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ゴーンVS日産・ルノー最終戦争 7

ゴーンVS日産・ルノー最終戦争

開発コストを削り過ぎて安っぽい車に

 カルロス・ゴーン氏が経営トップとして君臨した20年間の中で2004年3月期の営業利益率11・1%が過去最高だった。ルノーのCEOを兼任するようになって『権力の一極集中』が始まった05年以降は、実は経営者としての『賞味期限』は切れかかっていた。07年3月期決算ではゴーン氏が来日以来、初の減益。厳しいコスト削減ばかりをするので、現場が疲弊していた。

 国内最大の生産拠点、九州工場に勤務していた社員が当時、筆者にこう語った。「06年冬のボーナス支給日に生産ラインで流れる車に蹴った跡が見つかり、現場は大騒ぎになった」。

 現場の不満が爆発したのだ。栃木工場では06年11月、気温が0度近くになっても、コスト削減の為に事務棟に暖房が入れられず、社員たちは防寒着を着て震えながら仕事をしていたそうだ。05~07年度の中期経営計画、「日産バリューアップで世界販売420万台の目標を掲げたが、ゴーン氏にとって初の『コミットメント(必達目標)』の未達。目標を1年先送りした。

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部下には厳しく責任追及するが、自分は言い訳ばかりだった。

肝心の『商品』を見ると、開発コストを削り過ぎるので、売れ筋のハイブリット車向けに投資が回らず安っぽい車しか出せなかった。この傾向は。「ゴーン流経営の負の遺産」として今でも続く。ゴーン氏の逮捕後、日産の業績悪化が顕著になったが、主な要因はドル箱の北米市場で魅力的な商品がないので、値引きして叩き売っているからだ。

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 これも今も続いているのだが、日産は利益を開発費には回さず、配当に回している。筆頭株主ルノーへの『ミルク補給』のためだ。日産株の配当利回りは6%近くある。今100万円分日産株に投資すると1年後に約6万円の配当を得られるという意味だ。トヨタ自動車の利回りは約3%台だ。

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 刑事事件となった虚偽記載や特別背任以外にもゴーン氏は会社の金で豪華邸宅を買い、非連結の会社から『裏報酬』を得て会社を私物化していた。この期に及んでゴーン氏を擁護している人たちは、実は株で儲けさせてもらった人たちが多いのではないか、と筆者は勘繰っている。

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 行き詰っていたゴーン氏に『神風』が吹いた。

08年のリーマン・ショックと11年の東日本大震災だ。得意の人員と開発コストの削減で「ゴーン流」がよみがえったのだ。12年3月期決算ではトヨタやホンダも減収減益となる中で、日産だけが増収増益となった。

しかし、『化けの皮』が剥がれてしまった。

その後は、業績下方修正を繰り返すようになり、13年11月にゴーン氏はその責任を志賀俊之最高執行責任者(COO)に押し付けて解任。自分は知らん顔で経営トップに君臨し続けた。続く

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