を見た時には目を疑い、冗談きついぜ、と思ったという。「騒々しい収容棟をレスリー・スタールが歩いていて収容者たちが『俺たちは拷問を受けている。ここから出してくれ』なんて叫んでいるわけだ。われわれにはこんな突っ込んだ取材は許可されなかった。いったいどうやってこんなことができたのか?」
情報自由法による開示請求をしてから二か月後。レオポルドは国防総省の広報部から苦情の電話を受けた。請求に対応するのに時間を浪費させられている、というのだ。「あなたがどうしてこんなことをしているのか説明してもらえませんかね。私があなたに『電子メールを全部見せろ』と言ったらどんな気がするか、教えて欲しいものですよ」と広報官はレオポルドに言った。
レオポルドは広報官に個人的な恨みがあるわけではない、と断った上で、「あなたの電子メールすべてを開示させられることになると思いませんでしたよ。私は(CBSが)どういう経緯で取材許可を得たのかを知りたいだけなのですよ」と伝えた。
レオポルドによれば、このあとに国防総省広報部から手痛いしっぺ返しを受けたという。国防総省は、レオポルドが請求した情報をライバル紙の記者にリークしてしまったのだ。レオポルド説明する──「私は情報自由法に基づいて文書の開示を請求した。するとやがてその文書は、競争相手の『マイアミ・ヘラルド』紙の記者に先に提供されてしまったんだ。どうしてそんなことになるかというと、『まあ、情報自由法で一旦解開示されてしまえば、誰でも閲覧可能になりますからね』と国防省はいうんだ。確かにそのとおり、そんなことは知ってる。でも、普通はそういうことにはならないはずだ。わたしは仕返しされたってわけさ。
評価、ありがとうございます。
私は、アメリカのやりたい放題を受け入れてはならないと思っています。