安倍氏がかなり過激な表現で、インフレターゲット論を展開するため、マスコミ、評論家入り乱れての論戦となっている。それ自体はとてもいいことだろう。金融政策が選挙の争点になったというのは、トレードするものにとってもうれしいことだ。自民党の公約に日銀法改正への方向性も盛り込まれたらしい。
さて、問題は、安倍氏の意見がどの程度妥当かということだが、これはそういうわけでいろいろな論がある。日銀総裁はもちろん大反対で、これ以上何もできないし、すると危険だという説。多くの新聞等もこれに賛成のようだ。
安倍氏の論がどうやらそのブレーンである三橋氏の示唆によるものらしいことが明確になってきて、その点からも、いろいろと反論も出ているようだ。確かに、三橋氏の意見はやや扇動主義的な表現があり、それを安倍氏が少し消化不良で述べている部分があって誤解を助長しているような気もするが、「現在の課題は財政再建よりもまずは金融緩和」という一点について考えるなら、それは正しいと考えられる。
安倍氏のFacebookで引用されている、イェール大学の浜田教授の意見
「ゴルフにたとえれば、今の日銀は雇用改善、景気回復という目標のホールを目指さずに、ホールの向こう側には<ありもしない>崖があると称して、バンカーに入ったボールをホールの方向に打たない、あるいはパターでしか打たないゴルファーのようなものです。」
というのは妥当な見解だと思う。
また、BLOGOSで小幡績氏が紹介する、「ある官僚」氏からの意見にある方法
「要は引き締め+デフレで先を見ても落ちはない、というかハードランディングのやりかたがどんどん厳しくなるから、早めに不時着?するよう、シニョレージ(やまは注、通貨発行益)をある程度使ってあらゆるやり方でデフレを反転させるべきでしょう。」
もひとつの哲学だ。ある官僚氏も言うようにいろいろなインフレターゲット的手法はあるものと思う。ここで、それを使っていけない理由はないと考える。このあたり、今後の選挙戦で論理的な方法で各政党が論議を戦わせてもらいたい中心的なテーマであると思う。
しかし、どう考えても、極端としか思えない論(下のロイターの伝えるもの等)が横行しているのは、何か裏があるかとでも思ってしまう。陰謀論ではないが。笑
「みずほコーポレート銀行国際為替部マーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏はハンガリーの例を挙げ「昨年12月、ハンガリー議会はハンガリー中銀総裁が持つ副総裁の指名権限を剥奪し、政策金利を決定する委員会は3人目の副総裁を置くことで拡大するという中銀への規制法案を可決した。これを受けてIMF/EUは進行中のハンガリーへの金融支援を停止し、格付け機関も同国国債をジャンク級へ格下げ、ハンガリーフォリントも急落するなど徹底的に洗礼を浴びた」と指摘。安倍総裁が口にしているような(中略)スタンスが日銀総裁の人事権まで包括するようなものになった場合、円相場が金融危機後に経験したことのないような急落に見舞われる可能性は否定できない」と懸念を示した。」
ハンガリーと言えば、通貨史では、ギネスにも載る史上最悪のインフレを起こした国として有名である。現在の財政状況もきわめて芳しくない。日本と比較して云々すること自体、ナンセンスとしか言いようがないだろう。
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ハンガリーを引き合いに出すのは筋違いとのご意見に賛成です。
日本は大戦前夜、1$=4円台だったと聞いています。終戦後も、1$=360円です。敗戦しても、2桁しかインフレが進んでいません。
ハンガリーやドイツとは状況が違いますよね。
アベさん発言に対してハイパーインフレ論者が「仕事じゃ!仕事じゃ!」と色めき立っているのを生暖かい目で観ておりますw
戦後日本は確かにハイパーインフレにはなりましたが(戦前も何度かなってたはずですが)当時とは環境が違い過ぎます。
今まで政治の舞台であまり議論されづらかったテーマですんでドンドンやってもらえばいいなあと思っております。
かく云う私も円安ポジションですが、ひとつ水を差すと、この円安はいよいよ地獄の扉が開かれたのだと思います。
バブル崩壊後の停滞の中でも20年続いた円高は、実は冷戦時代に世界最強だった日本経済の余熱に過ぎないのですが、いよいよ遺産を食い潰し、破綻への坂道を転げ始めたということでしょう。
日本の停滞は社会資本を非効率な公的部門が食いつぶす構造的問題なので円安で解決することはありません。
企業収益が回復しても、増税路線で国内需要は減少し、高齢化で労働生産性が低下する中、国内の投資を増やす企業はありません。
海外投資という資本流出が進み、雇用と技術は失われ、その趨勢はやがて加速度的な円安を招きます。若林説の1ドル=360円への回帰もあながち夢想ではありません。
そのような円安が何をもたらすか想像できませんが、決して幸福でないことは確かです。
