真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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プロパガンダの政治論、想像から妄想へ

2023年09月16日 | 日記

 「キューバ 超大国を屈服させたラテンの魂」伊藤千尋(高文研)のような本を読めば、アメリカという国がどういう国であるかが分かるように思います。
 極論すれば、アメリカは、圧倒的な軍事力や経済力を背景に、世界中の国々を、アメリカの影響下に置き、利益を吸い上げてきたということです。また、従わない国や抵抗する国は、武力を行使してつぶしてきたということです。
 だから、ロシアに対してもさまざまな工作や攻撃をしてきたことは間違いないと思います。
 現に、ロシアの主張を無視してNATOを拡大させ、ウクライナの政権を転覆して武器を配備し、合同軍事演習をくり返したのみならず、ノルドストリームの問題では、ウクライナ戦争のずっと前から、ロシア側に制裁を科していました。 

 ところが、驚くことに、メディアに登場する専門家と言われる人たちの多くは、そうした現実を無視し、ウクライナ戦争を主導するアメリカの存在を消し去って、ウクライナ戦争を論じているのです。
 それは、現実を直視し、ウクライナ戦争の経緯を踏まえて、ウクライナ戦争の分析や考察をすると、覇権や利益を失いつつあるアメリカの問題に帰着せざるを得ないからだと思います。

 例えば、ハーバード大学ウクライナ研究所長の歴史家のセルヒー・プロヒー教授は、ウクライナ戦争は「プーチンの戦争」などと言っています。
 そして、 
 「プーチンは明らかに、ソ連崩壊と、超大国の地位とその権威の失墜、ロシアが自領だと考える領土の喪失などに大いに不満を抱いてきた。これは『古典的なポスト・インペリアリズム・シンドローム』であり、プーチン本人がその象徴になったのです。ですから、ロシアの戦争はある程度、『プーチンの戦争』と言い換えることができるわけです
 とか、
こうした外国の中に自国を作り出すロシアの行動パターンには、「事態を激化させ、さらに強欲になっていく」傾向があるという。そして、そのプロセスが作用するには、「プーチン大統領」という個人的な要因が大きい。
 というのです。そして、ウクライナ戦争が、ロシアの大国回帰への欲望の結果であるかのようにいうのです。
 
 プーチン大統領個人の心の中を想像してウクライナ戦争を論じるのは、アメリカのプロパガンダに欠かせないことだからだろうと思います。そして、プーチン大統領を悪魔のような独裁者とするから、ロシアの人たちは恐くて逆らうことができないのだろうと、さらに想像が膨らみ、プーチン率いるロシアはつぶさなければならないということになるのだろうと思います。
 それは、極論すればプーチン個人の心の中の想像から、ロシアという国を理解する、妄想ともいうべき受け止め方だと思います。
 日本を含む西側諸国政府から停戦・和解の話が出て来ないのは、妄想の世界に入り込んでいるからではないかと思うのです。

 ウクライナ戦争の解説に登場する学者や研究者も、”プーチン大統領は、ウクライナがほしかったのです”などと、セルヒー・プロヒー教授と同じようなのようなことを語っていたことを忘れることができません。現実の諸問題から国民の意識を遠ざけ、想像や妄想の意識を共有すること、それが、アメリカの影響下にある日本の学者や研究者の務めになっているような気がします。

 下記は、「キューバ 超大国を屈服させたラテンの魂」伊藤千尋(高文研)からの抜萃ですが、なかに
モラレス(この国で初めての先住民出身の大統領)はボリビアのコカ生産組合の組合長でもあった。コカは麻薬であるコカインの原料にもなるが、もともとは日本茶と同じようなコカ茶の原料だ。ボリビアの人々は、日本人が日本茶を飲むように普段コカ茶を飲む。ところが、米国でコカインが流行すると、米国は茶畑を焼き払うように、ボリビア政府に要求した。米国べったりだったボリビア政府は軍を動員してコカ茶畑を火炎放射器で焼いたが、畑が広すぎて撲滅できない。すると米軍は畑の上空から枯葉剤をまいた。

 怒ったのがボリビアの人々だ。…”
 というような見逃せない記述があります。こういう過去を無かったことにしてはいけないと思います。

 先日朝日新聞は、松野官房長官が関東大震災当時の朝鮮人虐殺の記録は政府内に「見当たらない」と発言をしたことを、史実の歪曲として批判する記事を掲載しました。当然のことだと思います。

