ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ホテルニューグローバル@本諫早

2020年03月17日 | てくてくさんぽ・取材紀行
今宵の宿は、市街を流れる本明川に面したホテル。珍しく二食付きのプランにしたのは、夜の街をほっつき歩くなどまかりならぬ缶詰ミッションが、このあと待っているからだ。飲み屋街にあるのに、繁華街のど真ん中なのに。

いかにもビジネスホテル風の定食の中に、ご当地名物島原素麺があるので嬉々としたら、単なる豚鍋の白滝だったりする。ムニエルのカレイは有明海の珍魚クツゾコかと期待したら、余所者のカラスガレイだったりする。いつもは地魚を出しているそうだが、最近漁獲が少ないもので、とおばちゃんが申し訳なさそうに補足してくれた。いえいえ美味しゅうございました。

南高愛隣会・犬塚弘さん探訪3

2020年03月17日 | てくてくさんぽ・取材紀行
アールブリュット作家 犬塚弘さんを訪ねて。犬塚さんにお話を伺いつつ酒瓶の絵まで書いてもらったところで、いったん犬塚さんとは分かれてクルマで雲仙市へと移動。犬塚さんが日常を過ごしている南高愛隣会の施設を訪ね、作品制作の環境を見てみることにする。

犬塚さんは西郷地区にあるグループホームで暮らしており、日中は生活介護施設「わくわく」で過ごしている。午前中は仕事として、全地区の各施設へ弁当の配達を行う。昼食を食べた後、午後はレクリエーションなどでゆったり過ごし、入浴・休憩後16時前に送迎を利用して西郷のグループホームへと帰る。「わくわく」での滞在時間は長いながら、犬塚さんはここでは絵は描かない。ここは絵を描くほかにも楽しみがあることに加え、絵は自分の空間で描きたい気持ちが強く、創作の場とここは別と捉えているそうである。

その創作の場が、絵画レクリエーション施設「ふたば工房」で月2回、土曜日の午後に行われるアートクラブである。「わくわく」の活動の一環で毎回13名ほどの参加があり、犬塚さんは欠かさず参加している。参加者は共同スペースでそれぞれ自由に絵を描き、犬塚さんは一緒に書いたり別室の個室を利用したりしているそうである。犬塚さんはここが創作の場所との意識があるようなので、現在ひと部屋を専用アトリエに整備中。部屋には犬塚さんの絵や酒瓶を飾る予定という。

ほか、共同スペースや階段の壁面には犬塚さん以外の方の作品が飾られ、こちらも独特の造形に見入ってしまう。ベーコンやフルーツパフェなどをコンパクトに描く人、機関車を細かい部品まで精緻に描く人、四角い色パネル模様を描き組み合わせた人など。ベーコンの絵の方は自傷他害の傾向があったそうだが、絵を書き始めてからほぼなくなったそう。さらに会が製造する菓子のラベルに氏の絵が使われ、収入が得られ出すと本人と家族にもさらに変化が出てきたという。絵のスキルが自尊心と自立に結びついたようで、犬塚さんに続く好例となるのを期待したい。ちなみにアートクラブの参加者にとって、犬塚さんの絵は「真似できない存在」なのだとか。

最後に、グループホームの犬塚さんの部屋も訪れてみた。2階の1室に暮らしていて、部屋にはアルバムがいっぱい積まれているのが目に入る。見せてもらうと酒蔵巡りをした際の記録で、壱岐などの蔵や働く人、同行した南高愛隣会の方と撮った写真が多数貼られていた。写真のほか新聞や広告も目立ち、同行者や思い出を記録するために犬塚さんが独自に選んでいるようだ。またこの施設の人に聞いたところ、色紙はこの自室で書いているそうである。出会った方へ送るメッセージは、やはり自らが一番落ち着く場所から、気持ちを込めて贈っているのだろう。

今日のミッションはここで終了、明日は犬塚さんと懇意にしている酒蔵巡りにご一緒します。

南高愛隣会・犬塚弘さん探訪2

2020年03月17日 | てくてくさんぽ・取材紀行
アールブリュット作家 犬塚弘さんを訪ねて。概要を担当の方に説明頂いた後、犬塚さんにも同席いただいた。氏の創作において凄いのは、何と言っても情報の収集力と記憶力。見ながら模写するのではなく、見て聞いて頭に刻んだことを描き出すのが、犬塚さんのスタイルなのである。

挨拶ののち、東京から来た旨を伝えたら、「澤乃井」をはじめ矢継ぎ早に東京と埼玉の銘柄が出てくるのはさすが。流れで長野の酒の話になり、諏訪の「真澄」が好きだと挙げたら、持参されてきたスケッチブックと画材一式を持ち出され、なんと目の前で描いてくださることになった。犬塚さん、道具へのこだわりが結構強く、ボールペンはジェットストリーム、マジックはマッキーなほか、36色の色鉛筆にクレヨンにスケッチブックも、いつも持ち歩く決まりのものを使うのだそうだ。

犬塚さんの絵のもうひとつの凄さとして、書き上がるまでわずか10分と早いことが挙げられる。鉛筆で一升瓶の外形をするすると型取り、中央に銘柄ラベルを仕切ってデザインを書込み。銘柄をマジックで太く書き込んだら、等級ラベルを書き上げて銘柄名のまわりを赤く塗り込んでいく。瓶を透明感ある薄水色で彩色したら、絵はできあがりだ。一瞬で記憶した情報だけを元に書いているから、線がなめらかで躍動感がある。迷い、無駄、やり直しはまったくなく、集中力すごく手が一切止まらないのも見ていて気持ちがいい。