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPTYE8AJ01R20121120
ハイパーインフレ論はどう考えても極端かと思います。マスコミが全部日銀擁護なのは面白いですね。
ネオさん
おっしゃる懸念はごもっともです。
戦後の経済発展が円高サイクルなら、その逆は経済衰退という可能性も確かにあると思います。ただ、明治始めの1ドル=1円から、戦後まではずっと円安トレンドだったわけで、その間日本は発展してきました。ですから、発展と為替は別ものかもしれません。まだわかりませんが、可能性としては、前者の方が高いとは思います。
少佐さん
そうですね。まずは呼び水としての金融緩和は必要でしょうが、内需拡大によって、信用創造を引き起こさないと無駄になってしまいます。その後が重要でしょう。
アルピーヌさん
そうですね。同一人物とは思えないほど、こちらは理路整然としてます。やはり、あちらの記事はなにかの陰謀?笑
Unknownさん
そうですか。池田信夫氏のtwitで、安倍氏の中の人からの情報として、三橋氏がレクチャしていると書いていたので、信用していました。
孫引きですのでご容赦下さい。この部分は、飛ばして読んでいただいても論旨は同じです。
https://jp.twitter.com/ikedanob/status/271148207826927616
誤解を与えたようですが、私は大規模な金融緩和に賛成です。
理由はそれが儲けのチャンスだからです。
先の投稿は、相場予測のために起きていることの意味を考察し論理的に導き出した推論に過ぎません。
安倍さんの金融緩和論は日銀による無限の財政ファイナンスの他ならないのですが、
いよいよ実施されるなら、政府がそこまで追い詰められた証左でしょう。
端的に言えば、政府に現金がないのです。
日本のマネーストックは1400兆円と言われていますが、この10年ほとんど増えていません。
財政赤字で400兆円のマネーが供給されたにもかかわらず。
つまり、どこからかマネーが漏れ出しているですが、その理由は別にして、
結果的に国内のマネーストックで財政ファイナンスできない状況になっています。
そこで狂気の消費税増税ですが、当然国民の反発は強い。
いよいよ頼るのは無限マネー創造機=日銀ですが、次の手はありません。
IMFもとても無理でしょう。
中央銀行が最後の貸し手といわれる本当の意味はこれです。
今年3月立ち上がりかけた株式相場を潰したのは年金の売りだったのですが、換金できるもは全て売りたい思うほど政府は困っています。
三橋さんは日本は純資産がプラスだから大丈夫などと主張していますが、
資産に計上されている財政投融資も米国債も海外投資残も現金化できない架空のマネーなので現金が必要な時には役に立ちません。
最後の手段に手を出すということは、最後が近づいるということです。
帰結は政府の瓦解と信用の失墜、結果としてのハイパーインフレという推論です。
その推論にもとづき、長期的に円安、株高、金高のポジションをとっていくつもりです。
むしろ、円安への歴史的転換を予想される皆さんが、その意味をどのように捉えているのかとても興味があります。
ハイパーインフレの定義(物価上昇率 年率13000%)も知らずに、安倍氏の大胆発言以降、某大学の経済学部の准教授までがトンチンカンな説で日本のハイパーインフレについて力説していますが、ハイパーインフレの負のイメージだけでで知識のない一般人をプロパガンダしているように思えます。
もういい加減、古典的経済学では現在の経済は計れないことを認識するべきですね。
リーマン以降、米英は凄まじい勢いで(米3倍、英4倍)マネタリーベースを増やしていますが、短期間でこれだけ金融緩和をすると通貨の希薄化とともに信任が落ちて、国債の信用力も当然落ちるはずなのですが、米国債の金利は逆に史上稀にみる低金利で推移しています。
その米国の金融政策ですが、もちろんQEで金融緩和を未来永劫続けれるとは思いませんし、米国保守派の牽制もありますのでまずはないと思いますが、もし仮にQEを続けざるを得ない状況が続いたと仮定しても、いよいよの時が来れば新ドル発行でファイナンスすればよいだけのことだと思います。
米国だけではなく先進国の多くが同等の政策を行っている昨今、それに対抗するのに日銀の現在の金融政策を続けることでこの国の未来はありますか?
安倍氏の金融政策は今や世界の常識であり、日本の非常識とならないように反安倍勢力のプロパガンダには正しい知識を持って対処するべきだと思います。
有益なお話ばかりで、大変に助かりますね。ブログをやっていてよかったと思います。
特に付け加えることもありません。よろしくお願い致します。
(左のリンクの石原さんの今日の記事です。)
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/market/opinion/ishihara/ishihara_20121122.html