 だから私は、同じようにアメリカの戦争犯罪や国際法違反も、無かったことにしないでほしいと思うのです。
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                   Ⅰ章 キューバを取り巻く新しい世界

                  2 米国はなぜ国交回復に踏み切ったのか

                       米州の形勢逆転

 ベネズエラのチャベス
 こうした中で、最初に反米の旗を掲げたのが南米のベネズエラであった。
 1998年のベネズエラ大統領選挙で勝ったのは、「貧者の救済」を掲げたウゴ・チャベスだ。元軍人で、陸軍中佐の時にクーデターを起こして失敗し投獄されたが、国民の赦免運動で釈放された。このあたりの経歴は、キューバのカストロに似ている。彼は99年に大統領に就任すると、この国の唯一の収入源の石油から得られた利益を貧しい人々の生活支援に向けた。学校や診療所を建て、貧しい人が無料で治療を受け、学べるようにした。これもキューバ革命と同じだ。
 これはまずいと見た米国は2002年手を出した。CIAがおぜん立てをしてベネズエラの軍部にクーデターを起こさせたのだ。蜂起した軍が大統領官邸を占拠してチャアベス拉致し、経済界の代表が新大統領に就任したことをテレビで宣言した。チャベスは米国が差し回した飛行機で亡命させられるはずだった。
 これまでの中南米なら、これで片が付いたが、この時は違った。ベネズエラの多数の市民が大統領官邸を囲んで抗議行動を起こし、チャベスを支持する軍人が出動してクーデター派を官邸から追い出した。一時は死を覚悟したチャベスは救出され、大統領に返り咲いた。
 このとき、私は朝日新聞のロサンゼルス支局長をしていた。ベネズエラに取材に入ったとき、すでにクーデターは失敗していた。始まりから失敗までわずか30時間だ。クーデターを阻止したベネズエラ市民の力に驚嘆したが、それ以上に印象的だったのはCIAの実力の低下だ。
 過去の歴史でCIAが失敗したのは、キューバに反革命軍を侵攻させたピッグス湾事件くらいである。キューバの場合は革命政権が組織的に動いて反革命を撃退したが、ベネズエラでは市民が自発的に大衆行動を繰り広げて米国政府の謀略を阻止した。中南米の歴史上、画期的な事件である。
 これを機にチャベスはあからさまな反米、親キューバ路線に舵を切った。それは中南米が「反米大陸」になる先触れでもあった。

