このたびの諫早訪問は、アールブリュット作家の犬塚弘さんに会うのが目的である。作品のモチーフは日本酒の瓶で、これまでに600点以上もの作品を描いている。2019年12月には「犬塚弘絵画展 酒びん×人生」との題の個展を開催されており、どこか暖かく味のある作風に注目も高まっている。犬塚さんが入所している社会福祉法人南高愛隣会・諫早事務所にお邪魔して、まずはご担当の方から略歴やなぜ酒瓶に関心を持たれたかなどを、映像を交えて伺った。
犬塚さんは長崎県伊江島の漁師の家に、6人兄弟の4番目に生まれた。5歳で自閉症と診断されたのだが、4歳時に生まれて初めて発した言葉が「さけ」というぐらい、幼い頃から酒瓶への興味が強かった。本人から理由が語られない中、父がよく宴会をしていていつも酒瓶が身近にあったこと、ラベルの和アートな造形に惹かれたからなどと、周囲の方々が推察している。いずれにせよ、子供の頃から「おもちゃより酒瓶」が好みで、当時は近所の酒屋や他の家までラベルを取りに行っていたため、親は謝りに回り大変だったとのエピソードも残っている。
犬塚さんが絵を描き始めたのも、酒瓶に興味を持ち始めた5歳からと早い。そのためか幼少期に描いた絵にはかならず、酒瓶がどこかに描かれている。伊王島の風景、祭りの縁日、運動会など。運動会の絵といっても弁当のアップで、親が近所の仲間と飲みながら見ていたのだろう。15歳の時に当所に入所した際、焼酎工場を見学したのがきっかけで酒蔵巡りを始め、25歳でグループホームに移った頃から本格化。並行して描き続けた酒瓶の絵が、次第にアウトサイダーアート(芸術的教育を受けていない人が無心に創作する美術作品)として見出され、2014年に46歳でアールブリュット作家となるに至ったのである。
以後は2016年にアールブリュットフェスティバル入選、そして2018年12月のアールブリュットフェスティバル2018の際、長崎県立美術館での冒頭に記した個展の開催が決定する。2019年12月24〜28日の5日間で、1500人が来場する大成功だった。この時、伊王島からも多くの人が来訪し、中にはかつての同級生をはじめ、瓶を持っていかれた酒屋、疎縁になっていた兄弟の姿もあったという。往時の犬塚さんを知る方々に対し、まさに故郷に錦を飾り、かつ世に出たことを知っててもらった、晴れの場であったことが窺い知れる。
現在、犬塚さんは、障害者の活動の講演、伝道、広報を行う南高愛隣会の「夢大使」を務めて3期目になる。氏の活動が同様の境遇、いわば突出した才能を持った方々にとって、誇り高く生きるための発信のきっかけになっていけば、と思う。では犬塚さんに、実際に酒瓶の絵を描いてもらいましょう。続きます。
犬塚さんは長崎県伊江島の漁師の家に、6人兄弟の4番目に生まれた。5歳で自閉症と診断されたのだが、4歳時に生まれて初めて発した言葉が「さけ」というぐらい、幼い頃から酒瓶への興味が強かった。本人から理由が語られない中、父がよく宴会をしていていつも酒瓶が身近にあったこと、ラベルの和アートな造形に惹かれたからなどと、周囲の方々が推察している。いずれにせよ、子供の頃から「おもちゃより酒瓶」が好みで、当時は近所の酒屋や他の家までラベルを取りに行っていたため、親は謝りに回り大変だったとのエピソードも残っている。
犬塚さんが絵を描き始めたのも、酒瓶に興味を持ち始めた5歳からと早い。そのためか幼少期に描いた絵にはかならず、酒瓶がどこかに描かれている。伊王島の風景、祭りの縁日、運動会など。運動会の絵といっても弁当のアップで、親が近所の仲間と飲みながら見ていたのだろう。15歳の時に当所に入所した際、焼酎工場を見学したのがきっかけで酒蔵巡りを始め、25歳でグループホームに移った頃から本格化。並行して描き続けた酒瓶の絵が、次第にアウトサイダーアート(芸術的教育を受けていない人が無心に創作する美術作品)として見出され、2014年に46歳でアールブリュット作家となるに至ったのである。
以後は2016年にアールブリュットフェスティバル入選、そして2018年12月のアールブリュットフェスティバル2018の際、長崎県立美術館での冒頭に記した個展の開催が決定する。2019年12月24〜28日の5日間で、1500人が来場する大成功だった。この時、伊王島からも多くの人が来訪し、中にはかつての同級生をはじめ、瓶を持っていかれた酒屋、疎縁になっていた兄弟の姿もあったという。往時の犬塚さんを知る方々に対し、まさに故郷に錦を飾り、かつ世に出たことを知っててもらった、晴れの場であったことが窺い知れる。
現在、犬塚さんは、障害者の活動の講演、伝道、広報を行う南高愛隣会の「夢大使」を務めて3期目になる。氏の活動が同様の境遇、いわば突出した才能を持った方々にとって、誇り高く生きるための発信のきっかけになっていけば、と思う。では犬塚さんに、実際に酒瓶の絵を描いてもらいましょう。続きます。