本牧漁港から本牧の市街へは、再びだだっ広く閑散とした埠頭の中を歩く。漁港といえば魚食堂でのランチが楽しみなのだが、かつて港内で水揚げされた魚料理を出していた「叶屋」は、数年前に閉店。埠頭で見かけた「波止場食堂」にも寄ってみたものの、メニューはハンバーグにトンカツにカレーなど、トラック運転手のエネルギー補給用。あたりはかつて海だった埋立地で漁師町があったわけでなく、界隈での地魚のご飯は期待できなさそうである。
再び産業道路を渡りかつての陸地へと戻れば、米軍の接収解除後に区間整理された街区へと入っていく。コンテナ埠頭から一転してスペイン風の街並みになるが、どちらの景色も今の本牧。中心部まで行けば飲食店も見つかるだろうと、本牧通りまで出たところ、商業施設「マイカル本牧」の並びに「本牧天丼」とのメニューを掲げた店を見つけた。ネーミングのローカルさにひかれて、この「玉家」にて漁港さんぽ後の昼食とした。
黒塗りのテーブル席が並ぶ店内は一見、そば屋のようにも見える。奥には中国料理店にある丸テーブルも配置されるなど、業種も国籍も不明だ。店の能書きによると、関係者に華僑の方がいる縁で、和食と中華をそれぞれ味わえる狙いなのだという。品書きの表紙には「日中友好食処」とあり、めくるとそば、ラーメン、丼もの、中華と確かに幅広い。「昔ながらの本牧の味」との項にはサンマーメン、もやし焼きそばも並び、ハマのローカルフードもしっかりカバー。本牧に根付いた店らしさが感じられ、これは期待できそうだ。
目当ての本牧天丼を注文する前に、店のお姉さんにタネを尋ねると、穴子、キス、スミイカなど地魚を中心とした盛り合わせとのこと。運ばれてきた大振りの丼には、これらに加えカボチャ、ナス、オクラも盛られ、ボリューム感に気分が盛り上がる。キスからいくと、艶々の白身がしっとり、ホロリと上品。スミイカは分厚く対照的にブッツリ、淡い甘さが広がってはスッとひいていく。そしてアナゴは薄めながら身がキュッと締まっており、後味にほのかに土の香りがする。いずれも色の濃い江戸前のつゆに負けず、東京湾の個性的味わいを主張しているかのようだ。
扱う料理の範囲が幅広い「町中華」ながら、この店の売りのひとつは、本牧水揚げの魚介だ。本牧漁港を拠点に操業する漁師から直接仕入れた、文字通り本牧の地魚料理を提供。品書きには地魚刺身三点盛りもあり、大衆的な雰囲気から市場食堂のようにも思えてしまう。天丼もこれら魚介を胡麻油でサッと揚げ、代々受け継がれたタレにくぐらした人気の品。魚種は季節により変わり、ほかイシモチ、スズキ、夏場は運がいいと高級ダネのギンポが入ることもあるそうだ。ネーミングに違わぬ、本牧の季節の魚食を伝える逸品といえる。
店は大正期創業の老舗で、店内には戦前の店先付近の懐かしい写真が掲示されている。市電の本牧三渓園終点の写真も見られ、埋め立て前のこの頃はまだ界隈に浜の風情もあったことだろう。きれいに整備された街並みにある地魚食堂と、かつて海だった埠頭の片隅にある漁港。戦後の変遷といまの漁業事情を合わせて思う、本牧のローカル魚さんぽである。
再び産業道路を渡りかつての陸地へと戻れば、米軍の接収解除後に区間整理された街区へと入っていく。コンテナ埠頭から一転してスペイン風の街並みになるが、どちらの景色も今の本牧。中心部まで行けば飲食店も見つかるだろうと、本牧通りまで出たところ、商業施設「マイカル本牧」の並びに「本牧天丼」とのメニューを掲げた店を見つけた。ネーミングのローカルさにひかれて、この「玉家」にて漁港さんぽ後の昼食とした。
黒塗りのテーブル席が並ぶ店内は一見、そば屋のようにも見える。奥には中国料理店にある丸テーブルも配置されるなど、業種も国籍も不明だ。店の能書きによると、関係者に華僑の方がいる縁で、和食と中華をそれぞれ味わえる狙いなのだという。品書きの表紙には「日中友好食処」とあり、めくるとそば、ラーメン、丼もの、中華と確かに幅広い。「昔ながらの本牧の味」との項にはサンマーメン、もやし焼きそばも並び、ハマのローカルフードもしっかりカバー。本牧に根付いた店らしさが感じられ、これは期待できそうだ。
目当ての本牧天丼を注文する前に、店のお姉さんにタネを尋ねると、穴子、キス、スミイカなど地魚を中心とした盛り合わせとのこと。運ばれてきた大振りの丼には、これらに加えカボチャ、ナス、オクラも盛られ、ボリューム感に気分が盛り上がる。キスからいくと、艶々の白身がしっとり、ホロリと上品。スミイカは分厚く対照的にブッツリ、淡い甘さが広がってはスッとひいていく。そしてアナゴは薄めながら身がキュッと締まっており、後味にほのかに土の香りがする。いずれも色の濃い江戸前のつゆに負けず、東京湾の個性的味わいを主張しているかのようだ。
扱う料理の範囲が幅広い「町中華」ながら、この店の売りのひとつは、本牧水揚げの魚介だ。本牧漁港を拠点に操業する漁師から直接仕入れた、文字通り本牧の地魚料理を提供。品書きには地魚刺身三点盛りもあり、大衆的な雰囲気から市場食堂のようにも思えてしまう。天丼もこれら魚介を胡麻油でサッと揚げ、代々受け継がれたタレにくぐらした人気の品。魚種は季節により変わり、ほかイシモチ、スズキ、夏場は運がいいと高級ダネのギンポが入ることもあるそうだ。ネーミングに違わぬ、本牧の季節の魚食を伝える逸品といえる。
店は大正期創業の老舗で、店内には戦前の店先付近の懐かしい写真が掲示されている。市電の本牧三渓園終点の写真も見られ、埋め立て前のこの頃はまだ界隈に浜の風情もあったことだろう。きれいに整備された街並みにある地魚食堂と、かつて海だった埠頭の片隅にある漁港。戦後の変遷といまの漁業事情を合わせて思う、本牧のローカル魚さんぽである。