トシの読書日記

読書備忘録

どん詰まりからのしぶとさ

2014-07-04 15:39:25 | ま行の作家
バーナード・マラマッド著 阿部公彦訳「魔法の樽」読了



これも姉借り本です。「書評空間」という紀伊國屋がやっている書評のサイトがあるんですが、そこで書評をしているうちの一人に阿部公彦がいて、その人の書評がめっぽう面白いんですね。思わず買って読みたくなる書評を書きます。それを姉に教えたところ、姉もこの人のファンになったようで、本書もその経緯で買ったのでは、と思われます。



著者のマラマッドはアメリカの人で、1950~70年代に活躍した作家のようで、元号でいうと昭和30~50年代ということで、少し昔の人なんですね。この短編集の中にもそのあたりの時代が色濃く反映されています。


内容はというとなかなか面白かったです。派手な印象はなく、むしろ地味で控えめな空気が漂う世界なんですが、そこはかとないユーモアもあり、なかなか読ませる作家という印象でした。


どの作品もそうなんですが、貧乏で生活に困窮している人、仕事に行き詰っている人、結婚したくてもできない人等、ネガティブな内容が多いんですが、どっこい生きている、みたいなしぶとさがそこにはあり、それが救いになっています。全くのアンチクライマックスで終わってしまうものもありましたが。


とまれ、今までの自分の読書経験にない、毛色の変わった作品を読ませてもらい、それなりに堪能させてもらいました。

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