 反米政権ラッシュ
 この時期の中南米に生まれた大統領はいずれも個性的で、人間的にも面白い人たちだらけだ。
 チャベス政権転覆のクーデターが失敗した2002年、南米で最大の大国ブラジルの大統領に左翼労働党のルーラが当選し、翌2003年に就任した。彼は貧しい農家に生まれて7歳から靴磨きをし、小学校を中退して日系人のクリーニング店に住み込んで働いた苦労人である。
 労働組合運動で頭角を現し、軍政時代には地下活動しながらゼネスト指導した「お尋ね者」が大統領になったのだ。就任すると農地改革を進めた。ブラジルではかつてのキューバのような大土地所有制が続いていたが、貧しい農民が土地を手にした。同じ年、南米の大国アルゼンチンで左派のキルチネルが政権に就いた。貧しい大衆の味方として名高いエピータことエバ・ペロンの夫が率いたペロン党の代表である。 
 2004年には中米パナマでマルティン・トリホスが大統領に当選した。彼の父オマール・トリホスは民族主義者で、米国からパナマ運河を返還させる条約を結ぶことに成功したパナマの英雄だ。謎の飛行機事故で亡くなったが、この事故もCIAが黒幕にいるというわさが流れた。イギリスの小説家のグレアム・グリーンが『トリホス将軍の死』で書いている。
 同じ年、南米のウルグアイでは左派のバスケスが大統領に当選した。貧しい家庭の生まれで、少年時代は日雇いの肉体労働で家計を助けた。南米のスイスと呼ばれるほど豊かなこの国で、貧困層出身の初めての大統領だ。
 2005年には南米の中央部にあるボリビアで、明確に反米を掲げる社会主義運動党の党首、エボ・モラレスが大統領に当選した。この国で初めての先住民出身の大統領だ。彼は就任式のさい、こぶしを突き上げて「この闘いは、チェ・ゲバラに続くものだ」と叫んだ。ボリビアで戦死したゲバラの遺志を受け継ぐ意味を込めたのだ。
 モラレスはボリビアのコカ生産組合の組合長でもあった。コカは麻薬であるコカインの原料にもなるが、もともとは日本茶と同じようなコカ茶の原料だ。ボリビアの人々は、日本人が日本茶を飲むように普段コカ茶を飲む。ところが、米国でコカインが流行すると、米国は茶畑を焼き払うように、ボリビア政府に要求した。米国べったりだったボリビア政府は軍を動員してコカ茶畑を火炎放射器で焼いたが、畑が広すぎて撲滅できない。すると米軍は畑の上空から枯葉剤をまいた。
 怒ったのがボリビアの人々だ。それはそうだろう。たとえば日本の静岡や宇治の茶畑の上空に米軍が枯葉剤をまいたら日本人は怒るだろう。最も強く怒ったのがコカ茶を生産する農民だ。反対運動の先頭に立ったのがコカ茶生産組合で、その先頭にいたのが組合長のモラレスだ。
 なぜ米国のためにボリビアの伝統産業をつぶすのか、と彼は国民に訴えた。悪いのはコカを麻薬にするマフィアと、それを買う米国の消費者であり、コカ茶やコカを飲む人々に罪はない。米国のために国民を犠牲にするような政治ではなく、ボリビア国民のためになる政治に変えよう、と訴えて大統領選挙で勝ったのだ。
 2006年には南米三番目の大国チリで社会党のバチェレが当選した。チリで初の女性大統領だ。この国では1973年に軍部がクーデターを起こした。そのさいバチェレは逮捕、拷問され、のちに亡命を強いられた。彼女の父親は当時、空軍の司令官だったがクーデターに反対したため逮捕され、獄中の拷問で殺された人である。このクーデターを画策したのが米CIAだった。同じ年、南米ペルーでは中道左派、アメリカ革命人民同盟のガルシアが当選した。彼は1985年にも大統領となり、最も貧しい人々の政府となる」と宣言した。米国主導の国際通貨基金(IMF)に反発して債務の返済を拒否した人だ。

 左翼ゲリラが選挙で大統領に
 この年は中南米の国で大統領選が相次いだ。中米のニカラグアで勝利したのは左翼サンディニスタ民族解放戦線のオルテガだ。サンディニスタとは1920年代に米海兵隊のニカラグア駐留に反対してゲリラ戦を展開したサンディーノ将軍から生まれた名である。1979年の革命で政権を取ったさいに大統領に就任したのが、このオルテガだ。内戦が終了後は中道や右派が政権を握っていたが、オルテガは16年ぶりに政権に返り咲いた。
 同じ2006年にペルーの隣の。エクアドルでは反米左派のコレアが当選した。前の政権で経済相だったが米国との自由貿易協定に反対したため大臣を罷免され、かえって国民の人気を得た。コレアはやがてベネズエラのチャベスやボリビアのモラレスと共に反米の急先鋒となった。この年の国連総会でチャベスは当時のブッシュ米大統領を「悪魔」と呼んだが、コレアは「間抜けなブッシュと比べるなんて、悪魔に失礼だ」と言った。
 2007年には中米グアテマラで中道左派のコロンが当選した。この国は36年間にわたって内戦が続き、その後は米国の言うなりに動いていた元軍人ら右派勢力が三代続けて政権を握った。そこに社会民主主義を掲げる大統領が当選したのだ。2008年には南米パラグアイで中道左派連盟のルゴが当選した。それまでの61年間、「世界最長」と言われるほど長く保守政党が政権を握ってきた国は画期的な変化をした。ルゴは「貧者の司教」と呼ばれるカトリックの「解放の神学」派の神父だった。土地を持たない貧しい農民のために反政府デモをし、司教の地位を捨てて政治の世界に飛び込んだ人だ。
 2009年には中米エルサルバドルで内戦時代に左翼ゲリラだったファラブンド・マルティ民族解放戦線のフネスが当選した。武力革命は成功しえなかったゲリラが選挙で政権をとったのだ。同じ年、ウルグアイでムヒカが当選した。5年前に政権を握った左派が連続で当選したのだ。ムヒカも左翼ゲリラの出身である。キューバ革命の影響を受けて都市ゲリラに加わり、武装闘争の資金稼ぎのため強盗したこともある。国会議員時代にはヨレヨレのジーンズにオートバイで国会乗り付け、入るのを警備員に拒否されたこともある。大統領の給与の大半は貧しい人に寄付することを約束し、「世界でも最も貧しい大統領」を自認した。
 2011年には。ブラジルでルーラの後継者として女性のルセフが当選した。彼女も左翼ゲリラの出身である。軍事政権化で武力革命を主張し、資金稼ぎの銀行強盗を指揮した。逮捕、拷問され、国家反逆罪で3年投獄された人である。同年南米ペルーでは先住民の出身で、左派民族主義者のウマラが当選した。新自由主義からの転換を主張し、経済発展から取り残された人々のため、「貧困のないペルーを作る」と宣言した。
 こうした流れはその後も続き、2013年にはベネズエラでチャベスの後継者マドゥーロが当選した。

