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昆虫を餌に魚養殖

昆虫を餌に魚養殖
河北新報2024・9・5
魚粉高騰で商社挑戦
 
 住友商事と丸紅が、昆虫を餌にした魚の養殖に挑んでいる。従来餌に使用している魚粉が世界的に値上がりし、養殖業者の経営を圧迫していることが背景にある。昆虫の餌が普及すればコスト削減が期待される一方、消費者から敬遠される懸念があり、普及には時間がかかりそうだ。

 住友商事は2023年にシンガポールの企業と連携し、アブの一種であるアメリカミズアブの幼虫を粉末にした餌について国内での独占販売権を獲得した。今年5月から和歌山県白浜町の堅田漁協の協力を得て餌の一部を昆虫に代えて鯛を養殖している。同漁協の森本好春理事は「従来の餌より、むしろ昆虫で作られた方を好んで食べる。肉質にも変化はない」と話す。

 7月中旬の試食会には飲食店のほか加工業者や小売業者などを招いた。刺身などを提供したところ、
「直接昆虫を食べるわけではないので問題ない」
「脂が甘く感じた」などの意見が出た。

消費者の理解を得られるかが課題

 カタクチイワシなどを原料とする魚粉の輸入価格は20年平均で1キロ当たり145円だったが、今年1~4月平均は252円まで高騰した。漁獲量の減少に加え、魚への需要が高い中国やブラジルが高値で買っているためという。
住友商事の担当者は、「このままでは、国内の養殖業が衰退する」と指摘。
昆虫は飼育に、大きなスペースが必要なく、餌も安価なため、環境負荷が小さく、価格が安定している」とその意義を強調する。

 丸紅はフランスの企業からミルワーム(ゴミムシダマシ科の幼虫)を原料にした餌を輸入し、九州でブリの養殖試験に使用。本社ビルの飲食店で一時的に提供し、昆虫を使う意義に賛同する人から「今後も食べたい」と好評を得た。24年度中に消費者向けにテスト販売を実施する予定。課題は消費者の理解をいかに得るかだ。試食会でも「虫に対する忌避感はある」との声もあった。住友商事の担当者は「まずは理解してもらえる人達から輪を広げたい」と話す。
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