そして犬塚さんの酒瓶画の真骨頂は、まさにここから。瓶の周囲の余白に、この酒の関連情報がびっしりと書き込まれていく。酒蔵名に住所、電話番号、分量ごとの値段など、これだけで十分な酒蔵情報になる精度である。目と耳から入ってきた情報はすべて描き切るのが、犬塚さんの作風のもうひとつの特徴だ。瓶とまわりの文字類のバランスが独特で、文字は文字情報としてではなく「画」と認識して再現しているから、字体も筆の流れもかえって現物によく似ている。

これらの文字は、本から得た情報や店頭に並んだ瓶を見て得た情報に加え、酒蔵巡りをした際には蔵元から聞いた話も全て記される。なので話の流れで出た蔵元の年齢や家族構成などまで書き込まれた「個人情報つき」になることもしょっちゅうなのだとか。犬塚さんはこれら全てを自身の頭の中に整理・記憶して描くため、かなりのエネルギーを使っている。無欲、かつただ好きだからできる能力とはいえ、早く書き上げるのはそれだけ集中力とパワーが必要だからとも言えるのだろう。

いよいよ仕上がりに近づき、書き込まれる文字を追うとなんと、自分の名前と住所が添えられていく。さっきの自己紹介を、もう頭に刻んでもらえているのだ。犬塚さんは酒瓶画のほかにも、色紙作りもお上手で、知り合った人へのお礼や祝いに、ラベルを貼り季節やその人との思い出を記して送っているそうだ。描いたものに対して相手が喜ぶのが嬉しいから、とのことで、言葉ではないメッセージながら覚えてもらえる側も嬉しい。

この様子は映像でも記録したので、おいおいアップします。では、普段犬塚さんが過ごしている各施設を巡り、作品への造形をさらに深めていきましょう。

南高愛隣会・犬塚弘さん探訪1

2020年03月17日 | てくてくさんぽ・取材紀行
このたびの諫早訪問は、アールブリュット作家の犬塚弘さんに会うのが目的である。作品のモチーフは日本酒の瓶で、これまでに600点以上もの作品を描いている。2019年12月には「犬塚弘絵画展 酒びん×人生」との題の個展を開催されており、どこか暖かく味のある作風に注目も高まっている。犬塚さんが入所している社会福祉法人南高愛隣会・諫早事務所にお邪魔して、まずはご担当の方から略歴やなぜ酒瓶に関心を持たれたかなどを、映像を交えて伺った。

犬塚さんは長崎県伊江島の漁師の家に、6人兄弟の4番目に生まれた。5歳で自閉症と診断されたのだが、4歳時に生まれて初めて発した言葉が「さけ」というぐらい、幼い頃から酒瓶への興味が強かった。本人から理由が語られない中、父がよく宴会をしていていつも酒瓶が身近にあったこと、ラベルの和アートな造形に惹かれたからなどと、周囲の方々が推察している。いずれにせよ、子供の頃から「おもちゃより酒瓶」が好みで、当時は近所の酒屋や他の家までラベルを取りに行っていたため、親は謝りに回り大変だったとのエピソードも残っている。

犬塚さんが絵を描き始めたのも、酒瓶に興味を持ち始めた5歳からと早い。そのためか幼少期に描いた絵にはかならず、酒瓶がどこかに描かれている。伊王島の風景、祭りの縁日、運動会など。運動会の絵といっても弁当のアップで、親が近所の仲間と飲みながら見ていたのだろう。15歳の時に当所に入所した際、焼酎工場を見学したのがきっかけで酒蔵巡りを始め、25歳でグループホームに移った頃から本格化。並行して描き続けた酒瓶の絵が、次第にアウトサイダーアート(芸術的教育を受けていない人が無心に創作する美術作品)として見出され、2014年に46歳でアールブリュット作家となるに至ったのである。

以後は2016年にアールブリュットフェスティバル入選、そして2018年12月のアールブリュットフェスティバル2018の際、長崎県立美術館での冒頭に記した個展の開催が決定する。2019年12月24〜28日の5日間で、1500人が来場する大成功だった。この時、伊王島からも多くの人が来訪し、中にはかつての同級生をはじめ、瓶を持っていかれた酒屋、疎縁になっていた兄弟の姿もあったという。往時の犬塚さんを知る方々に対し、まさに故郷に錦を飾り、かつ世に出たことを知っててもらった、晴れの場であったことが窺い知れる。

現在、犬塚さんは、障害者の活動の講演、伝道、広報を行う南高愛隣会の「夢大使」を務めて3期目になる。氏の活動が同様の境遇、いわば突出した才能を持った方々にとって、誇り高く生きるための発信のきっかけになっていけば、と思う。では犬塚さんに、実際に酒瓶の絵を描いてもらいましょう。続きます。

コーヒーショップAB-ABの高菜ピラフ@諫早駅前

2020年03月17日 | 旅で出会った食メモ
巷で街中華が流行っているようだが、場末感とローカル感では「町の片隅喫茶」も負けてはいない。スタバもドトールもエクセルもない駅前、喫茶するなら選択肢がここしかないという裏路地に、いい鄙び感の構えを見かけて腰を据えた。手書きのメニュー、ビデオゲームのテーブル、壁に貼られたコーヒー自慢。うん、こうでなきゃ。

で、こういう店の軽食は、まず外すことはない。オーダーを取りに来たおばちゃんの手作りであろうこちら、家庭の昼ごはんっぽいこれで充分的なあり方がまたよい。プレーンではなく高菜に走るところに、ご当地的タグづけを振り切れない自分がいるのだが。