 新自由主義への反発
 なぜ中南米が左派や中道左派に変わったのだろうか。大きな原因は、米国に生まれ世界に広まった新自由主義の経済に対する反発だ。
 新自由主義とは簡単に言えば、すべての規制をなくして市場のなすがままにしようということだ。政治の経済への介入をなくして、金と欲望の赴くまま市場のなすに任せれば社会は反映するという考え方である。アダム・スミス以来の自由競争絵に描いたような原始的な資本主義だが、それでうまくいかなかったから、その後の世界はケインズ経済などさまざまな修正を重ねてきた。こうした歴史を忘れて、野獣のような戦国時代に戻ろうというのだ。金持ちがより金持ちになり、貧乏人を支配するのに都合のいい考え方である。
 それは国営企業の民営化、自由貿易という政策となって現れる。日本でも小泉首相の時代に郵政の民営化を進めたが、米国のおひざ元で自由主義が暴走した中南米では、郵政どころかあらゆる面で民営化が進んだ。
 典型的なのがボリビアだ。水道事業まで民営化した。「水道局」を競売にかけたらカネを持っている企業が落札し、水道料金が一挙に3倍になった。市民のためでなく企業がもうかればいいという考えだから、こうなる。国民は怒った。水は飲むだけでなく、洗濯にも洗面にも使う。水が「なければ生きていけない。「日本人よりよりおとなしい」と言われるボリビア国民が反政府行動に立ち上がった。
 全国で民営化に反対するデモや集会が起きた。放って置けば暴動に発展すると見た政府は、あわててまた国営化した。これで国民が気づいた。自分達が何もしなければ政治は変わらないが、行動すれば社会を変えることができるのだと。このときの市民の動きが激しかったことから、この現象は「水戦争」と呼ばれた。
 先に述べた。コカ茶をめぐる反政府運動の動きは「コカ戦争」と呼ばれた。その直後の大統領選挙で立候補したモラレスが米国や大企業のためでなく本当に国民のためになる政府にしようと訴えると、有権者はすんなり納得したのだ


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2 コメント

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Unknown (yoshi)
2023-09-19 11:38:20
ロシアはウクライナ侵攻しなければ北海道を攻めてきたと言われております。北海道を攻められないのは日米安保があるからです。なので、日本にとってアメリカはありがたい存在だと思います。
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ビックリです (syunrei hayashi)
2023-09-19 18:44:40
yoshi様

 今回のコメントには大きな問題があると思います。
日本は、関東大震災のとき、朝鮮人が井戸に毒を投げ入れているとか、朝鮮人が大挙して攻めて来るというようなデマに煽られて、いろいろなところで地域の自警団が組織され、大勢の朝鮮人や中国人、日本語をうまく話せなかった日本人障がい者や社会主義者などが殺されました。

>ロシアはウクライナ侵攻しなければ北海道を攻めてきたと言われております。

 などと言っているのは誰でしょうか? その情報にはどんな根拠があるのでしょうか? 同じ過ちをくり返してはならないと思いませんか? ありえないことだと思います。
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